2013 Fiscal Year Annual Research Report
網羅的細菌叢解析を用いた細菌性肺炎における起因菌のエビデンスの構築
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23591173
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
迎 寛 産業医科大学, 医学部, 教授 (80253821)
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Keywords | 市中肺炎 / 医療介護関連肺炎 / 細菌叢解析 / 16S rRNA / 口腔内常在菌 / 嫌気性菌 |
Research Abstract |
市中肺炎および医療介護関連肺炎患者に対して網羅的細菌叢解析法にて原因菌の検討を行った。 市中肺炎では64例の集積ができその検討では、平均年齢は62.4歳、男女比31/33例(計64名)であった。全例で気管支洗浄を行い、気管支洗浄液の菌叢解析における最優占菌種としては、従来法と同様に肺炎球菌(19%)、インフルエンザ菌(19%)、マイコプラズマ(17%)が比較的多く認められた。従来法と比べ、Prevotella属、Fusobacterium属などの嫌気性菌群(16%)や口腔内常在菌(16%)が高い割合で検出された(PLoS One e63103, 2013)。 医療介護関連肺炎82例の検討では、平均年齢75.5歳、男女比57/25例であった。各症例の最優占菌種として、肺炎球菌(11.0%)、インフルエンザ桿菌(17.1%)、黄色ブドウ球菌(7.3%)、緑膿菌(9.8%)が多く検出された。また、口腔レンサ球菌が19例(23.2%)を占め、特に75歳以上で口腔レンサ球菌の関与がより多く認められた。また、培養法と比較すると、医療介護関連肺炎にて問題視されている、MRSAを中心とする多剤耐性菌に関しては、細菌叢解析の結果では検出頻度が低かった。 本研究においては、市中肺炎・医療介護関連肺炎のいずれにおいても、これまでの報告と比べ、口腔内連鎖球菌、嫌気性菌が重要な役割を示すことを提示した。また、医療介護関連肺炎においては、市中肺炎に比べるとその原因菌は多彩であり、とくに、高齢者においては口腔内レンサ球菌が重要な役割を果たすことが示唆された(現在投稿中)。 本法は,網羅的に細菌由来のDNAを検出することから,培養条件などに全く依存しないため,肺炎の起炎菌検索に有用であった.培養法より菌種の検出率が高く,今後の肺炎における原因菌の検出割合について新たなエビデンスの構築に大きく貢献できるものと考えられた。
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