2011 Fiscal Year Research-status Report
大脳基底核及び小脳の障害によって生じる神経ネットワークの機能異常の解明
Project/Area Number |
23591274
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
澤本 伸克 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90397547)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 神経機能画像 / ネットワーク |
Research Abstract |
大脳基底核や小脳が変性する神経疾患の運動障害では、[神経細胞変性による脳領域の障害→ネットワークの機能異常→臨床症状]に至る病態生理のうち、[ネットワークの機能異常]を理解することが不可欠である。大脳基底核及び小脳は直接の運動出力を持たないため、これらの障害がネットワークの機能異常につながり、最終的に運動皮質からの出力異常として臨床症状につながるからである。 平成23年度は、健常者の運動機能に関わる脳内ネットワークについて検討した。その結果、1.線条体及び視床が、補足運動野(SMA: supplementary motor area)・外側運動前野(lateral PM: lateral premotor cortex)・一次運動野(M1: primary motor cortex)と結合をもつこと、2.SMA・lateral PMの結合領域がM1の結合領域に比べて前方に位置すること、3.SMA・lateral PM・M1の結合領域は互いに重複していること、4.SMAとlateral PMの重複領域は、それぞれとM1との重複領域に比べて大きいこと、を示した。この所見は、運動皮質の神経情報が線条体及び視床で統合されていること、SMAとlateral PMの神経情報の統合の程度は、それぞれとM1との統合の程度に比べてより顕著であることを示唆するものと考えられた。パーキンソン病では、線条体ドパミンの欠乏によってSMAの機能が障害される一方、lateral PMの機能は比較的保たれると考えられてきた。今回の我々の結果は、皮質線条体投射のレベルでは、線条体ドパミン欠乏はSMAだけでなく、lateral PMが形成する回路にも同様の影響を与えることを示唆するものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、健常者データベースを構築することを目的として、ドパミン神経終末機能を評価する11C-CFTポジトロン断層法(PET: positron emission tomography)、安静時機能的磁気共鳴画像法(MRI: magnetic resonance imaging)、拡散強調MRI及び構造MRIのデータを順調に収集した。これによって、今後、神経変性疾患患者の病態を調べるための基礎的データベースを得ることができた。 また、この健常者データを用いて、脳内ネットワークを評価する解析方法を検討しながら、運動機能に関わるネットワークについて詳細に調べた。特に今年度は機能的MRIと拡散強調MRIの解析を中心に行った。その結果、運動皮質の神経情報が線条体及び視床で統合されていること、SMAとlateral PMの神経情報の統合の程度が、それぞれとM1との統合の程度に比べてより顕著であることを示唆する新しい知見を得ることができた。この知見を元に今後、パーキンソン病患者の病態解明に役立つ研究につなげることを期待している。以上のように、本研究は当初の計画に沿っておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度も継続して、健常者の脳内ネットワークを評価する解析方法についてさらに検討を加える。前年度に評価した機能的MRIと拡散強調MRIに加えて、今年度はPETの所見も合わせて評価する解析方法について検討していく。健常者の運動機能に関わるネットワークについてさらに詳細な解析を進めて学会発表および論文作成を行っていく。 同時に並行して、大脳基底核や小脳が変性される神経疾患の病態を明らかにするために、患者さんにご協力いただき、PET、安静時機能的MRI、拡散強調MRI及び構造MRIの撮像も進めていく。健常者との比較検討によって、正常ネットワークの破綻及び異常ネットワークの形成がないかを調べ、新たな病態生理モデルが提案できないか、新たな診断法として利用することができないか検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度収支状況報告書の次年度使用額は13,744円であり、研究費執行も当初の研究計画に沿っておおむね順調に進展した。 平成24年度は、健常者と神経変性疾患患者のPET及び3テスラ高磁場MRI撮像を継続して行う(現有設備・物品費・人件費・謝金)。得られた画像データは個人情報を厳重に管理しつつハードディスク(物品費)に保存する。画像データは画像解析ソフトウェア(物品費)を用いて、並列処理計算をするために複数のコンピュータで構築したクラスターシステム(物品費)で解析する。健常者と神経変性疾患患者を比較することで、神経変性疾患によってどのように脳内ネットワークが変容するのか、その変容がどのようにして病態に関連しているのかを調べる。得られた研究成果は国外及び国内の学会で発表を行い(旅費)、論文としても発表する(その他)。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Abnormal asymmetry of white matter integrity in schizophrenia revealed by voxelwise diffusion tensor imaging.2011
Author(s)
Miyata J, Sasamoto A, Koelkebeck K, Hirao K, Ueda K, Kawada R, Fujimoto S, Tanaka Y, Kubota M, Fukuyama H, Sawamoto N, Takahashi H, Murai T.
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Journal Title
Hum Brain Mapp.
Volume: in press
Pages: in press
Peer Reviewed
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[Journal Article] Transcultural differences in brain activation patterns during theory of mind (ToM) task performance in Japanese and Caucasian participants.2011
Author(s)
Koelkebeck K, Hirao K, Kawada R, Miyata J, Saze T, Ubukata S, Itakura S, Kanakogi Y, Ohrmann P, Bauer J, Pedersen A, Sawamoto N, Fukuyama H, Takahashi H, Murai T.
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Journal Title
Soc Neurosci.
Volume: 6
Pages: 615-26.
Peer Reviewed
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[Journal Article] Social impairment in schizophrenia revealed by Autism-Spectrum Quotient correlated with gray matter reduction.2011
Author(s)
Sasamoto A, Miyata J, Hirao K, Fujiwara H, Kawada R, Fujimoto S, Tanaka Y, Kubota M, Sawamoto N, Fukuyama H, Takahashi H, Murai T.
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Journal Title
Soc Neurosci.
Volume: 6
Pages: 548-58
Peer Reviewed
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[Journal Article] Alexithymia and regional gray matter alterations in schizophrenia.2011
Author(s)
Kubota M, Miyata J, Hirao K, Fujiwara H, Kawada R, Fujimoto S, Tanaka Y, Sasamoto A, Sawamoto N, Fukuyama H, Takahashi H, Murai T.
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Journal Title
Neurosci Res.
Volume: 70
Pages: 206-13
Peer Reviewed
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[Journal Article] Age-related cortical thinning in schizophrenia.2011
Author(s)
Kubota M, Miyata J, Yoshida H, Hirao K, Fujiwara H, Kawada R, Fujimoto S, Tanaka Y, Sasamoto A, Sawamoto N, Fukuyama H, Murai T.
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Journal Title
Schizophr Res.
Volume: 125
Pages: 21-9
Peer Reviewed
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[Presentation] Comprehensive retinotopic mapping by fMRI and direct cortical stimulation in occipital lobe epilepsy2011
Author(s)
Akihiro Shimotake, Riki Matsumoto, Masanori Kanazu, Hiroki Yamamoto, Yukihiro Yamao, Masao Matsuhashi, Nobukatsu Sawamoto, Nobuhiro Mikuni, Susumu Miyamoto, Hidenao Fukuyama et al.
Organizer
17th annual meeting of the organization on Human Brain Mapping
Place of Presentation
Centre des Congres de Québec, Quebec City, Canada
Year and Date
2011 – 629