2012 Fiscal Year Research-status Report
新規モノクローナル抗体を用いた変異SOD1の構造解析とALS免疫療法の開発
Project/Area Number |
23591259
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
藤原 範子 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (10368532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 敬一郎 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70221322)
江口 裕伸 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (60351798)
崎山 晴彦 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (30508958)
吉原 大作 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (00567266)
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Keywords | ALS / SOD / モノクローナル抗体 / 構造解析 / NMR |
Research Abstract |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)を引き起こす変異SOD1は立体構造が不安定で凝集体を形成しやすいことから、変異SOD1が野性型SOD1とは異なる構造を有していることが示唆されている。微小な構造の違いを検出するために新たにマウスモノクローナル抗体を作製し、本年度までに5種類の抗体を得た。これらの抗体の特性を調べるために、精製したリコンビナントタンパク質の野性型(WT)および各変異SOD1 (A4V, G37R, H46R, G93A)に対する反応性の違いを検討した。その結果、18B25、2A2、8H11は、A4Vに強く反応し、H46Rに弱く反応するという特徴が見られた。一方、19G6は他の変異体よりもH46Rに、9D3はG93Aに比較的強く反応した。エピトープマッピングより、9D3は90-110残基部分に、19G6は60-90残基部分にエピトープがあることを明らかにした。18B25、2A2、8H11はどのペプチド部分にも反応せずGST- SOD1(全長)にのみ反応したことから、SOD1の立体構造を認識していると考えられる。これらのモノクローナル抗体は変異SOD1の微小構造の解析および抗体療法の開発に利用できると期待される。 一方、ヒトSOD1の結晶構造解析から、ヒトSOD1のホモダイマーにおいてループVI(102-115残基)の一部が、非対称になっていることを見出した。さらに、ヒトSOD1を酸素17同位体で酸化させ、溶液酸素NMRを行ったところ、165 ppm付近にシャープなシグナルを得ることができた。SOD1の構造解析結果は、ALSの抗体療法やワクチン療法にとって有用な情報だと考えている。特にタンパク質の溶液酸素NMRは世界でも例が少なく、新たな機能解析法として期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変異SOD1に対する反応性が異なる5つのモノクローナル抗体を作製することができた。ただ、もう少し反応性の違いが大きく出る抗体がほしかったと考えている。モノクローナル抗体自体はFBSフリーの培地で培養した細胞からIgGを大量に精製することができたため、結合性や抗体療法の実験に用いることができると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 各モノクローナル抗体のエピトープマッピングを詳細に行う。作製した新規モノクローナル抗体の各変異SOD1に対する結合性の違いをもっと詳細に定量する。さらに、種々の温度やpH、薬剤添加などの条件下で変性させたのちにELISAを行い、変異SOD1と野性型SOD1との微視的な構造変化の違いを解析する。 2. 新規モノクローナル抗体がSOD1の凝集体形成を抑制できるかどうか検討する。変異SOD1および野性型SOD1を凝集体ができる条件にし、少量のモノクローナル抗体の添加によって、その凝集化が抑制できるかどうかを検討する。 3. ALSモデルマウスに各モノクローナル抗体のIgGやエピトープ部分のペプチドを投与し、ALSの発症や進行への影響を検討する。 4. 各ハイブリドーマからmAbの抗原認識部分であるVHとVLの遺伝子をクローニングし、アミノ酸配列を決定する。VHとVLのアミノ酸配列は結晶解析やNMR解析にも必要である。VHとVLを結合させ、ScFv(一本鎖可変部断片)を単離し、SOD1との結合度合いを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額の研究費が生じた理由は、計画どおりの予算より少ない額で研究が達成できたためである。今年度は主に下記のような消耗品に研究費を使用する予定である。 1. ハイブリドーマ培養用の血清や培地、ディッシュなどのプラスチック製品、ウエスタンブロットやELISAに用いる二次抗体やイムノプレート、タンパク質精製用のカラムや担体は本研究の遂行に必須である。これらは消耗品の生化学実験試薬として購入する。 2. 遺伝子のクローニングに用いるオリゴヌクレオチド作製費用やPCR用試薬は遺伝子実験試薬として購入する。
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