2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23591244
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
奥野 龍禎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00464248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中辻 裕司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20332744)
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Keywords | ALS / ミクログリア / M1/M2 / JAK2阻害剤 |
Research Abstract |
ミクログリアの活性化には炎症を促進して神経障害的なM1型と組織修復を促進し神経保護的なM2型があることが知られているが、神経変性疾患においてこれらの活性化がどのように神経変性に寄与しているかは明らかではない。我々は病初期と進行期のALSモデルマウス脊髄でM1活性化マーカーとM2 活性化マーカーの発現を検討し、ミクログリアの活性化状態の時期による違いを明らかにするとともにM1/M2軸の調整による治療を試みた。 ALSモデルマウスとして、G93A変異SOD1マウスを用いた。脊髄より調整したcDNA に対してRT-qPCRを行うことによりM1及びM2関連分子の発現を比較した。病初期のmSOD1Tgマウス脊髄ではIL-13,Ym1などのM2関連分子の増加が主体であった。一方進行期ではM1分化を促すGM-CSFが著増しており、ミクログリアの活性化がM1主体になってきている可能性が示唆された。当初GM-CSFに対する拮抗抗体の全身投与を検討したが、GM-CSFの下流のシグナルを阻害し、より有効と思われるJAK2阻害剤R723をG93A変異SOD1マウスに1日2回経口投与し(投与群25匹、コントロール群28匹)、生存期間を検討するとともに、体重測定とHanging wire testによって重症度を評価した。R723投与群では脊髄のiNOS発現は減少していたため、効果を示す可能性が示唆されたが、予測と異なり、薬剤投与群の、体重、筋力および生存期間にコントロール群と有意差は認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ALSは治療法のない疾患であるため、全世界で多方面からさまざまな試みがなされている。炎症機転も有力な治療ターゲットと考えられており、精力的に研究されている。最近、炎症性の単球に発現するLY6Cに対するモノクローナル抗体がALSマウスに有効であることが示されており、単球/マクロファージ/ミクログリア制御は制御性T細胞と並んでALSの有望な治療ターゲットである。我々の検討ではJAK阻害剤投与群において脊髄のiNOS発現は減少していたため、効果を示す可能性が示唆されたが、予測に反し生存延長効果や症状の改善は認めなかった。JAK阻害剤は実際に骨髄線維症やリウマチで臨床応用が進んでおり、副作用も比較的少なく、すぐにでも臨床応用が可能な治療である。このようなJAK阻害剤がALSに無効であると示すことは、真に有効なALSの治療法を開発する為の有用な示唆を与えると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
JAK2阻害剤はある程度M1を阻害しているにかかわらずALSマウスに対して無効であった。JAK2阻害剤のみではM1の阻害やM2の促進が不十分であった可能性や、ニューロンやアストロサイトといった神経系細胞の生存シグナルに阻害的に働いている可能性,M2活性化や制御性T細胞などの保護的な免疫反応を抑制してしまった可能性が考えられる。今後無効であった理由を明らかにすることにより、ALSの炎症における治療ターゲットを絞り込んでいき真に有効なALS治療薬の開発につなげる予定である
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
JAK2阻害剤をALSマウスに投与し、脾臓やリンパ節、骨髄細胞における神経障害的な免疫細胞(炎症性単球、Th1細胞)および神経保護的な免疫細胞(制御性T細胞、Th2細胞)の数、性質をフローサイトメトリーやサイトカインのアッセイにより検討する。投与後のマウスの脊髄において、神経保護的な分子(Ym1などのM2関連分子、EAAT2などのアストロサイト関連因子、抑制性のサイトカイン)と障害的な分子(炎症性サイトカイン,TNFなどのM1関連分子、NOX2,COX2など)の発現を検討し、JAK2が無効であった理由を明らかにする。これらの実験によりALSの炎症における治療ターゲットを絞り込んでいき真に有効なALS治療薬の開発につなげる。
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