2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23591204
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
土谷 健 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (00246472)
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Keywords | 線維化 / リン / FGF23 / ESA |
Research Abstract |
Klotho蛋白は、骨に由来するFGF23と共役して、腎でのリン利尿をもたらすが、さらにリン自体が、慢性腎臓病(CKD)では、血管の石灰化など、複合的な要因で腎障害の進行にかかわることが明らかにされつつある。本研究では、Klothoのリン代謝ならびにその潜在的な生理活性に注目し、腎疾患におけるKlothoの病態生理と、治療に応用する標的分子として検討することが目的である。 外因因子で、Klotho発現に影響を与えうる因子の検討:造血因子エリスロポエチンはKlotho mRNAを誘導することが判明し、特にheat shock protein 70を介した組織保護、抗酸化作用を報告。 Klothoの関連シグナル、抗線維化作用に関しての検討:ラット腎線維芽細胞をrecombinant Klotho proteinで処理し、線維化マーカーを測定。各種の線維化マーカーの発現をKlotho蛋白が抑制することを確認した。さらにKlothoと主要な線維化因子であるTGFbは相互の発現に抑制的に働くことが判明した。こうした事実は、CKDの病態生理においてKlothoの発現が低下することが、リンの滞留とFGF23の分泌刺激に関与し、さらに間質の線維化の成立に悪循環として関与していることを示唆している。この内容はAm J Physiol Renal Physiol誌に掲載した。 リン輸送との関与については、リン輸送体ノックアウトマウスの候補モデルを検討した。機能的ノックアウトにはsiRNAを使用することになった。 血中Klothoレベル測定法の開発:免疫生物会社(IBL)よりヒトの血中レベルの測定キットが提供されているが、このアッセイを用いて、ヒトおよびマウスでのKlothoの血中レベルの測定を行っている。CKD各腎機能での測定、また多発性のう胞腎患者での測定をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Klotho蛋白の抗線維化作用についての分子生物学的機序の解明を進めることができた。Heat shock protein の関与、またTGFbとの相互作用を報告したが、昨年度はwound healing scratch assay によるKlotho蛋白の作用を定量化することができた。このassay系を用いるとさまざまな物質のKlothoに及ぼす作用を定量的に判定することが可能であり、実際にTGFbの影響を可視的に、また数値的に判定することができた。今後も継続して細胞内シグナルを検討していく予定である。 腎のリン輸送体とKlothoの関わりについては、本年度、そのノックアウトマウスが取得できずに、この企画の進展が遅れた。食事中のリンは主に小腸粘膜のリン輸送担体(Npt2b)を介して吸収されるので、理論的には、Npt2bを抑制すればリン吸収が抑制され、Klotho欠損マウスの症状やCKDの進行および合併症の発生が抑制されると考えられる。次年度が最終となるため、ノックアウトマウスの計画はそのまま継続しつつ、機能的ノックアウトにはsiRNAを使用することになった。Klotho siRNAの作用が確認され、腎でのKloth発現を30%以下に抑制することが可能であった。慢性実験にはsiRNAの継続的な投与が必要で、その条件設定を行った。 血中Klothoレベル測定法の開発については、いまだに血中レベルの測定が容易でないことは、Klotho蛋白の抗原性に起因するとされている。今回、本研究施設のTOF MS装置を用いて測定を試みた。Klotho蛋白の同定には、粒子に付着した抗Klotho抗体を用いた (当共同研究施設内設置)。商業的に免疫生物会社(IBL)よりヒトの血中レベルの測定キットが提供されているが、このアッセイ結果との比較を行いながら確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度が最終年となる。 Klotho蛋白の抗線維化作用についての分子生物学的機序の解明を進めることができたが、今後も継続して細胞内シグナルを検討していく予定である。 腎のリン輸送体とKlothoの関わりについては、本年度、そのノックアウトマウスが取得できずに、この企画の進展が遅れた。候補としては、Klotho欠損マウス、Npt2b欠損マウス、およびNpt2b阻害状態(ここではsiRNA)を用いて、Klotho欠損マウスのNpt2b遺伝子を破壊することで(具体的にはKlotho -/-マウスとNpt2b -/-マウスとの掛け合わせ)、高リン血症、動脈硬化、骨粗鬆症、短命などの症状が改善するか検討する。食事中のリンは主に小腸粘膜のリン輸送担体(Npt2b)を介して吸収されるので、理論的には、Npt2bを抑制すればリン吸収が抑制され、Klotho欠損マウスの症状やCKDの進行および合併症の発生が抑制されると考えられる。当初の計画通り輸送体の遺伝子改変動物で検討するが、動物の取得に時間がかかる場合は、機能的改変をsiRNAにより実験を行う。 血中Klothoレベル測定は引き続きenzyme assayのデータの検証を続けつつ、当院に設置されているSELITOF MS装置を用いて測定を試みる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度の費用使用計画を以下準拠する。 Klotho蛋白の抗線維化作用についての分子生物学的機序の解明を進めるため、当該年度は継続して細胞内シグナルを検討する予定である。実験動物での線維化モデルでは、そのモデル動物の購入に支出する。また、細胞モデルでは培養費用とともに、wound healing scratch assayの費用を見積もっている。 リン輸送とKlothoとのかかわりについては、当初の計画通り輸送体の遺伝子改変動物で検討するが、動物の取得および条件設定、実験プロトコルを作成し、また機能的改変をsiRNAにより実験を行う。この研究費を合わせて、モデル動物の購入費、siRNAの合成費用、および細胞内シグナル検討のための培養細胞の費用に予算を充当している。細胞培養の維持費用に相当する額がかかり、またsiRNAの合成費用にも相当の支出が必要となる。 血中Klothoレベル測定は前年度から、引き続きenzyme assayのデータの検証を続けつつ、当院に設置されているSELDI-TOF MASを用いた測定条件の設定にはいる。市販のkitの購入とTOM-MASの関連試薬、運営コストに支出を予定している。
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