2012 Fiscal Year Research-status Report
網羅的細菌叢解析を用いた細菌性肺炎における起因菌のエビデンスの構築
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23591173
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
迎 寛 産業医科大学, 医学部, 教授 (80253821)
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Keywords | 肺炎 / 16S ribosomal RNA / 網羅的細菌叢解析 / 口腔内常在菌 / 嫌気性菌 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究は分子生物学的な手法、特に16S ribosomal RNA遺伝子を用いた細菌の検出法を用いて、肺炎の原因菌を明らかにすることを目的としている。具体的には肺炎を「市中肺炎」、「院内肺炎」、「医療・介護関連肺炎」の3群に大別し、それぞれの原因菌を、われわれが試みている培養に依存しない網羅的細菌叢解析法を用いて明らかにすることであるが、2年目で市中肺炎65例の集積を行い、市中肺炎に関しては解析を終了した。現在、医療・介護関連肺炎・院内肺炎につき症例の検討、解析中であり、それぞれ58例、30例の検討が終了した。 結果として、市中肺炎では、通常言われている肺炎球菌・インフルエンザ桿菌・マイコプラズマに続いて、嫌気性菌、口腔内常在菌がそれぞれ16.9%、15.4%と全体の1~2割を占めており、嫌気性菌、口腔内常在菌の重要性が示唆された。しかし、医療・介護関連肺炎58例の検討では、嫌気性菌8.9%とわれわれが予想していたよりも少なかったが、口腔内常在菌に関しては22.4%と全体の1/4を占める結果となり、市中肺炎以上に口腔内常在菌の関与が示唆された。このことから、医療・介護関連肺炎では、これまで誤嚥による嫌気性菌の関与が大きいと推測されてきたが、誤嚥による口腔内常在菌の関与が最も重要である可能性が示唆されている。また、従来の喀痰を中心とした培養法と本手法で得られた結果との間には原因菌にかなり違いがあることから、喀痰のみの評価では十分に肺炎の原因菌を推察することができない可能性があるのではないかと推測している。 以上の内容につき引き続き検討を行うため、今後1年をかけ、医療・介護関連肺炎・院内肺炎の症例を増やしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上述した様に、日本呼吸器学会ガイドラインを用いて、肺炎を「市中肺炎」、「院内肺炎」、「医療・介護関連肺炎」の3群に大別し、当院ならびに関連施設から気管支鏡検査で採取された病変局所の気管支洗浄液およびその臨床データが集積を行った。この2年間でわれわれが試みている培養に依存しない網羅的細菌叢解析法を用いて、市中肺炎65例、医療・介護関連肺炎58例、院内肺炎30例で原因菌を解析することができた。 市中肺炎に関しては、症例の解析・論文化を終了することができ、当初の目的を達成できたものと考える。いっぽうで、医療介護関連肺炎に関しては、当初約30例を予定しており、現在予定症例数を大きく上回ることができたが、上述した様に、これまでの報告に比べ口腔内常在菌の関与が示唆されたことから、さらなる症例の集積・解析が必要と判断し、症例数の目標数を増やすこととした。また、従来から用いられている喀痰を中心とした培養法との関連性の検討を行う予定である。加えて、今回の検討により、口腔内の衛生状態、菌叢の把握が、下気道の細菌叢とともに重要であると考えられ、口腔内・喀痰と、病変局所での細菌叢の違いについて現在検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、平成23,24年度に引き続き症例の蓄積を行なうが、市中肺炎は症例の解析、論文化を終了することができたため、院内肺炎と医療・介護関連肺炎を中心に症例数を増やす予定である。可能であれば、医療介護関連肺炎に関しては約80例、院内肺炎に関しては約50例を超える集積を行い検討を行っていきたいと考える。 また、上述した様に、一部喀痰検体の細菌叢解析を用いても病変局所で推察される原因菌とは異なる結果が出ていることから、従来から言われている喀痰を中心とした培養法における原因菌評価の妥当性について検討を行う。 さらには、口腔ケアによる肺炎の予防効果が言われていることから、口腔内の衛生状態の評価として、口腔内の細菌叢と肺炎病巣の細菌叢との関係についても、本手法を用いて検討を行っていきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費については、昨年度と同様に、網羅的細菌叢解析法の過程である、細菌のDNA抽出、蛍光染色、PCRによるDNA増幅、クローニング(クローンライブラリの作成)、得られたDNA断片の塩基配列の解析等で使用するDNA抽出試薬、PCR用試薬、クローニングキット、シークエンス反応用試薬などの消耗品の購入に使用予定である。
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