2011 Fiscal Year Research-status Report
糸球体バリアー機能におけるチロシンリン酸化脱リン酸化経路の解析
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23591180
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
野島 美久 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90201699)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 糸球体上皮細胞 / チロシン脱リン酸化酵素 / SIRP-α / たんぱく尿 / CD47 |
Research Abstract |
糸球体バリアー機能の喪失は、腎不全進行や心血管事故の強力な危険因子である。スリット膜は糸球体上皮細胞に備わる特殊に分化した細胞間接着装置であり、糸球体バリアーの要構造とされている。近年スリット膜を構成する分子がチロシンリン酸化されることが明らかにされ、バリアー機能がリン酸化カスケードの視点から解析されるようになった。しかし、この経路に関与する脱リン酸化機構の解明は遅れている。本課題においては、研究代表者がここ数年解析してきた受容体型分子SIRP-α(チロシン脱リン酸化酵素SHPの基質)とそのリガンドCD47を切り口として、スリット膜のバリアー機能をチロシンリン酸化・脱リン酸化シグナルの側面から解明することを目的とする。平成23年度の事業計画の実施により以下のことを明らかにした。1)SIRP-αは糸球体上皮細胞のスリット膜近傍を中心に発現している。2)SHP-1/2を結合できない変異SIRP-αを発現するSIRP-α変異マウスでは、糸球体上皮細胞の形態異常を認める。3)SIRP-α変異マウスでは野生型マウスに比べて有意の微量アルブミン尿が検出され、アドリアマイシン負荷などにより大量の蛋白尿を誘導できる。4)ストレプトゾトシンで糖尿病を誘発した時、野生型マウスに比べて変異型マウスでは大量のたんぱく尿が出現する。5)SIRP-α変異マウスから糸球体上皮細胞を分離し、これを不死化することによりSIRP-α変異培養上皮細胞を樹立。6)上記の変異細胞は正常細胞に比べてアドリアマイシンによる細胞死が起こりやすいことを示した。以上の事実から、SIRP-αが糸球体バリアーの構造と機能の維持に重要な役割を担う分子であることが示唆される。現在これらの成績をまとめて英文誌に論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は糸球体上皮細胞のバリア機能を、蛋白チロシンリン酸化・脱リン酸化の観点から解明しようとしたものである。平成23年度の研究成果は、脱リン酸化酵素SHP-1/2の基質として同定されたSIRP-αが糸球体上皮細胞に特異的に発現し、その機能的欠損が糸球体上皮細胞の形態異常と機能異常を引き起こすことをSIRP-α変異マウスで明らかにしたものであり、本研究の仮説の妥当性を実証したものである。また、変異型SIRP-αを発現する糸球体上皮細胞の樹立にも成功しており、SIRP-αの機能を細胞レベルで解析する準備も整っている。以上のことより計画はおおむね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
変異型SIRP-αを発現する糸球体上皮細胞を用いて、SIRP-αの細胞機能における役割を細胞レベルで解析する。今までの解析で用いた変異型マウスは全身諸臓器のSIRP-αに変異が生じており、従って免疫系異常などの全身性の因子が糸球体機能に影響を及ぼしている可能性を否定できない。そこで、糸球体上皮細胞特異的にSIRP-αが欠損するマウスを樹立し、それまでの変異マウスと同じ表現型が確認できるか検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以下の研究計画に対し、主として細胞培養、変異マウスの樹立や維持、生化学的分析などの消耗費として次年度の研究費を使用する。1)不死化培養細胞の解析2)SIRP-αを糸球体上皮細胞特異的に欠損する遺伝子改変マウスの樹立とその解析3)SHP-1もしくはSHP-2を糸球体上皮細胞特異的に欠損する遺伝子改変マウスの樹立とその解析
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Research Products
(3 results)