2012 Fiscal Year Research-status Report
糸球体バリアー機能におけるチロシンリン酸化脱リン酸化経路の解析
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23591180
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
野島 美久 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90201699)
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Keywords | 糸球体上皮細胞 / 糸球体バリア機能 / 蛋白尿 / SIRP-α / チロシン脱リン酸化 |
Research Abstract |
近年、糸球体上皮細胞に発現される機能分子が次々と明らかにされ、糸球体バリア機能の解明が進んでいる。とりわけ、ネフリンを中心としたスリット膜近傍タンパクのチロシンリン酸化経路が注目されている。しかしながらこれまで、脱リン酸化系の関わりについては十分な解明がすすんでいない。SIRP-αはチロシン脱リン酸化酵素SHP-1/SHP-2の基質として発見された膜タンパクである。我々はSIRP-αが糸球体上皮細胞に発現することから、糸球体バリア機能におけるSIRP-αの機能を解析するため、細胞内ドメインを欠損する変異型SIRP-aを発現する遺伝子改変マウスを解析した。変異型SIRP-αはSHP-1/SHP-2との結合部位が欠落しているため、SIRP-α経由のシグナルを下流に伝達することが出来ない。本研究課題の実施により、今までに以下の結果を得た。SIRP-α欠損マウスの糸球体構造は光学顕微鏡的には正常マウスと明らかな相違はなかったが、電子顕微鏡では足突起が幅広く平坦化しており、不整な構造を示した。微量ではあるが、尿中アルブミンが正常マウスに比べて増加しており、腎機能も有意に低下していた。さらにアドリアマイシンを投与すると、正常マウスに比べて大量の蛋白尿が漏出することが確認され、巣状糸球体硬化症への進展が認められた。以上の結果から、SIRP-αが糸球体上皮細胞の構造と機能の維持に重要な役割を有することが明らかにされた。即ち、糸球体バリア機能の維持において、SIRP-α、SHP-1/SHP-2などの脱チロシンリン酸化系が関与していることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今までに得られた結果を論文としてまとめ、国際英文誌に投稿中である。ただし、細胞レベルでの生化学的解析結果が十分に得られておらず、今後の課題と考えている。また実験に用いたマウスは変異型SIRP-αを糸球体上皮細胞以外にも発現していることから、これまでに明らかにした現象が、糸球体外の影響を受けた現象であることが完全には否定できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
変異型マウスより変異型SIRP-αを発現する上皮細胞株を樹立したので、この細胞を用いることにより、SIRP-αの上皮細胞機能における役割を明らかにする。また、糸球体上皮細胞特異的に変異型SIRP-αを発現する遺伝子改変マウスを樹立し、その表現型を解析することにより、SIRP-αが糸球体上皮細胞機能に直接関与することを実証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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Research Products
(1 results)