2011 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病の血管石灰化発症機序における転写調節因子の役割の解明と治療への応用
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23591200
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
林 松彦 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (60129608)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 理 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (00306713)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 慢性腎臓病 / 血管石灰化 / リン代謝 |
Research Abstract |
慢性腎臓病患者にみられる動脈硬化症は、血管の中膜石灰化として知られ、そのメカニズムの解明は治療戦略をたてるうえでたいへん重要である。近年の研究では、慢性腎不全にみられる高リン血症が血管平滑筋細胞を骨軟骨様細胞に形質変換させ、血管石灰化に寄与する可能性が示唆されている。本年度の研究では、その形質変換の分子メカニズムに焦点をあてた。培養血管平滑筋細胞を用いた検討では、高リン負荷により、平滑筋分化マーカーであるSM alpha-actin、SM22alphaの発現低下と骨軟骨細胞の分化マーカーであるosteopontin、alkaline phosphatase、Runx2の発現亢進が認められた。これらの変化に加えて、転写因子Klf4の発現亢進も認められた。興味あることに、Klf4の発現をsiRNAを用いて抑制した場合、高リン負荷による血管平滑筋細胞から骨軟骨様細胞への形質変換は有意に抑えられた。さらに、高リン血症をきたすアデニン負荷慢性腎不全モデルにおいて動脈石灰化部位を検討したところ、平滑筋分化マーカーの発現低下、骨軟骨細胞の分化マーカーの発現亢進、Klf4の発現亢進が認められた。これらの結果はKlf4がリン負荷による血管平滑筋細胞の骨軟骨様細胞への形質変換に重要な役割をしていることを示唆しており、現在遺伝子改変マウスでの検討を加えている。一方、炎症反応に重要なNFkB系の血管石灰化への影響を検討するため、血管平滑筋細胞特異的にNFkB系を抑制するマウスの樹立を進めている。C57/BL6系マウスは血管石灰化に比較的抵抗性であることから、SM22alpha-Creマウス、dominant negative IkB floxedマウスを血管石灰化に感受性のあるCBA/2マウスに交配し、系統の変更を行っている。1年間の交配により5世代の交配が進み、来年度の検討が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高リン負荷による血管平滑筋細胞の骨軟骨様細胞への形質変換をきたす培養細胞系の確立、動脈石灰化を伴う慢性腎不全モデルラットの確立ができたという点で、平成23年度の計画は順調に進行したといえる。また、SM22alpha-Creマウスなどの遺伝子バックグラウンドの変更も順調に進行した。
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Strategy for Future Research Activity |
Klf4の役割を生体内で明らかにするため、遺伝子欠損マウスをCBA/2系マウスとして樹立し、血管石灰化への影響を検討する。また、炎症反応に重要なNFkB経路およびNFAT経路の血管石灰化に対する役割も検討する。培養血管平滑筋細胞を用いて、LPS刺激による炎症反応の活性化が、高リン負荷による血管石灰化をどのように修飾するか検討する。また、血管平滑筋特異的NFkB経路抑制マウスをCBA/2系マウスとして早期に樹立し、NFkB経路の血管石灰化への影響を検討する。さらに、NFkB抑制薬、NFAT抑制薬を用いた検討も並行して行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の多くは、細胞培養実験試薬代、分子生物学実験試薬代、免疫組織化学実験試薬代、動物飼育代に使われる。また、研究補助者への謝金にも使用する予定である。
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Research Products
(1 results)