2011 Fiscal Year Research-status Report
免疫組織化学的研究からみた下オリーブ核仮性肥大の病態解析
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23591286
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小川 克彦 日本大学, 医学部, 助教 (90349994)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀井 聡 日本大学, 医学部, 教授 (40142509)
市原 和明 日本大学, 医学部, 助教 (50450581)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 仮性肥大 / 免疫染色 |
Research Abstract |
下オリーブ核仮性肥大 (PH-IO) の免疫染色を行い、その病態機序を検討した。PH-IO を呈した 9 剖検脳を対象とし、抗αB-crystallin (αBC) 抗体・SMI-31・抗 Lys-Asp-Glu-Leu (KDEL) 受容体抗体・抗 synaptophysin (SYP) 抗体・抗 microtubule-associated protein 2 (MAP2) 抗体を用い染色した。共焦点レーザー顕微鏡を用い αBC・SMI-31、MAP2・SYP、αBC・MAP2、SMI-31・SYP、Calbindin D28k(CB)・MAP2 の組み合わせで二重染色を施行した。PH-IO は片側 ; 6 例、両側 ; 3 例であった。責任病巣は、小脳;4 側、中脳;1 側、橋;2 側、不明;5 側であった。αBC 陽性神経細胞は全PH-IO側でみられ、PH-IO側では「微細な SYP 陽性顆粒」が脱落していた。多くのPH-IO側で、「MAP2 陽性の肥大した突起」と「大径 SYP 陽性顆粒」がみられた。2重染色では、PH-IO側ではαBC と SMI-31の両者を発現した神経細胞が確認され、SYP陽性顆粒が神経細胞表面や「MAP2 陽性の肥大した突起」に沿って出現していた。PH-IO側ではαBCとMAP2を発現する神経細胞もみられ、CB 陽性神経細胞は少数であった。αBC にはチュブリンと微小管の凝集を抑制する作用がある。PH-IOの神経細胞に発現したαBCもチュブリンと微小管の凝集を抑制していると推測した。抗 SYP 染色ではシナプス分布変化を示す所見がみられ、MAP2 との2 重染色ではシナプス分布変化と突起の肥大との関連性が示された。CB は細胞内カルシウム濃度を調整する作用を有する。PH-IOの神経細胞ではカルシウム濃度の調整機能が障害している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
症例数を増やして下オリーブ核仮性肥大の病態を考察したいと予定していたが、最近、健康長寿医療センターで追加症例を確認することができた。17 例存在することがわかり、17 例の病歴・病理報告書を確認する予定である。この 17 例の仮性肥大の責任病巣を考察し、更に免疫染色と一般染色を行う。2 重染色もまだ組み合わせが不十分なところがあるので、17 例のうち病理所見の強い例を用いて、追加の 2 重染色を行う。合計 26 例の病理所見のデータから今後、仮性肥大の病態について考察する予定であるが、17 例の病理標本を得るのに症例数も多いことから多少時間をとるようであり、実験経過はやや遅れていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
9 例の延髄仮性肥大を対象に染色を行ってきたが、症例数が 9 例と少ないので、今後はまず症例数を増やしていきたいと考えている。健康長寿医療センターで神経病理を専門にしている村山繁雄先生に相談した。村山繁雄先生はブレインバンクを扱っており、検索したところ 17 例の仮性肥大例があることが判明した。この 17 例の病理所見と病歴から仮性肥大の責任病巣を考察する。更に 17 例の病理切片を作成し、これまで行った免疫染色 (抗αBC 抗体・SMI-31・抗 KDEL 受容体抗体・抗 SYP 抗体・抗 MAP2 抗体) と HE 染色を含めた一般染色を行う。合計 26 例の病理所見と各仮性肥大の責任病巣の位置・発症時期との関係から、仮性肥大の病理所見の経時的変化について考察する。2 重染色では、αBC・KDEL、αBC・SYP、KDEL・SYP の 3 者の組み合わせで行う予定である。KDEL での染色では、細胞辺縁が染色される神経細胞や肥大した突起が観察された。KDEL・SYP の染色でこの突起が軸索か樹状突起なのかを鑑別できる可能性があり、この突起とシナプス終末との関連性を考察する。αBCとKDELはいずれも細胞保護に関連した蛋白である。αBC・KDELの染色から両者の関連性について論じたい。また αBC染色で、αBC陽性の突起が少数みられた。この突起とシナプス終末との関連性を論じるためにαBC・SYPの 2 重染色を行う。また、一般染色では抗 Golgi 体抗体を用いた染色を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
用意してある抗体を用いて追加症例の免疫染色と一般染色を行う。2 重染色も行うが抗体が不足する可能性が十分あるので、その場合は抗体を適宜追加する。2 重染色では蛍光発色液を使用するので、発色液を購入する予定である。一般染色では抗 Golgi 体抗体を用いた染色も行うので、抗 Golgi 体抗体も購入する。追加症例の染色や 2 重染色を行ったところで結果をまとめその研究結果について学会で発表するようにしていく。
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