2011 Fiscal Year Research-status Report
尿酸産生酵素並びに尿酸の虚血性腎障害、メタボリックシンドロームにおける役割
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23591195
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大坪 俊夫 九州大学, 大学病院, 助教 (30423974)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 USA |
Research Abstract |
虚血性腎障害に関しては、8-10週齢のXOR+/+, XOR+/-マウスに対し、L-NAME(NOS阻害薬)を8週間飲水中に投与する群と非投与群の4群に分け比較検討を行った。収縮期血圧はL-NAME投与群で有意に上昇し、特にXOR+/-マウスでXOR+/+マウスより有意な上昇を認めた。腎臓に関しては、血液生化学、組織学的に明らかな差を認めなかった。大動脈における内皮依存性の血管弛緩反応は、L-NAME投与によりXOR+/-マウスでXOR+/+マウスより有意に低下した。組織学的には、L-NAME投与XOR+/-マウスでは大動脈弾性線維の進展および断裂を認め、血管内皮細胞にMDA,4-HNEなどの脂質酸化物の蓄積亢進を認めた。NOS阻害状況下においては、血管局所におけるXORを介したNO産生などが血管緊張の維持に関与している可能性が示唆された。XOR・尿酸のメタボリックシンドロームとの関係では、8-10週齢のXOR遺伝子改変マウスに通常食または高脂肪食(60%脂肪)を10週間又は20週間投与し比較検討を行った。高脂肪食XOR+/-マウスは、高脂肪食XOR+/+マウスに比べ有意な体重増加、インスリン抵抗性を認めた。高脂肪食10週間投与でXOR+/-マウス腎尿細管細胞に著明な脂肪沈着を認めたが、20週間投与すると脂肪沈着はほぼ消失していた。一方、高脂肪食XOR+/-マウスの肝臓では、経過とともに肝細胞への脂肪沈着に加え間質線維化の進展を認めた。またPPAR-γ, MCP-1, FABP4などの遺伝子発現亢進を認めた。高脂肪食XOR+/+マウスではこれらの腎臓、肝臓における変化は軽微であった。また、18か月齢の高齢XOR+/-マウスはXOR+/+マウスに比べ有意な体重増加を認めた。これらの結果は、XOR遺伝子発現の違いが、肥満やメタボリックシンドロームへの関与を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
XOR・尿酸の虚血性腎障害における役割に関しては、高血圧性腎障害モデルであるL-NAME投与、NOS阻害モデルを作成して研究を行った。8週間L-NAME投与では、腎臓には明らかな影響を認めなかったが、大動脈の内皮依存性の血管反応や大動脈平滑筋の構造にXOR+/+, XOR+/-の間に違いを認めた。急性期モデルである虚血再潅流障害モデルに関しては、今回XOR遺伝子改変マウス(XOR+/+, XOR+/-, XOR-/-)より作成した初代培養内皮細胞を用いて、虚血並びに再酸素化状態におけるXOR・尿酸の役割を検討しようと試みたが、培養細胞の系の確率がうまくいかなかった。一方、XOR・尿酸のメタボリックシンドロームにおける役割に関しては、高脂肪食負荷モデルマウスを作製しほぼ予定通りに研究が実行できた。高脂肪食負荷によりXOR+/-マウスはXOR+/+マウスに比べ、体重増加が著明で、腎臓の尿細管細胞、肝臓の肝細胞に脂肪滴の形成を認めた。しかし、尿細管細胞に関しては、高脂肪食負荷後10週の時点で認めた著明な脂肪滴が20週ではほとんど消失していた。一方、肝臓では肝細胞への脂肪の取り込みが進展し、脂肪滴の巨大化や間質の線維化の進行を認めた。さらに、通常食で飼育した18か月齢のXOR+/-マウスはXOR+/+マウスに比べ、一見してわかる程度の明らかな肥満を呈していた。XOR遺伝子改変加齢マウスにおいて、高脂肪食負荷モデルと同様にXOR+/-マウスが肥満を呈したことは、XOR遺伝子と肥満の関連を強く示唆するもので非常に興味深いと思われる。 全体としては、虚血再潅流障害に関して少し遅れている状況で、メタボリックシンドロームとの関係はほぼ予定通りに進んでいると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
XOR・尿酸と虚血性腎障害に関しては、今年度は虚血再潅流障害モデルマウスを作成し、急性虚血におけるXOR・尿酸の役割を検討する。また、XOR遺伝子改変マウス(XOR+/+, XOR+/-, XOR-/-)より作成した初代培養内皮細胞を用いて、虚血並びに再酸素化状態におけるXOR・尿酸の役割に関して再度検討を試みる予定である。亜急性から慢性の高血圧性腎障害モデルに関しては、20週程度のL-NAME長期投与によるNO阻害の腎臓並びに心血管系への影響を検討してみる。XOR・尿酸のメタボリックシンドロームとの関係では、高脂肪食負荷モデルマウスに関しては、高脂肪食負荷後の腎尿細管細胞への脂肪沈着の変化を経時的に詳細に検討し、遺伝子発現の変化なども同時に検討してみる。また、メタボリックシンドロームとの関係で、肝臓への脂肪沈着、間質の線維化の進展にどのようにXOR・尿酸がかかわっているのかを明らかにし、高脂肪負荷モデルにおける脂肪組織の変化に関しても検討を行っていく。脂肪並びに肝細胞より初代培養細胞を作成し、マウスで認める変化の詳細な機序を検討する。高齢XOR+/-マウスで認める、加齢に伴う肥満の機序に関しても検討を加えていく。データがそろった研究より論文にまとめて欧米の雑誌に発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
XOR・尿酸の虚血再潅流障害、メタボリックシンドロームとの関係をさらに明らかにしていくために、マウスの飼育費や培養細胞、抗体、免疫組織染色の試薬、real time RT-PCR, genotypingなどに使用するキットなどの消耗品に1,400,000円。 昨年度までの研究成果並びに本年度の研究結果を国内並びに国外の学会にて発表を行うのに220,000円.資料提供・閲覧や論文投稿のための外国語論文の校閲に謝金などとして100,000円.その他の成果投稿料や印刷費に100,000円の合計1,820,000円を使用予定。
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Research Products
(2 results)