2011 Fiscal Year Research-status Report
糸球体上皮細胞におけるシナプス小胞関連分子によるスリット膜機能調節機構の解明
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23591186
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
富田 雅之 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (60568492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河内 裕 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60242400)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 糸球体上皮細胞 / 蛋白尿 / スリット膜 / シナプス小胞 / p38 MAPK |
Research Abstract |
シナプス小胞による細胞内輸送機構が糸球体上皮細胞 (ポドサイト) における機能分子の細胞内輸送に関与していること、シナプス小胞より放出される伝達物質がスリット膜機能調節に関与していることが報告されているが、そのメカニズムについては明らかではない。私達のグループはこれまでに、中枢神経系において神経伝達物質としての役割を有するアンジオテンシンIIが、スリット膜関連分子の発現を制御していることを明らかにしてきた。そこで、平成23年度は、そのメカニズムを明らかにすることを目的として、p38 mitogen-activated protein kinase (MAPK)、Rho kinase、NF-kappaBに着目し、アンジオテンシンIIがその病態発症に深く関与する抗ネフリン抗体誘発腎症 (スリット膜障害モデル) 及びピューロマイシンアミノヌクレオシド (PAN) 腎症 (微小変化型ネフローゼ症候群モデル) を用いて解析を行った。その結果、抗ネフリン抗体誘発腎症において、糸球体におけるp38 MAPKの活性亢進が認められ、スリット膜関連分子の発現が低下した。これに対して、p38 MAPK阻害薬の投与により、蛋白尿、スリット膜関連分子 (ネフリン、ポドシン、NEPH1) の発現低下が抑制された。一方、Rho kinase阻害薬及びNF-kappaB阻害薬は蛋白尿に対して抑制効果を示さなかった。以上の結果より、アンジオテンシンIIによるスリット膜関連分子の発現低下には、p38 MAPKの活性化が関与していることが明らかとなった。本研究成果について、平成24年6月に開催される日本腎臓学会学術総会 (横浜) において発表の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、シナプス小胞関連分子によるスリット膜機能調節機構を明らかにすることである。平成23年度に、(4) アンジオテンシンIIによるスリット膜関連分子の発現調節機構の解析を中心に行い、その結果、p38 MAPKが重要な役割を果たしていることを明らかにすることができた。また、研究実施計画における、(1) シナプス小胞関連分子のスリット膜の機能調節機構の解析、(2) 神経伝達物質の1つであるグルタミン酸を介したスリット膜関連分子の発現調節機構の解析、(3) その他各種神経伝達物質によるスリット膜関連分子の発現に対する効果の解析、についても、培養ポドサイト、ラット単離糸球体培養系を用いたin vitro実験に加えて、in vivoネフローゼモデルを用いて、各種神経伝達物質受容体作動薬、拮抗薬投与によるスリット膜機能への作用についての解析を行ってきた。その結果、アドレナリンベータ受容体拮抗薬の投与により、蛋白尿が増悪するという結果が得られてきており、現在、さらに解析を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の実施計画として、平成23年度に得られた研究結果を基に、(1) 培養ポドサイトを用い、シナプス小胞関連分子であるsynaptic vesicle protein 2B (SV2B) 及びRab3AをsiRNA法により発現低下させ、ネフリン、ポドシン、NEPH1、CD2APの発現、局在の変化、分子間の結合性の変化を解析する。(2) 培養ポドサイトにグルタミン酸、NMDA受容体拮抗薬であるメマンチン、カイニン酸/AMPA受容体拮抗薬であるCNQX、代謝調節型受容体拮抗薬であるMCPGを添加し、ネフリン、ポドシン、NEPH1、CD2APの発現、局在の変化を解析する。(3) 培養ポドサイトに、GABA、セロトニン、ドパミン、ヒスタミン、ノルアドレナリン、アセチルコリンに対する各種受容体拮抗薬 (ビククリン、ファクロフェン、メチセルギド、SCH23390、スルピリド、クロルフェニラミン、シメチジン、プラゾシン、ヨヒンビン、プロプラノロール、アトロピン) を添加し、ネフリン発現に対する作用を解析する。(4) 受容体作動薬、拮抗薬添加により、ネフリンをはじめとするスリット膜関連分子の発現変化が観察された受容体について、各種受容体選択的拮抗薬、受容体選択的作動薬、p38 MAPK、Rho kinaseなどの細胞内シグナル伝達分子に対する各種阻害薬を用いて、そのメカニズムを解析する。(5) 上記解析の結果、スリット膜関連分子の発現低下を抑制することが明らかとなった化合物について、in vivoモデルとして抗ネフリン抗体誘発腎症、PAN腎症、アドリアマイシン腎症 (巣状糸球体硬化症モデル) を用いて、スリット膜関連分子 (ネフリン、ポドシン、NEPH1、CD2AP) の発現低下及び蛋白尿に対する作用について解析する。また、その作用機序について検索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の未使用助成金として1,041,968円残っている。当該研究費が生じたのは、実験方法に若干の変更が生じたことに伴い設備備品を購入しなかったためと、予算を効率的に使用したためである。平成24年度の研究費使用計画について、消耗品費として1,741,968円 (内訳:実験動物600,000円、被験化合物251,968円、遺伝子抽出用試薬150,000円、培養用フラスコ類170,000円、抗体400,000円、PCR用試薬170,000円)、旅費として400,000円を計画している。
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Research Products
(7 results)