2012 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病における骨折寄与因子の検討-骨組成変化に着目した解析-
Project/Area Number |
23591223
|
Research Institution | Oita University of Nursing and Health Sciences |
Principal Investigator |
岩崎 香子 大分県立看護科学大学, 看護学部, 助教 (10360059)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
風間 順一郎 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (10345499)
矢野 彰三 島根大学, 医学部, 准教授 (80403450)
|
Keywords | 骨組成変化 / 骨力学強度 / 腎機能低下 / ラマン分光法 |
Research Abstract |
日本の透析患者の骨折発症は一般人口の約5倍高いことが2012年末に報告されたが、未だ慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)患者の易骨折性の要因に関しては不明である。また骨強度を規定する骨質因子に関してもCKDを対象とした研究は進んでいない。CKD患者の骨折後の生命予後は一般人口と比較すると6割以上も悪化していることから、易骨折性を誘発する要因の解明は急務である。 本研究では骨質因子のうち、骨組成変化に着目して振動分光学手法の一つであるラマン分光法を用い、骨組成変化を解析した。また骨力学強度パラメータ、腎機能パラメータとの関連性を検討した。本年度は骨代謝回転の異なるCKDラットの大腿骨を用いて骨組成解析を行った。加えてCKDが有する尿毒症物質(Uremic toxis; UTx)が骨芽細胞に与える影響についても検討を行った。 その結果、CKDラットの骨力学強度は骨代謝回転とは関係なく低下していること、この低下は骨密度よりも腎機能低下の影響を受けることが確認された。骨組成パラメータのうち、石灰化度指標は骨代謝回転を反映している可能性が示された。一方、アパタイト結晶化度、コラーゲンの非生理架橋(AGEs架橋)、コラーゲン中に含まれる糖化・酸化による修飾アミノ酸は骨代謝回転とは独立して、変化していることが確認された。これらの組成指標のうち、アパタイト結晶構造に関する指標が、骨力学強度に影響する可能性も示された。 培養細胞を用いた検討からいくつかのタンパク結合型UTxは骨芽細胞内の酸化ストレスを亢進させ、細胞障害を与えることが確認された。しかしながら酸化ストレスが亢進しない濃度(初期腎不全時濃度)においても骨芽細胞の生存率を低下させるといった作用も確認され、尿毒症物質の蓄積が易骨折性に関与している可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の基礎検討として、二次性副甲状腺機能亢進症に伴う高代謝回転骨および糖尿病性腎症に伴う低代謝回転骨のモデル動物の骨組成および力学強度を検討する予定であった。両モデルの骨について、検体作成および解析は行ったが、生化学パラメータとの関連や骨力学強度と組成変化の関連など詳細な結果を導くまでには検体数が不足しており、検体数の追加が必要と考えられた。またこれらのモデル動物に現在臨床で用いられている薬剤を投与した時の効果判定ができなかった。 また、培養実験の結果からいくつかの尿毒症物質がどのように骨芽細胞に障害するかは確認できたが、成果を論文としてまとめるまでに至らなかった。 さらにCKD患者の骨サンプルの解析は例数が増えたが、血清生化学値との関連性が検討出来ていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
モデル動物を用いた基礎検討については、検体数を増やすことで現在得られている結果をまとめることができるため、動物実験を再度行い、検体数を増やして解析を進める。また臨床で用いている薬剤を投与した動物の骨組成解析を行うことで、現在行われている薬物治療が骨力学強度に影響するかを検討する。加えて骨組成の解析だけでなく、ジオメトリー解析、骨密度測定などを並行して行い、CKDの骨強度規定因子の探索を行う。 CKD患者の骨組成解析に関しては、解析が終わっていないサンプルについて組成解析を行う。また動物骨の力学強度試験とは別の方法を用いて、患者検体(骨)の力学強度測定が可能かどうかを検討し、臨床で得られる生化学検査値、服用薬剤の量、試用期間などの複数の因子を含めて解析を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度、組成解析が予定回数実施できなかったため、使用予定であった組成解析機器使用料、測定にかかる旅費等は次年度使用することで対応する。また動物検体についても追加が必要なため研究費の一部を検体作成のための費用として使用する。結果をまとめて学会発表、論文化するため、発表旅費、論文化のための英文構成、投稿料等に研究費を使用する。
|