2011 Fiscal Year Research-status Report
生体内で部分凝集したαシヌクレインがもたらす神経細胞機能異常の解明
Project/Area Number |
23591265
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Research Institution | Department of Clinical Research, National Hospital Organization Utano National Hospital |
Principal Investigator |
山本 兼司 独立行政法人国立病院機構(宇多野病院臨床研究部), その他部局等, 研究員 (50378775)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤田 秀幸 独立行政法人国立病院機構(宇多野病院臨床研究部), その他部局等, 臨床研究部長 (30335260)
山川 健太郎 独立行政法人国立病院機構(宇多野病院臨床研究部), その他部局等, 研究員 (70447960)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | αシヌクレイン / パーキンソン病 / レビー小体型認知症 / 膜興奮性 / シナプス伝達 / オリゴマー / 神経変性 / ドーパミン |
Research Abstract |
本研究では、パーキンソン病やレビー小体型認知症の病因と推察されている部分凝集したαシヌクレインがヒトの脳でどのように分布するかを、患者剖検脳切片からのαシヌクレイン部分凝集体を抽出して各部位における部分凝集αシヌクレインの存在や分子状態を比較検討し、それらがどのような神経機能異常を生ずるかを細胞電気生理学的手法によって明らかにすることを目的としている。我々は、アミロイドβをパッチピペットから細胞内投与する手法を用いて、アルツハイマー病の初期に神経細胞内から蓄積する可溶性アミロイドβがBKチャンネルを抑制してカルシウム流入促進と神経過興奮を生ずる機能異常を生じて、シナプス蛋白であるhomer1aがこの機能異常をレスキューすることを報告した(Yamamoto et al. 2011)。これと同様の手法をαシヌクレインに適用して見出された結果を用いれば、患者剖検脳切片からのαシヌクレインによる機能異常解析を効果的に検索できると考えられた。本年度は、神経機能異常を生ずるαシヌクレインの分子状態を検索するため、野生型、又はA53T及びA30P変異型合成αシヌクレインからドーパミン存在下、非存在下でインキュベートすることによって生成したモノマー又は部分凝集体を用いた実験を行った。マウスの大脳皮質スライスを作成し、視覚野、および帯状回における大脳皮質錐体細胞に各分子状態のαシヌクレインをパッチピペットから細胞内から投与した。この実験条件下で全細胞記録を取り、電流固定下での膜電位、電流注入時のスパイク波形、スパイク後脱分極やスパイク後過分極、電圧固定下でのカルシウム電流を測定した。これらの結果を比較検討し、種々の分子状態にあるαシヌクレインによって生ずる神経機能異常を解析していている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、患者剖検脳切片からのαシヌクレイン部分凝集体を抽出して各部位における部分凝集αシヌクレインの存在や分子状態を比較検討し、それらがどのような神経機能異常を生ずるかを細胞電気生理学的手法によって明らかにすることを目的としている。部分凝集αシヌクレインは、比較検討のために患者剖検脳切片由来のものと大腸菌で過剰発現して合成されたものを使用するが、いずれもサンプル量は限られている。このため、まず合成シヌクレインを細胞内投与した上で神経細胞の膜興奮性やシナプス伝達といった特性を網羅的に検索し、異常を認めた特性について患者剖検脳切片由来のαシヌクレインでも同様の神経機能異常が生ずるかを検証していくことが、研究の遂行により効果的であると考えられた。今年度は、野生型、又はA53T及びA30P変異型合成αシヌクレインのモノマー又は部分凝集体を細胞内投与した上でパッチクランプ法を用い、神経細胞の膜興奮性のパラメータである膜電位、スパイク波形、スパイク後脱分極やスパイク後過分極、カルシウム電流などについて詳細な解析を行うことができた。これらの結果を踏まえることによって、患者剖検脳切片からのαシヌクレインがもたらしうる神経機能異常の候補を絞り込むことが可能になり、今年度の研究につながる手掛かりが得られたと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)野生型、又はA53T及びA30P変異型合成αシヌクレインからドーパミン存在下、非存在下でインキュベートすることによって生成したモノマー又は部分凝集体を用い、マウス、又はラットの脳スライス標本における大脳皮質錐体細胞に各分子状態のαシヌクレインをパッチピペットから細胞内から投与し、種々の分子状態にあるαシヌクレインによって生ずる神経機能異常を膜興奮性やシナプス伝達の観点から電気生理学的に検証すると共に、その異常を生ずる原因となるイオンチャンネル、受容体を薬理学的に検索して、異常を生ずるメカニズムを明らかにする。2)パーキンソン病患者やレビー小体型認知症患者の剖検脳切片からのαシヌクレイン部分凝集体の抽出を行う。レビー小体の有無に関わらないαシヌクレイン部分凝集体の分取を目的とするため、用いる部位としては前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉、小脳からの切片とする。各切片より可溶性分画を抽出し、各部位における部分凝集αシヌクレインの存在や分子状態を比較、検証する。これらの剖検脳由来の検体を細胞内投与した上で、1)で認めた合成部分凝集体による機能異常が生ずるかを比較検討する。3)パッチピペットから合成、ないしは剖検脳由来のαシヌクレインを大脳皮質錐体細胞、および海馬CA1錐体細胞に注入し、さらに細胞外にAβ1-40、又はAβ1-42を投与した上で、1)2)と同様の実験を施行し、αシヌクレイン、Aβそれぞれ単独投与の場合と比較して相乗作用が生ずるかを検証する。さらに、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬physostigmine、galantamineの投与下で同様の実験を行い、αシヌクレインやAβによる神経興奮性やシナプス伝達の変化がレスキューされるかを検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に引き続き合成シヌクレイン、電気生理学的実験や薬理学的検索に必要な試薬、ラット・マウスを購入する。剖検脳からの部分凝集シヌクレイン抽出や分子状態の解析に必要な物品も購入する。得られた研究成果については学会等にて報告する予定である。
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Research Products
(3 results)