2013 Fiscal Year Annual Research Report
NPHP嚢胞腎の発生機序の解析-尿細管上皮細胞の細胞分裂方向の決定機構の解析
Project/Area Number |
23591197
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
杉山 紀之 大阪医科大学, 医学部, 講師 (90381954)
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Keywords | 一次繊毛 / 嚢胞腎 / 急性腎障害 |
Research Abstract |
本研究の目的は嚢胞腎の発生機序解明のために、尿細管上皮細胞の一次繊毛が管構造に与える影響の解析であった.しかしながら、昨年までは嚢胞腎尿細管上皮細胞に平面極性因子などの細胞の方向を決める極性因子に変化は認められなかった.そこで、三次元培養系を用いて極性因子の局在を経時的に観察した.しかしながら、正常尿細管上皮細胞と嚢胞腎尿細管上皮細胞において差異は認められず、嚢胞化の原因および繊毛異常の原因は平面極性因子の局在異常ではない可能性が挙げられた. また、一次繊毛が尿細管上皮細胞に与える影響を解析するために、虚血再還流による急性腎障害後の尿細管上皮細胞の再生あるいは脱落における一次繊毛の機能解析を新たに行った.まずは、虚血再還流時間に応じて、急性腎障害後に尿細管が再生する/脱落することを確認して、再生腎モデルと萎縮腎モデルを作製した.そこで、まず再生腎と萎縮腎の違いを探索した.その結果、萎縮腎でのみ傷害2週後に尿細管上皮細胞の過剰なアポトーシスが起きていることを確認した.このアポトーシスは尿細管上皮細胞自身が分泌するTNF superfamilyの因子によって誘導されていることを明らかにした.実際にTNF alphaの阻害抗体を障害2週後直前の投与により、尿細管の脱落を抑えることに成功した.一次繊毛は傷害7日後に最も伸長しており、再生腎と萎縮腎において差はなかった.しかし、萎縮腎には繊毛が長い尿細管と短い尿細管があり、この繊毛の長さの違いが尿細管の脱落と関与する可能性が考えられた. 以上の結果より、嚢胞腎における一次繊毛の機能解析には新たな方面からの探索が必要となったが、急性腎障害後の尿細管の脱落に一次繊毛が深く関与していることを示唆することに成功した.今後、嚢胞腎と急性腎障害のどちらに解析において、新たな一次繊毛の機能を見出すことが期待できる.
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