2012 Fiscal Year Research-status Report
免疫組織化学的研究からみた下オリーブ核仮性肥大の病態解析
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23591286
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小川 克彦 日本大学, 医学部, 助教 (90349994)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀井 聡 日本大学, 医学部, 教授 (40142509)
市原 和明 日本大学, 医学部, 助教 (50450581)
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Keywords | 仮性肥大 / 免疫染色 |
Research Abstract |
延髄の下オリーブ核仮性肥大 (pseudohypertrophy of the inferior olives) の免疫染色を施行した。共焦点レーザー顕微鏡を用い、抗 Lys-Asp-Glu-Leu (KDEL) 抗体と抗 αB-crystallin (αBc) 抗体・抗 synaptophysin (SYP) 抗体それぞれの組み合わせで 2 重染色を施行した。抗 KDEL 染色では、細胞の辺縁が染色される神経細胞と肥大した突起が観察された。SYP との 2 重染色では SYP 陽性の顆粒が KDEL 陽性の神経細胞の辺縁や KDEL 陽性の突起の周囲に出現していた。昨年度の研究で、microtubule-associated protein 2 (MAP2) 陽性の肥大した突起の周囲に SYP 陽性顆粒が出現していたことから、PH-IO では樹状突起の発達とシナプス終末の分布変化に関連性があると考察した。同様の所見が KDEL/SYP の 2 重染色でみられたことから、KDEL 陽性の突起は樹状突起ではないかと考えた。抗 αBc 抗体/抗 KDEL 抗体の 2 重染色では、細胞の辺縁が染色される KDEL 陽性の細胞と細胞体全体が染色される αBc 陽性の神経細胞が観察され、少数ではあるが両者に陽性の神経細胞が観察された。昨年度の研究で PH-IO では、CalbindinD-28k の染色性が低下していることを示した。CalbindinD-28k が低下するとアポトーシスに関連する caspase-3 が活性化することから、PH-IO での神経細胞の変性機序を考察するために、抗 MAP2 抗体/抗 caspase-3 抗体の組み合わせで 2 重染色を施行したが、caspase-3 陽性の神経細胞は観察されず、アポトーシスとの関連性を示すことはできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに施行した 2 重染色の結果をもとにして、論文作成を行った。αB-crystallin (αBc) の発現と微小管やリン酸化ニューロフィラメントとの関連性・CalbindinD-28k の染色性低下の意義・シナプス終末と肥大した突起や神経細胞体との関連性について論じ、 更に KDEL 受容体の分布変化やKDEL 陽性の肥大した突起の意義についても考察した。論文は clinical neuropathology に投稿し、revision を得ることが先日できた。現在、referee での意見を参考にして論文の再作成を現在行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
9 症例の仮性肥大した延髄の免疫染色を行ってきたが、症例数が少ないことと残分の切片の枚数も少なくなっている。今後は症例数を増やしたいと考えているが、東京都健康長寿医療センターのブレインバンクに仮性肥大した延髄を有する剖検例が 17 例あり、現在 17 例それぞれの仮性肥大の原因病巣と原疾患を検索してまとめている。また、仮性肥大した延髄の標本を作成するため、切り出しや切片作成を行っている。標本が作成されれば、免疫染色を更に行っていきたい。 染色では、HE 染色・KB 染色・Bodian 染色などのルーチン染色をまず行い、αBc・SMI-31・SYP・MAP2・KDEL・CalbindinD-28k・caspase-3 に対するそれぞれの抗体を用いて単染色を行う。Golgi 体に対する抗体もあるので、その免疫染色も行う。小胞体の局在も明らかにするために ATF6 に対する抗体を用いて染色する予定である。 2 重染色では、KDEL 受容体の局在を明らかにするために KDEL/ATF6、KDEL/抗 Golgi 体抗体のそれぞれの組み合わせで 2 重染色を行う。PH-IO で CalbindinD-28k の染色性が低下していたが、CalbindinD-28k の活性が低下すると細胞内の Ca 濃度は上昇し、caspase-3 が活性化する。PH-IO での細胞変性にアポトーシスが関連している可能性があるが、17 例全例に caspase-3 で染色する。陽性例があれば、caspase-3 と αBc・SMI31・MAP2・KDEL ・CalbindinD-28k それぞれの抗体と 2 重染色していく予定である。これらの 2 重染色により、アポトーシスと熱ショック蛋白の発現、アポトーシスと微小管蛋白やリン酸化ニューロフィラメントとの関連性について論じていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
種々の抗体を用いて免疫染色を行う。2 重染色では抗体を多めに使用するので、不足する抗体があれば追加の抗体を入手する。蛍光色素も購入して共焦点レーザー顕微鏡を使用して観察する。 現在を論文を作成しているが、受理されればその別冊料金や掲載料を支払う予定である。
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