2012 Fiscal Year Research-status Report
腎機能障害に伴うリン過剰に応答するリン感受性機構とリンセンサーの探索
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23591222
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
重松 隆 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (30187348)
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Keywords | リン / FGF-3 / リン吸着剤 / 慢性腎臓病 / ビタミンD |
Research Abstract |
本研究はリンのセンシングシステムまたはリンセンサー分子の探索を目的としている。そのセンシング刺激としての高リン血症を惹起するために、アデニン負荷慢性腎臓病(CKD)ラットモデル動物にリン負荷を行い検討した。この結果、リン負荷により対応遺伝子としてのFGF-23遺伝子は骨組織としての頭蓋骨並びに脛骨並びに脾臓にて発現が増加していた。脾臓におけるリンセンシングシステムは発現細胞を含め、分担研究者として現在別計画にて研究が進展している。骨組織では骨細胞並びに骨芽細胞にてFGF-23産生すなわちリン感受性が指摘されているため、CKDラットとコントロールラットにて頭蓋骨組織の器官培養系を用い検討中である。現在までのところ、以下のような研究成果が見いだされている。 1)腎臓病ラット由来頭蓋骨では培養液中のFGF-23濃度は高値で、リン負荷に対する感受性が亢進していた。 2)しかし予想に反し、リン負荷の有無によってFGF-23遺伝子発現の増強は認められなかっため、骨組織に対するリン負荷の効果はFGF-23産生より細胞外への遊離促進が中心効果と考えられた。3)リン負荷によるFGF-23遺伝子発現の増強は、活性型ビタミンDある1α,25(OH)2D3の存在が必要なことが判明した。 ヒトで同様の現象の有無を、高度腎機能障害症例である維持血液透析患者にて、非カルシウム系の純粋リン吸着剤である炭酸ランタ ンの経口投与にて検討した。研究名称としてはCombination Therapy of Lanthanum Carbonate and Calcium Carbonate:COLC Studyと呼称し、倫理委員会の承認下に各症例の書面による協力同意の元で行われた。この結果、血清リン濃度のみを低下させることにより、ヒトにおいても血中FGF-23値が低下することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、長期的にはリンのセンシングシステムまたはリンセンサー分子の探索を行い、リン感受性機構を明らかにする事を目的とし ている。リンに対する感受性システムは、実験動物やヒトにおけるリン過剰ないしリン負荷による応答因子としてのFGF-23の変化が遺伝子レベルや蛋白レベルとして変動する事から、その存在は明らかである。しかし、その詳細は今もって明らかではない。これまでの成果から、現在までにFGF-23遺伝子発現を指標として、骨組織と脾臓にてリン感受性機構が存在することを慢性腎臓病(CKD)モデルラットに て明らかにした。 同様のFGF-23を指標としたリン感受性機構は、同様の腎障害を有するヒトでも確認されている。 この他、リンに対するセンサーもしく は感受性システムは、骨以外に副甲状腺・脾臓ないしリンパ球のいずれかの臓器かその構成細胞に存在することが明らかになりつつある。これまで、我々はこのリン感受性機構は活性型ビタミンD受容体の刺激が大きくその調節機構に関わっていることを見いだした。現在、このリン感受性機構の活性型ビタミンD受容体刺激とその調節機構についての検討を開始し脾臓中のいかなる構成細胞がリンに対し感受性を有しているかの 検討も行なっている。
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Strategy for Future Research Activity |
(今後の推進方策) 1)リン感受性を示す臓器のうち、骨・血管・脾臓を対象として、リンに対する標的分子の同定と調節機構を明らかにする。 (1)骨組織にて、活性型ビタミンD受容体刺激によるリン負荷誘導性の生体反応をFGF-23遺伝子発現を指標として解析する。CKDラッ トにて頭蓋骨の器官培養を行い、右半を対照として、左半培養液中にリン添加と活性型ビタミンD受容体に対する種々の親和性を有す る活性型ビタミンDアナログ添加実験を行う。 2)我々が既に確立した、アデニン含有量が2.5%にて、4週と6週にて飼育し血管石灰化検出力が強い実験条件を利用し、すでに我々が報告した血管組織培養方法[Am J.Physiol]に準じてモデルラットの大動脈を抽出し、Von Kossa 染色・およびアリザニンRed染色による石灰化染色を行い血管石灰化を同定する。今後は遺伝子改変マウスの使用を目指し、ラット以外にマウスにおける血管石灰化モデルの樹立を目指す。 3)血管石灰化モデル動物にて、リン負荷による血管石灰化促進作用を更に刺激する因子を検討予定である。今後は炎症サイトカインであるTNF-αやIL-6またはIL-1などの検討も考えている。 4)直接的なリン負荷はヒトにおいては倫理的な面からも困難であるが、最も高リン血症呈しやすいヒトとしての慢性維持透析患者を例として、リン吸着剤の投与とリン吸着剤の中止によりリン負荷条件を変更し血中FGF-23濃度を指標としてリン感受性機構の存在と調節機構を明らかにして行く方針である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(次年度の研究費の使用計画) リン感受性を示す臓器のうち、骨・血管・脾臓を対象として、リンに対する標的分子の同定と調節機構を明らかにする。 (1)骨組織にて、活性型ビタミンD受容体刺激によるリン負荷誘導性の生体反応をFGF-23遺伝子発現を指標として解析する。(2) リン負荷にて誘導される血管石灰化:特に我々が確立したin vivoでの血管中膜石灰化モデルにてリン感受性分子と反応を解析する。特にその反応促進因子を見いだす。 1)まずアデニン2.5%含有のラット用飼料の検討のために購入を予定する。同様にマウス用の飼料にて、アデニン含有量の異なる飼料を作成し、リン感受性のin vivo検出のために最も石灰化検出力の強い飼料の決定するために複数の購入を予定する。また実験モデルとしてのラット・マウスの購入・飼育代は必須である。 2)FGF-23とFGF-1受容体をFGF-23受容体としての特異性を持たせるClotho遺伝子のプライマーの合成と、モノクローナル抗体の作成伴い試薬を含め購入を予定している。 3)また研究試薬・研究物品購入に資金を充てる。 4)研究成果がまとめられる段階になれば、学会発表・論文投稿・論文掲載等の費用にも余裕があれば資金の振り分けを行ないたい。
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Research Products
(1 results)