2011 Fiscal Year Research-status Report
急性腎障害における非対称性ジメチルアルギニンの生命予後、腎予後に果たす役割の検討
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23591210
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
上田 誠二 久留米大学, 医学部, 准教授 (80322593)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 急性腎障害 / 内皮障害 / 虚血再還流 / ADMA / 造影剤腎症 |
Research Abstract |
急性腎障害(AKI)は、生命予後や多臓器不全、CKDへの移行することが明らかとなり、この疾患の重要性が認識されている。非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)はICU入院患者の多臓器不全や生命予後のリスク因子であること、移植腎の生着や長期腎予後のマーカーであることが報告された。これらの背景より、ADMAはAKIの病態に積極的に関与することやAKI発症のリスク予期因子として有用なバイオマーカーとなり得る可能性が考えられる。申請者らは当該年度において、、AKIモデルマウスとして虚血再還流モデル(IR)を作成し、薬理学的、遺伝子学的手法(皮下ポンプによるADMAの持続投与、ADMAの代謝酵素であるDDAHの過剰発現マウス)で、ADMAを増減させることにより、ADMAがAKIの病態に如何に関与するか検討した。その結果、IR曝露に伴う酸化ストレス状態が、DDAHの発現・活性異常を引き起こし、血中・腎組織中のADMAが蓄積することが観察された。また蓄積したADMAは傍尿細管毛細血管内皮の障害・脱落を経て、尿細管間質の障害を介して腎障害の進展に関与していることが明らかとなった。得られた知見より、ADMAが高い患者群ほどAKI発症のリスクが高いことが予想され、ヒトAKIにおけるADMAの動態と「ADMAがAKIのリスク予期因子として有用なバイオマーカーである」との仮説を検証するために、待機的に冠動脈造影検査を行うCKD患者を対象とした臨床研究も開始し、現在30名ほどの症例登録が終了し、今後も登録、観察を継続予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物実験で得られたこれまでの知見は、論文作成、投稿準備を行うとともに、現在はADMAの上昇機序の詳細を検討中であり、また臨床研究にも着手しており、おおむね申請書に記載した研究計画通りに進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
動物実験、臨床研究ともに、計画通りに進行しており、今後も申請書の研究計画に準じて遂行していく予定であり、動物実験においては、DDAHの発現・活性異常のメカニズムを明らかにすることで、新たな治療法の探索を、また臨床研究においては「ADMAがAKIのリスク予期因子として有用なバイオマーカーである」との仮説を検証することにより、AKI予防に向けた新たな診療指針を確立することを目的に研究を継続する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請書に記載の通り、実験動物の購入・維持、アッセイ用試薬、抗体、成果発表に使用する。
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