2011 Fiscal Year Research-status Report
NPHP嚢胞腎の発生機序の解析-尿細管上皮細胞の細胞分裂方向の決定機構の解析
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23591197
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
杉山 紀之 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90381954)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 嚢胞腎 / ネフロン癆 / 平面極性 |
Research Abstract |
本研究目的は嚢胞腎の発生機序解明のために、尿細管上皮細胞の一次繊毛が管構造に与える影響、実際には嚢胞腎で乱れが生じることが報告されている尿細管上皮細胞の細胞分裂方向の決定機構の解明を目的とした。そこで、次に掲げる2点の計画研究を行った。(1)inv変異マウスにおけるWnt/PCP経路の解析において、inv変異マウスおよびpkd2ノックアウトマウスの嚢胞腎初期および後期の2ステージでの解析を行った。予想に反して、Wnt/PCP経路因子であるRho/Racの活性化は全く認められなかった。これにより、嚢胞腎で起こる細胞分裂方向の決定にはWnt/PCP経路は関与しない可能性が高くなった。(2)平面極性関連因子であるDisheveled(Dvl)2とDvl3の蛍光ラベルトランスジェニックマウスをinv変異マウスと交配し、Inv欠失下でのDvl2とDvl3の局在を解析した。現在までに、正常腎でのDvl2とDvl3の局在の解析を行っており、Dvl2は繊毛基部の基底小体に局在している事が観察されている。しかしながら、Dvl3の局在は不明であり、現在免疫組織化学染色法により確認している最中である。inv変異マウスの嚢胞腎でのDvl2の局在は、まだ途中段階であるが、正常腎と同じであり、この解析においてもWnt/PCP経路の関与は否定的である。そこで、着眼点を変えて、他のシグナル伝達系に注目した。p38 MAPKがinv嚢胞腎の発生と共に異常活性化していることは以前の科研費研究(若手B)の解析より明らかであった。そこで、p38 MAPK阻害剤を用いて阻害実験を行ったところ、嚢胞腎の繊維化を惹起するシグナルである事が明らかとなった。invは若年性ネフロン癆の責任遺伝子であり、ネフロン癆において繊維化は最も特徴的な症状であることからも、この結果は治療にもつながる重要性を持っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた本年度の計画に対して、嚢胞腎におけるwnt/PCP経路の解析およびDvl2/3トランスジェニックマウスを用いた尿細管上皮細胞での平面極性因子Dvl2/3の局在解析も、Dvl2については正常腎での局在解析はほぼ終了した。さらに、inv嚢胞腎においてのDvl2の局在解析も終了間近であり、Dvl2に関しては計画よりも先んじて進んでいる。Dvl3の局在解析についてはまだ確定できておらず、今後も解析を継続する必要がある。以上のように、計画の前後はあれど、おおむね順調に進展している。しかしながら、予想していたwnt/PCP経路が活性化していなかった。そこで、新規な平面極性関連因子のピックアップと嚢胞腎で活性化している他の細胞内シグナル伝達系の解析を並行して行った。その結果、嚢胞腎におけるp38 MAPKの機能を明らかにすることができ、科学雑誌に掲載された。以上の点を加味しても、本研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平面極性については正常腎および嚢胞腎におけるDvl3の局在解析を押し進める。また、新規な平面極性関連因子として既に16因子を候補に挙げており、それらの嚢胞腎での発現量の変動を調べ、変動している因子については細胞内局在を解析する。これにより、平面極性と嚢胞腎発生の関係を明らかにする。しかしながら、平面極性のメイン経路と考えられているwnt/PCP経路が嚢胞腎では活性化されていなかった。したがって、嚢胞腎における尿細管上皮細胞の細胞分裂方向の乱れは平面極性とは関係ない可能性が出てきた。そこで我々は、その細胞分裂方向の乱れは細胞周期の乱れに起因するという仮説を提唱する。そこで、細胞周期を可視化できるfucciトランスジェニックマウスを導入して、inv変異マウスと交配させて、嚢胞腎発生時において上皮細胞の細胞周期がどのように変化しているかを解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
概ね研究計画通りにマウス飼育費、抗体、染色糸約、分子生物学試薬、生化学試薬および一般試薬などの消耗品に充てることとする。しかしながら、研究計画に新たに加えた細胞周期の同定の研究のために、そのマウスの導入費用(運搬費など)を次年度の研究費の使用枠に補填する。
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