2011 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病性腎症病態形成におけるクロトー遺伝子の抗アポトーシス機序の解明
Project/Area Number |
23591208
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
春名 克祐 川崎医科大学, 医学部, 助教 (40341094)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 稔 川崎医科大学, 医学部, 講師 (70449891)
柏原 直樹 川崎医科大学, 医学部, 教授 (10233701)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 腎臓学 |
Research Abstract |
平成23年度の計画は、1,糖尿病性腎症進行に伴う、klotho遺伝子・Klotho蛋白発現量の検証、2,Klotho蛋白発現低下による糖尿病性腎症進展への影響の検討、3,Klotho蛋白過剰発現による糖尿病性腎症進展への影響の検討、の以上を行うことであった。C57BL/6マウス(日本チャールズリバーより購入)を用い、ストレプトゾトシン誘導1型糖尿病モデルマウスを作製し、検証する予定であった。このモデルは糖尿病病態解析に広く用いられている疾患モデルであり、我々の施設でもこれまでに数回の使用経験があり、作成条件は確立されていた。しかしながら予定飼育期間を過ぎても腎障害が発症しないという、想定外の問題点が発症した。疾患モデルの見直しを迫られたが、さらに飼育期間が必要となるため、次年度施行予定であった、4,高血糖培養下における、Klotho蛋白の近位尿細管上皮細胞の障害抑制作用の検討を先に施行することとなった。当初はラット近位尿細管上皮細胞を用いる予定であったが、Klotho過剰発現マウスからの流用も視野に入れ、近位尿細管初代培養細胞(mPTEC)を使用して検証した。4週齢雄性C57B6マウスよりmPTECを作製し、Mouse Klotho cDNAをpCAGGS plasmidを用い遺伝子導入,発現させた。高糖濃度(30mM glucose)培養によりmPTECに酸化ストレス(dihidroethidium)、Mit膜電位変化、Bcl-2発現抑制、Bax発現亢進、apoptosisが誘導されたが、klotho遺伝子導入により抑制された。結果として、Klotho蛋白は近位尿細管細胞において糖負荷によるapoptosisの誘導を抑制し、そのメカニズムの一つにmitochondria障害の軽減を介している可能性が示唆された。平成23年度の実施状況は以上の通りである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、C57BL/6マウス(日本チャールズリバーより購入)を用い、ストレプトゾトシン誘導1型糖尿病モデルマウスを作製し、検証する予定であった。このモデルは糖尿病病態解析に広く用いられている疾患モデルであり、我々の施設でもこれまでに数回の使用経験があり、作成条件は確立されていた。しかしながら予定飼育期間を過ぎても腎障害が発症しないという、想定外の問題点が発症した。この原因として考えられるのが、交配による表現型の変化が挙げられる。本実験では同時にKlotho過剰発現マウスにおいても検証を行うため、C57BL/6と戻し交配を行い、そこで得られたwild typeを用いて使用した。C57BL/6は、元来ストレプトゾトシン誘導高血糖による腎障害の進行が緩除な系である。今回の戻し交配によりその表現型が強く変化した可能性がある。今後の変更点としては、1,ストレプトゾトシンの使用量の再検討、2,別の糖尿病モデルへの変更、の選択となるが、ストレプトゾトシンの変更はさらに予備実験が必要となるため、自然発症1型糖尿病モデルであるAKITAマウスを用い再度検証を行うこととした。同モデルにおける腎障害の発症は事前に検証済みである。現在AKITAマウスとKlohto過剰発現マウスを交配し作製中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在AKITAマウスとKlohto過剰発現マウスを交配しモデル作製中である。そのモデルを用いて、再度、1,糖尿病性腎症進行に伴う、klotho遺伝子・Klotho蛋白発現量の検証、2,Klotho蛋白過剰発現による糖尿病性腎症進展への影響の検討、を行う。1,糖尿病性腎症進行に伴う、klotho遺伝子・Klotho蛋白発現量の検証では30週齢のAKITAマウスをSacrificeし腎臓を摘出し、各検討を行う。検討項目は、(a)病理組織学的変化(b)腎組織酸化的障害の検討(c)ミトコンドリア障害の評価(d)アポトーシスの評価である。2,Klotho蛋白過剰発現による糖尿病性腎症進展への影響の検討では作製したKlotho過剰発現AKITAマウスにおける、検討を行う。検討項目は1,と同様である。さらに後天的なKlotho蛋白投与の病態への影響を確認するため、3,ラットストレプトゾトシン誘発1型糖尿病モデルを用いた検討も施行する。生後6週齢のWisterラットを用い、STZ誘導1型糖尿病モデルを作成し、4週後にpCAGGS plasmidに全長klotho cDNAを組み込んだKlotho蛋白発現ベクターをelectroporation法にて筋肉内へ遺伝し導入を行う。24週後に、腎障害の軽減作用の有無を検討する。検討項目は病理組織学的変化、腎機能、活性酸素産生、ミトコンドリア障害、アポトーシスなど上記 1と同様の評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度使用予算のうち、47,702円が次年度使用予定として繰り越される。この額は輸入消耗品(各種抗体、蛍光指示薬など)が円高の影響で見積額より安くなった影響である。実験動物のマウス(約1,000円)は1つの実験あたり約50匹使用する。年間4回(200匹以上)の実験を計画し、H24年度200,000円と計算した。実験動物のラット(約3,000円)は1回の実験あたり約40匹使用する。年間2回(役80匹)の実験を計画し、H24年度240,000円、と計算した。 Western blot法に用いる各種抗体(Bcl2、Mfn1、Klotho等)は抗体あたり約50,000円を要する。前年度Klotho抗体の使用量が予定より多く必要であったため、繰り越し分47.702円は抗体購入費として利用する。関連試薬と合わせ、H24年度247,702円と計算した。 活性酸素可視化に用いる蛍光指示薬は約60,000円を要する。関連試薬と合わせ、340,000円/年と計算した。Real-time RT-PCR法に用いるprimerとprobeは標的遺伝子一つにつき50,000円、消耗品であるPCR関連試薬は160,000円/キットである。H24年度320,000円と計算した。 カルパイン活性測定に用いる、Calpain-Glo Assayは225,000円/キット(50ml)である。H24年225,00円と計算した。 培養関連試薬・器具(消耗品)はplasmid精製、尿細管上皮細胞の培養に使用し、H24年度350,000円と計算した。組織学的検討には免疫染色用抗体や消耗品も含め、200,000円/年と計算した。 研究成果は米国腎臓学会(ASN)の学術集会(年一回開催)にて発表したいと考える。4泊6日として宿泊料(16,100円×4泊)および日当(5,200円×6日)を計算した。
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