2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒト2型糖尿病膵島β細胞におけるプロゲステロン受容体の役割についての検討
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23591292
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
水上 浩哉 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00374819)
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Keywords | β細胞容積 |
Research Abstract |
2型糖尿病(T2DM)の原因としてβ細胞におけるインスリン分泌不全がある。特に日本人T2DMにおいてはインスリン分泌不全が病態に大きく寄与していると考えられてきた。その一因として、膵β細胞の進行性脱落がある。 新規T2DM治療薬であるDPP-IV阻害剤の例からも、現在では糖尿病を根治させるためには膵β細胞数、容積の増加が不可欠と考えられている。 本年度までの研究で、非糖尿病剖検膵臓115症例(男性69症例、女性49症例)を用いて、加齢、体格変化によるβ細胞容積、増殖能、新生膵島、細胞死の変化を明らかにしてきた。その結果、新生時から幼児期にβ細胞容積はほぼ完成し、成人ではほぼ一定であることが見出された。さらに欧米人と異なり、体格によるβ細胞容積変化は日本人では乏しいことが判明した。 今年度は加齢によるβ細胞の分子変化をさらに知るために、β細胞増殖因子であるPDX-1、セルサイクルインヒビターであるP16、酸化ストレスによるDNA傷害マーカーであるγH2AXを免疫染色的に検討した。その結果、加齢によるPDX-1の発現低下、P16、γH2AXの発現上昇が認められた。このうち、PDX-1及びP16の発現とβ細胞容積の有意な相関が認められた。よって、加齢によるβ細胞増殖因子の発現変化がβ細胞傷害因子よりもβ細胞容積に直接関係していると考えられた。 また、T2DM糖尿病49症例と非糖尿病29症例について膵島細胞容積、動態を比較した。2型糖尿病症例ではこれまでの報告と同様に非糖尿病症例に比し、β細胞容積の低下、α細胞容積の増加が認められた。両群間でβ細胞増殖能では明らかな違いは見られなかったが、新生膵島密度は2型糖尿病群で有意に増加していた(p<0.01)。T2DMでは1型糖尿病と異なりβ細胞容積は末期まで保存されているが、代償機構として新生膵島の産生亢進がある可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的ではまず、ヒトにおけるβ細胞容積の加齢、体格、2型糖尿病による変化を明らかにすることを記載している。今年度までの研究で剖検膵を用いた組織的検討により、非糖尿病、糖尿病それぞれの症例におけるβ細胞容積および動態変化の検討をほぼ達成し、さらにPDX-1、P16、γH2AXによるその機序の検討も行った。 また、研究予定では、これまでのデータに遺伝子解析を行うことになっているが、現在進行中である。まだ、まとまったデータにはなっていないものの、予備実験は終了し、実際の検体を用いてまずP16のDNAのメチル化について検討中である。よって、実験計画に沿って順調に研究は進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、2型糖尿病におけるβ細胞容積の減少に影響を与える臨床的因子の検索を行う。それには各症例の糖尿病罹病期間、治療の種類、HbA1cなどの臨床経過および臨床データを詳細に検討する。そのデータと組織的解析により得られたβ細胞容積、増殖能、新生能などのデータとの相関を検討する。 また、β細胞におけるDNAのメチル化についても検討する。現在膵島をパラフィン切片からマイクロダイゼクションし、DNAを抽出後、ビスルファイト処理してDNAのメチル化を検討している。プロゲステロン受容体の他に、今までの検討から加齢により変化をしていたP16についてメチル化を検討している。いくつかの症例でP16のメチル化の亢進が見出されていることから、DNAのメチル化は膵島容積の変化に関与する新しい機序である可能性がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(5 results)