2012 Fiscal Year Research-status Report
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23591241
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高岸 芳子 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (50024659)
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Keywords | 有髄神経線維 / ランビエの絞輪 / 神経変性疾患 / 軸索変性 / ミュータントマウス |
Research Abstract |
本研究は、有髄神経線維のランビエ絞輪パラノード部に局在する軸索膜タンパクCasprの遺伝子に変異を持つ突然変異マウスshamblingの中枢ならびに末梢神経系で、マウスの進行性の病変に伴う病理過程を解析し、その病理機序を解明することを目的とする。今年度は、前年度に行った老齢マウスにおける中枢神経系での異常の解析に引き続き、末梢神経系で解析を行った。さらに、今年度は、神経症状の発症した直後の生後2~3週齢から後肢の麻痺により歩行の困難となった生後1年以上のマウスを用いて経時的に解析を行い、異常の進行過程を検討し、以下の成果を得た。1:マウスより坐骨神経を取り出し組織標本を作製して、光学顕微鏡と電子顕微鏡により有髄(ミエリン)神経線維を観察し、その形成を定量した。老齢shamblingマウスでは、直径5μm以上の太い有髄神経線維が有意に減少していた。一方、生後3週齢と生後6ヶ月齢のマウスでは有意な減少は見られなかった。また、老齢マウスでは軸索内部に変性小器官を含む有髄神経線維が存在した。2:軸索骨格タンパク、ニューロフィラメント(NF)に対する抗体を用いて免疫組織化学法とウェスタンブロット法で解析したところ、正常ではマウスの成熟に伴い進行する軸索NFのリン酸化が老齢shamblingマウスでは低下していた。一方、病態の軸索で報告されている非リン酸化NFの増加がみられた。しかしながら、生後2~3週齢のマウスでは、NFのリン酸化、非リン酸化の状態に違いはみられなかった。3:電子顕微鏡観察により、軸索内のNFを定量したところ、老齢shamblingマウスの太い有髄神経線維では、NFの密度が有意に増加していた。軸索のNFはリン酸化によって、フィラメント間の距離が増大すると考えられている。この結果は、非リン酸化NFが増加をしている上記2の結果と一致すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中枢・末梢神経系の有髄神経線維は、神経伝導の効率化のためグリア細胞に由来するミエリン鞘という絶縁体に包まれている。ランビエ絞輪は、ミエリン鞘に包まれていない領域として神経線維軸索上に一定の間隔で存在する特異な部位である。このランビエ絞輪結節の両側に位置するパラノード部は、近年、軸索―グリア間相互作用の場として有髄神経線維の機能維持に重要な働きをしており、様々な神経変性疾患の発症部位になっていると考えられるようになった。申請者らは、生後に神経症状を表す遺伝性疾患マウスshamblingの原因遺伝子が、パラノードに位置する軸索膜タンパクCasprにあることを同定し、パラノードの形態的、機能的な異常を明らかにしてきた。さらに、shamblingマウスの神経症状は進行性であることを見出した。本研究では、ヒトの神経変性疾患の病理機序の解明に寄与することを目標に、shamblingマウスを用いてパラノードの異常に起因する進行性の神経変性過程を明らかにすることを目的としている。これまでに、老齢マウスの中枢・末梢神経系を研究して、軸索の変性や神経細胞の脱落を観察した。さらに、神経症状の発症した生後2~3週齢から生後1年以上の老齢期まで経時的に解析することで、病態の進行過程における病理機序が明らかになりつつある。本年は、shamblingマウスの有髄神経線維では、マウスの神経症状の進行によって、軸索骨格タンパクNFの成熟に伴うリン酸化が低下し、脱リン酸化NFが増加していることを明らかにした。本結果は、老齢マウスで観察される軸索の変性や神経細胞の脱落の原因を示唆するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
23、24年度の研究によって、shamblingマウスの中枢、末梢神経系の有髄神経線維では、軸索細胞骨格に異常があることが明らかとなった。パラノードにおけるパラノードジャンクションの欠失の影響が軸索全体に及び、細胞骨格タンパクNFの代謝・動態を障害させたと考えられる。さらに、軸索細胞質には変性小器官や異常封入体が存在し、また神経細胞体でも同様な異常が観察される。25年度は、 このような変性構造物が形成される時期や過程を解明し、さらにこの変性の分子基盤を明らかにする。研究には、生後2~3週齢から老齢期までの各時期で、マウスから、脳、脊髄、坐骨神経を取り出して用いる。研究方法; 1:光学・電子顕微鏡観察により、変性小器官や封入体の有無、変性の実体構造(小器官)を明らかにする。2:細胞内封入体の分子基盤を解析する。封入体構成分子の候補として、 LC3, beta-APP,TDP-43、Tau, alfa-synuclein, Ataxin, polyglutamineなどの抗体を用いた免疫組織化学法を行う。3:この封入体形成に関与する分子を同定するために、ユビキチンあるいはオートファジー関連タンパクの免疫組織化学染色ならびにウェスタンブロット法を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
免疫組織化学研究のための抗体や関連試薬の購入 実験消耗品の購入 マウスの飼育料 学会発表の為の旅費 英語論文の校閲費用
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Research Products
(2 results)