2012 Fiscal Year Research-status Report
糸球体上皮細胞におけるシナプス小胞関連分子によるスリット膜機能調節機構の解明
Project/Area Number |
23591186
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
富田 雅之 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (60568492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河内 裕 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60242400)
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Keywords | 糸球体上皮細胞 / 蛋白尿 / スリット膜 / シナプス小胞 / SV2B |
Research Abstract |
シナプス小胞膜上に発現する分子であるsynaptic vesicle protein 2B (SV2B) が糸球体上皮細胞 (ポドサイト) スリット膜のバリアー機能調節に関与していることを報告してきた。平成24年度は、①SV2Bノックアウトマウスを作製し、同マウスを用いた解析によりSV2Bのスリット膜関連分子の発現調節機構の解析、②各種シグナル阻害剤を用いスリット膜関連分子の発現調節機構の解析を進めた。 SV2Bノックアウトマウスではスリット膜の主要な構成成分であるCD2APの発現が著明に低下していた。スリット膜の細胞外部の主要構成分子であるネフリン、Neph1についても同様の所見が観察された。SV2Bノックアウトマウスは野生型マウスに比べて尿中蛋白排泄量の増加が観察された。これらの観察結果は、SV2Bがスリット膜関連分子の正常局在、スリット膜のバリアー機能調節に重要な役割を果たしていることを示していると考えられる。 ノックアウトマウスを用いた解析に併行して、各種シグナル阻害剤を用いたスリット膜関連分子の発現調節機構の解析を進めた。スリット膜を障害するモデルでの解析で、p38 mitogen-activated protein kinase (MAPK) 阻害薬、Rho kinase阻害薬がスリット膜分子群の発現変化を抑制し、バリアー機能を維持させる効果を有することを明らかにすることができた。 これらの結果により、SV2Bがスリット膜のバリアー機能の維持に重要な役割を果たしていることを明確に示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、シナプス小胞関連分子によるスリット膜機能調節機構を明らかにすることである。平成24年度は、SV2Bノックアウトマウスを作製し、同マウスを用いた解析によりSV2Bのスリット膜関連分子の発現調節機構の解析を進めた。SV2Bノックアウトマウスで腎、糸球体、ポドサイトの形態的な変化は観察されなかったが、CD2APなどのスリット膜機能分子の発現、局在が変化していることを確認した。また、SV2Bノックアウトマウスは野生型マウスに比べて尿中蛋白排泄量が多く、バリアー機能の低下が観察された。また、SV2Bノックアウトマウスは蛋白負荷などの腎負荷に対する抵抗性が低下していることを観察した。 ノックアウトマウスを用いた検討に併行して、スリット膜構造の維持機構の検討も行い、p38 MAPK阻害薬、Rho kinase阻害薬がスリット膜に対して保護効果を有することを示す所見を得た。 以上の所見を得ており、研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、平成24年度に得られた研究結果を基に以下の検討を行う。 ①SV2Bノックアウトマウスを用い、ポドサイトにおけるスリット膜機能分子群の発現、局在、分子間の結合性を詳細に解析し、野生型マウスと比較する。スリット膜機能分子の解析に併行し、各種シナプス小胞関連分子群の発現、局在を解析し、SV2B並びにその関連分子群によるスリット膜維持機構の解析を進める。②アドリアマイシンなどポドサイトに傷害性に働く薬剤に対する感受性の検討を行う。③スリット膜の分子構造の維持機構を解析するため、各種シグナル阻害薬を用いた検討を行う。具体的には、正常、病態モデルでのスリット膜の分子構造維持におけるp38 MAPK、Rho kinase、カルシニューリン阻害薬などの各種細胞内シグナル伝達分子の阻害薬の作用機序の解析を進める。In vivoモデルでの検討に加え、単離糸球体、培養細胞を用いた系での検討も進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は計画通りに研究費を使用した。平成25年度の研究費使用計画について、消耗品費として400,000円 (内訳:実験動物100,000円、被験化合物50,000円、遺伝子抽出用試薬100,000円、培養用フラスコ類50,000円、抗体50,000円、PCR用試薬50,000円)、旅費として300,000円、印刷費として100,000円を計画している。
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Research Products
(15 results)