2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23591283
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
河村 満 昭和大学, 医学部, 教授 (20161375)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小早川 睦貴 昭和大学, 医学部, 普通研究生 (80445600)
金野 竜太 昭和大学, 医学部, 助教 (70439397)
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Keywords | 筋強直性ジストロフィー / 心の理論 / ブローカ野 / 動作 |
Research Abstract |
本研究の目的は「大脳辺縁系の機能」と「ヒトの社会行動」との関連について、臨床神経心理学的に検討することである。この目的を達するため、様々な脳疾患(前頭側頭葉変性症、辺縁系脳炎、パーキンソン病、筋強直性ジストロフィー)を対象として、社会性に関する機能を評価検討した。本年度は、筋強直性ジストロフィー症例において他者の心の状態を推測する機能(いわゆる心の理論機能)の低下がみられることを報告した。同症例では言語・非言語両面から心の理論機能の低下が見られることが判明し、この内容は国際専門誌において公表を行った。また、社会性を支える機能のうち、身振りによって意志をつたえる機能について、ブローカ野(左下前頭回)損傷例を対象に検討した。これまでブローカ野は言語の表出に関する機能が重点的に調べられてきたが、近年の研究からは同部位が動作の表出や理解に関連することが示唆されていた。しかし、ブローカ野の損傷によって動作の表出が障害されるか否かについてはほとんど報告がなく、まして動作のどのような側面に障害がみられるかはわかっていなかった。この検討では、ブローカ野に病変を含む4症例において、口頭命令・物品の視覚提示といった入力モダリティや、パントマイム(何か動作を行う「振り」)や実使用などの出力モードの違いによって成績が変化するか否かを検討した。その結果、4症例に共通して口頭命令に対して動作を表出する際の成績が低いというパターンがみられた。この結果から、ブローカ野の損傷は言語的な入力を動作に変換する際に機能している可能性が示唆され、これは同部位がコミュニケーション動作の概念的な側面を処理しているという仮説を支持するものと考えられた。この他、脳損傷例におけるコミュニケーション機能を調べるため、顔認知障害を有する症例について報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳損傷例におけるコミュニケーション機能について、様々な疾患を対象とした検討が進められていることから、順調にデータが集められていると考えられる。それぞれの疾患は互いにことなる原因を有する疾患であるものの、症状や基盤としている機能には共通性が見られることから、一定の統一的な知見をもたらすことができるものと期待される。しかし、それぞれの検討は比較的少数例の検討が多いことから、さらに症例数を蓄積した検討を行うことで、さらに頑健な結果を導くことができる可能性はある。また、社会性と自律神経機能の関連、および脳画像解析による検討については学会発表等のレベルにとどまっていることから、必要なデータを揃え、投稿作業を進めていくことが必要であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに研究方法を確立し、それを用いた検討によりある程度のデータが取得されており、また結果を公表できていると考えられる。今後もこの方向を維持し、継続してデータの取得・成果の公表を続けていくことが重要と考えられる。実行していく検討の内容については、症例数の蓄積によるさらに頑健な結果の提示、症例数が不足している検討についての症例の確保および関連病院等における検索、またデータ取得がほぼ完了している内容の投稿といったことが必要と考えられる。さらに、最終年度に向けて既に集められた知見、今後取得できるであろう知見を統合的に理解できるよう、総合的なモデルを提示できるよう議論を進めていく必要があると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでにある程度の投稿を行うことができており、国際学会への発表も増え始めていることから、今後この路線を継続し、成果の公表のための経費をより割いて行く必要があると考えられる。このため、国内外への出張費や投稿準備料、英文校閲費用などをより多く使用していく予定である。
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Research Products
(10 results)