2013 Fiscal Year Annual Research Report
慢性腎臓病の血管石灰化発症機序における転写調節因子の役割の解明と治療への応用
Project/Area Number |
23591200
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
林 松彦 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (60129608)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 理 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (00306713)
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Keywords | 血管石灰化 / 転写調節因子 / 慢性腎臓病 |
Research Abstract |
慢性腎臓病の進展とともに動脈石灰化が認められ、心血管死の要因となり、慢性腎臓病患者の予後を左右する最も重要な因子の一つである。そこで、本研究では、培養細胞およびモデル動物を用いて、動脈石灰化に関わる転写因子の役割を検討した。 まず、培養血管平滑筋細胞を用いた検討において、リン負荷による血管平滑筋細胞の骨様細胞への形質変換に転写因子KLF4が関与することを同定し報告した(J Biol Chem, 2012)。すなわち、リン負荷は平滑筋分化マーカーの発現を低下させ、骨分化マーカーの発現を亢進させるのであるが、これらの変化にKLF4が関与することを発見した。KLF4は、高リン血症をきたすアデニン負荷腎不全ラットにおいても動脈石灰化部位に発現が誘導されており、高リン血症が石灰化病変を形成するにあたって重要な役割を果たしている可能性が示唆された。また、ノックアウトマウスを用いた検討では、内皮細胞におけるKLF4が内膜肥厚型動脈硬化に抑制的に働くことを発見し、報告した(J Am Heart Assoc, 2014)。次に、炎症反応に重要なNF-kBの血管病変形成への影響を検討するため、血管平滑筋細胞特異的にNF-kBを抑制するマウスを樹立した。このマウスに血管傷害を起こしても、内膜肥厚性動脈硬化の形成は有意に抑制されることから、血管平滑筋におけるNF-kBの重要性が生体内で明らかとなった(J Am Heart Assoc, 2013)。現在、腎不全病態におけるNF-kBの血管石灰化への役割をこれらのマウスを用いて検討中である。さらには、慢性腎不全ラットに高血糖を誘導し、糖濃度・リン濃度と血管石灰化との関係を解析した(J Vasc Res, 2013)。以上のように、本研究では血管石灰化といった血管病変の形成における転写調節メカニズムについて新知見を得ることができた。
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