2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23591215
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
風間 順一郎 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (10345499)
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Keywords | 慢性腎臓病 / 骨粗鬆症 / 分光生化学 / 大規模臨床観察研究 |
Research Abstract |
平成24年度には震災によって使用できなくなった分光化学測定システムが本格的に稼動可能となったため、主に分光化学的手法によってラット慢性腎臓病骨の生化学組成を分析する作業を行った。この結果、このモデルではコラーゲン架橋分子のAGE修飾化、リン酸カルシウムヒドロキシアパタイトの結晶成熟、コラーゲンミネラル比率、リン酸炭酸塩比率などに特異的なパターンが生じることを確認し、またこれらが直接法によって判定した骨弾性強度と緊密に相関することも見出した。同じモデルの骨をX線解析することによって、骨強度に最も強い影響を与えるのはリン酸カルシウムヒドロキシアパタイト結晶成熟障害ではないかと今の段階では推定している。また、従来法の骨形態計測による分析も加え、この慢性腎臓病モデルには骨小窩から骨細胞が脱落するいわゆるエンプティ・ラクナ所見が多発し、その周囲の骨基質に低石灰化相が頻発していることを見出した。これは二次性石灰化に細胞の関与を示す所見であり、分光化学所見と照らし合わせてその責任分子の同定作業を行っている。今年度はこれら動物モデルの作業を優先させたため、ヒトにおける生化学分析は計画よりも遅れている。しかし、大規模臨床観察研究によりわが国の透析患者の大腿骨近位部骨折の危険が一般国民よりも5倍以上高いことが初めて示され、しかもこのリスクは副甲状腺/ミネラル代謝異常とは独立であることが判明した。これは我々が提唱している慢性腎臓病独特のミネラル代謝とは独立した骨質障害の存在を強く示唆する所見であり、研究に明るい展望が開けたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
震災以降使用困難になった分光分析装置も平成24年度には既にフル稼働できるようになったため、動物モデルを用いた実験はほぼ想定通りのスピードで進んでいる。これにX線解析や骨形態計測を加えて研究に厚みが増したことも好材料である。 一方、ヒト検体を用いた検討は予定より遅れている。理由は、平成24年度には遅れていた動物モデルの解析に多くの時間を費やしたことと、コントロール検体の採取が思うように進まなかったことの二点である。ただし、平成24年度には大規模臨床観察研究の結果がまとまり、これがほぼ我々の仮説を支持する結果となったため、研究の全体に対しては明るい展望が開けてきたものと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
動物モデルではX戦解析のデータを拡充させること、及び形態データとの照らし合わせ作業を完了させる予定である。そして既にプール済みであるヒト慢性腎臓病骨サンプルを用いて動物モデルと同様の検討を行い、実際に患者の骨で何が起こっているのかを半定量的に解析してこの3年間に及ぶ研究の締めくくりとしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
サンプル処理はほぼ終了しているので、ここに要する支出は残り僅かである。次年度の主な過大はデータの解析とまとめ、発表であり、このための支出が中心になると予想される。
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