2012 Fiscal Year Research-status Report
急性腎障害における非対称性ジメチルアルギニンの生命予後、腎予後に果たす役割の検討
Project/Area Number |
23591210
|
Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
上田 誠二 久留米大学, 医学部, 准教授 (80322593)
|
Keywords | 急性腎障害 / 内皮障害 / 造影剤腎症 / ADMA |
Research Abstract |
急性腎障害(AKI)は、生命予後や多臓器不全、CKDへの移行することが明らかとなり、この疾患の重要性が認識されている。非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)はICU入院患者の多臓器不全や生命予後のリスク因子であること、移植腎の生着や長期腎予後のマーカーであることが報告された。これらの背景より、本研究の目的は、ADMAがAKIの病態に関与するか否か、またAKI発症のリスク予期因子として有用なバイオマーカーとなり得る可能性を明らかにすることである。 (基礎研究)AKIモデルマウスとして虚血再還流モデル(IR)を作成し、薬理学的、遺伝子学的手法(皮下ポンプによるADMAの持続投与、ADMAの代謝酵素であるDDAHの過剰発現マウス)で、ADMAを増減させることにより、ADMAがAKIの病態に如何に関与するか検討した。その結果、IR曝露に伴う酸化ストレス状態が、DDAHの発現・活性異常を引き起こし、血中・腎組織中のADMAが蓄積し、傍尿細管毛細血管内皮の障害・脱落を経て、尿細管間質の障害を介して腎障害の進展に関与することを見出した。またADMAを低下させるとAKIの発症が予防できる可能性も確認している。 (臨床研究)待機的に冠動脈造影検査を行うCKD患者を対象とした臨床研究も開始し、現在70名ほどの症例登録が終了し、予備的に52名の解析を行った明かなAKIを生じたケースが2名しかなく、今後も検討を継続していく予定であるが、そのような状況下でも造影剤の使用で、有意にADMAや酸化ストレスマーカーや炎症マーカーが上昇していることが観察されている。これらの上昇の意義を明らかにするため、これらの集団を前向きな経過観察も継続中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基礎研究に関してはほぼ終了し、その成果を論文として投稿中である(現在rivisionとなり追加実感を行っている。) 臨床研究に関しては、予想のAKIの発症頻度は得られていないが、おおむね順調に症例登録も進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
動物実験、臨床研究ともに、計画通りに進行しており、今後も申請書の研究計画に準じて遂行していく予定である。また臨床研究においては「ADMAがAKIのリスク予期因子として有用なバイオマーカーである」との仮説を検証することにより、AKI予防に向けた新たな診療指針を確立することを目的に研究を継続する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の申請書に記載の通り、実験動物の購入・維持、アッセイ用試薬、抗体、成果発表に使用する。
|