2012 Fiscal Year Research-status Report
パーキンソン病および関連疾患における姿勢異常の病態の解明と治療法の開発
Project/Area Number |
23591280
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
村田 顕也 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (90264853)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三輪 英人 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50231626)
中西 一郎 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (40364088)
檜皮谷 泰寛 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (40405452)
幸田 剣 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (20433352)
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究の目的は、パーキンソン病の腰曲がり(camptocormia)の発症機序の解明と治療法の開発である。パーキンソンモデル動物を用い、傍脊柱筋などの姿勢制御筋へのドパミンの直接作用を検討し、さらに薬剤やリハビリテーション介入を通して姿勢異常の予防法や治療法を研究する。 われわれは、当科外来通院中のパーキンソン病患者34名(女性22名、男性12名。平均年齢73.2±6.3歳(平均H-Y 2.5)を対象に①腰椎X線および腰椎MRI(T1,T2,FS)を撮影し側彎の有無を検討し、②特に、側彎症を有する症例では、傍脊柱筋の脂肪混在の有無およびその混在パターンを評価し臨床症状と比較した。 その結果、パーキンソン患者では、70%の症例で側彎症が存在し、側彎症例の75%には、傍脊柱筋に脂肪混在を認めた。脂肪混在は、傍脊柱筋にびまん性または側彎の凸側の最長筋や腸肋筋に局所的に浸潤し、脂肪の局所浸潤部には浮腫性変化が混在することが確認された。側彎症を有し、脊柱起立筋の脂肪混在が高度な症例ほどH-Yや姿勢障害が高度でADL障害があった。 さらにわれわれは、camptocormiaと側彎症を有する経過13年の72歳男性のパーキンソン病患者からインフォームドコンセントを得て、傍脊柱筋部を生検し、同部の病理学的検討を行う機会を得た。病理学的には傍脊柱筋の筋線維は円形で大小不同を呈し、結合織増生と脂肪混在が高度であった 対象では、筋線維の速筋萎縮が著明で、遅筋比率は63%と、正常対照の53%に比べ増大していた。間質・血管周囲・筋線維内への炎症細胞浸潤や壊死・再生筋線維は認めなかったが、シトクロームC染色にて染色性の粗造化が認められ、虚血病変が示唆された。 以上のように、姿勢異常を呈するパーキンソン病患者では、脊柱起立筋の筋緊張異常により筋線維が虚血状態に陥り、筋萎縮・脂肪変性が誘発される可能性が想定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)当科外来・入院患者を対象としたcamptocormiaの疫学調査 2)MPTP投与モデルモンキーやヒト培養細胞にドパミン・ドパミンアゴニストを投与し、ドパミン受容体発現などドパミンの筋への直接作用を組織学的・生化学的・分子生物学的に検証する。 3)パーキンソン病患者に報酬系を考慮した体幹(特に傍脊柱筋や腸腰筋)や四肢のストレッチ訓練を施行し、訓練による姿勢障害の改善の程度を検証する。
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Strategy for Future Research Activity |
当科外来通院中のパーキンソン病患者32名(女性23名、男性9名。 平均年齢73.4 ± 2.1歳(平均H-Y 2.2)を対象に ①MRIを用いた傍脊柱筋(ES)の筋萎縮と脂肪混在の程度 ②近赤外線スペクトログラフィ- (NIRS)を用いた体位変換時の傍脊柱筋内の組織内血流量、酸素化ヘモグロビン量 (Oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン量 (Deoxy-Hb)、組織内酸素濃度(St O2)を検討した。その結果、パーキンソン病患者では、ESのうち最長筋の萎縮が著明であり、43.7%の症例では中等度以上の脂肪混入が確認された。また、健常人と異なり、背筋の筋固縮が高度なパーキンソン症例では、前屈位から正中位への姿勢変換時にES内のTotal-Hb, Oxy-Hb StO2量が増大せず、ESが継続的虚血状態に陥っていることを見出した。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
camptocormiaを呈するパーキンソン病患者では、通常の背筋の伸展では傍脊柱筋の血流改善がなされないことが明確になった。そこで、報酬系を利用した適切なストレッチを中心としたリハビリテーションの開発を行う。
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Research Products
(10 results)