2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23591215
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
風間 順一郎 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (10345499)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 血液透析 / 骨粗鬆症 / 骨質 |
Research Abstract |
日本透析医学会統計調査データの解析では、透析患者の大腿骨頸部骨折頻度は国民一般の5倍強に上り、その易骨折性は透析導入時には既に完成していることが判明した。この結果は学術誌に投稿中である。透析患者生検骨の分光分析解析は進行中である。既に研究に必要な数のデータはサンプリングを終了し、現在は標準サンプルと照らし合わせながらペントシジン含有比、結晶成熟度、石灰化進行度などのパラメターを評価中である。透析患者骨と比較すべきコントロールサンプルは、当初予定されていたブラジル日系人のサンプルでは不具合のあることが判明し、新たに日本人の非腎不全原発性骨粗鬆症患者のサンプルを収集する方針となった。この方針で新潟市内に協力病院を確保し、コンスタントにサンプルの供給が得られる体制を確立した。しかし、現時点ではまだコントロールサンプルの分光分析データの採取には着手していない。副甲状腺摘出ラットを用いた実験腎不全モデルにおけるin vivo実験では、腎不全の進行に伴って分光分析パラメターが独特のシフトを見せ、この変動が骨強度(厳密にはしなやかさ)と逆相関することが示された。更に、このたびこのモデルにインドキシル硫酸に代表される尿毒物質を消化管内で吸着するAST-120を与えると、分光分析パラメターが非腎不全型にとどまると同時に骨強度の低下が予防されることが判明した。これは腎不全病態に於いてミネラル代謝ではなく尿毒物質そのものが骨脆弱性を誘発することをはじめて示唆した画期的な結果であり、現在学術雑誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
統計調査の解析はほぼ予定通りに進行している。ただし、投稿された論文は未だに学術誌に受理されていない。透析患者骨の分光分析データ採取は当初の予定よりもやや遅れた。大きな原因は東日本大震災である。震災後しばらくの間、申請者は被災者の支援活動に追われ、また分光分析装置もしばらくの間使用不可能になった。ただし、既にこれらの問題は解決しており、データ収集と標準サンプルとの照らし合わせはほぼ完了した。コントロールサンプルの採取は予定よりも大幅に遅れている。それは当初予定していたブラジル日系人サンプルの年齢が透析患者と全くマッチできないものであったため、計画が一からやり直しになったためである。急遽新潟市内に協力病院を確保して、日本人サンプルの収集を開始した。コントロールサンプルが集まらないことには分光分析による材質特性もマイクロCTによる構造特性も、それが腎不全骨に特異的であるかどうかを証明することができない。動物を用いたin vivo実験はほぼ計画通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
疫学調査は投稿した論文が受理されることを目指す。ヒトのデータを解析するために、コントロールサンプルの収集に全力をあげる。既にサンプルがコンスタントに入手できる体制作りは完成している。しかし、透析患者群と年齢/性別がマッチできるようになるためには何例のサンプルが必要か不明であり、この作業にあとどのくらいの期間がかかるかは不透明である。ただし、透析患者群の分光分析データ/マイクロCTデータは既に採取済みであるので、コントロール群が揃い次第、このプロジェクトはほぼ完成に至る見込みである。動物実験はAST-120負荷試験で終了の予定である。ただし、現在投稿中の論文の査読者に追加実験をリクエストされる可能性がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
コントロールサンプルの収集とデータ採取のため、標本作製費、分析施設の使用/維持費、打ち合わせのための交通費、事務費が必要である。また、この結果は論文に投稿し、学会にも発表する予定なので、そのための事務費や旅費も必要である。
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