2011 Fiscal Year Research-status Report
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23591241
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高岸 芳子 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (50024659)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 有髄神経線維 / 軸索骨格 / 神経変性疾患 / ニューロフィラメント / ミュータントマウス |
Research Abstract |
本研究は、有髄神経線維のランビエ絞輪パラノード部に局在する膜タンパクCasprの遺伝子に変異を持つ突然変異マウス(shambling; shm)の中枢ならびに末梢神経系を研究して、その病理機序を解明し、マウスの進行性の病変との関連を検討することを目的とする。本年度は、後肢の麻痺により歩行の困難となった生後1年以上のマウスの脳(大脳、小脳)、脊髄、坐骨神経で、電子顕微鏡ならびに免疫組織化学法を用いて、神経線維軸索の異常を解析した。各部位における有髄神経線維を以下のように研究し、成果を得た。1:組織標本を作製して、光学顕微鏡と電子顕微鏡により有髄(ミエリン)神経線維を観察し、その形成を定量した。shmマウスの腰部脊髄白質や坐骨神経では、直径の大きな有髄線維が減少しており、また、ミエリン形成の異常となった軸索や内部に変性小器官を含む軸索が観察された。2:ミエリン構成タンパクmyelin basic proteinや軸索骨格タンパク、ニューロフィラメント(NF)に対する抗体を用いた免疫組織化学法で検討したところ、小脳や脊髄白質で抗体陽性神経線維の減少が観察された。更に、軸索内のNFのリン酸化、非リン酸化の状態が神経線維の病態を反映することから、それぞれの特異抗体で各部位の有髄神経線維を染色した。小脳と脊髄では、リン酸化NF、非リン酸化NFがともに減少していた。3:電子顕微鏡観察により、軸索内のNFを定量した。脊髄白質の有髄神経線維では、太い軸索のNFが有意に減少していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者らは、進行性の神経症状を表す突然変異マウスshambling(shm)の原因遺伝子が、有髄神経線維ランビエ絞輪パラノードに局在する膜タンパクCasprにあることを同定した。そして、生後早期のshmマウスの有髄神経線維では、パラノードの形成不全と神経伝導速度の低下がみられることを明らかにした。一方、shmマウスは加齢とともに重篤な神経症状を表すようになることから、ヒトの神経変性疾患のモデルになると考えた。実際、加齢期のshmマウスの脳では、脱髄や多量の神経細胞の脱落が観察された。そこで、shmマウスを研究して、パラノードを起点とした異常が加齢とともに進行し神経細胞死に至る病理過程を解析して、この病態メカニズムを解明することで、ヒトの神経変性疾患の新たな病態機序を提唱することを目指している。本年度の研究で、パラノードの異常が神経線維軸索の細胞骨格に異常をもたらすことが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の研究によってshmマウスの中枢、末梢神経系の有髄神経線維軸索に細胞骨格の異常が観察された。24年度は、この異常が細胞体へと及んでいることを研究する。これには、生後1~2年齢のマウスを用いて、小脳、大脳、脊髄の神経細胞で、細胞体内の変性小器官、特に封入体の形成に注目して解析する。研究方法:1:電子顕微鏡観察により、封入体がどのような構造(小器官)からなるかを明らかにする。2:細胞内封入体の分子基盤を解析する。封入体構成分子の候補として、TDP-43、Tau, a-synuclein, Ataxin, polyglutamineの抗体を用いた免疫組織化学法を行う。3:この封入体形成に関与する分子を同定するために、ユビキチンあるいはオートファジー関連タンパクの免疫組織化学染色ならびにウェスタンブロット法を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
免疫組織化学研究のための抗体や関連試薬の購入実験消耗品の購入マウスの飼育料学会発表の為の旅費英語論文の校閲費用
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