2011 Fiscal Year Research-status Report
骨格筋・心筋におけるAkt1およびAkt2の機能の解明
Project/Area Number |
23591299
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡崎 由希子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30422299)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 心筋 / 骨格筋 |
Research Abstract |
M-Akt1KOマウス、M-Akt2KOマウス、M-Akt1/2DKOマウスの全身の糖代謝に関しては、M-Akt1KOマウス,M-Akt2KOマウスいずれにおいても、8週齢において随時血糖・インスリン値、インスリン負荷試験、ブドウ糖負荷試験でコントロール群と同等であった。高脂肪食負荷をかけて同様の検討を行ったが、やはり有意差を認めなかった。M-Akt1/2DKOマウスでも3週齢における随時血糖・インスリン値、インスリン負荷試験、ブドウ糖負荷試験においてもコントロールマウスと比べ有意差を認めなかった。これらより、心筋・骨格筋のAkt1,2は、検討を行った週齢では糖代謝に明らかな影響を与えないことが分かった。 M-Akt1/2DKOの出生後4週での死因は心不全と思われるため、経時的に心エコーを施行した。0週齢ではコントロールと同等であった心機能が、2週齢になるとやや低下傾向を認め、4週齢では心筋壁が有意に菲薄化し、また心内腔の拡張を認めた。この原因を調べるために心筋のTUNEL染色を行ったところ、M-Akt1/2DKOマウスの心臓ではアポトーシスの亢進を認めた。 またM-Akt1/2DKOマウスにおいて0,2,4週齢で経時的にRT-PCRを行った結果, グルコース・脂肪酸の代謝に関連する遺伝子であるインスリンミトコンドリアコピー数、電子伝達系の酵素であるシトクロームCや、脂肪酸の細胞内への取り込み・ミトコンドリアへの輸送に関連するFABP4・CD36の発現が経時的に低下していた。心臓でのAkt1,2の欠損によって, ミトコンドリアに何らかの異常が生じ, 成長に見合う必要なエネルギー代謝が適切に行えないことが心不全に関与していることが考えられた。心筋においてAkt1,2は、アポトーシス遺伝子の発現やグルコース・脂質代謝の異常を介して心不全を惹起させる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
M-Akt1KOマウス、M-Akt2KOマウス、M-Akt1/2DKOマウスの全身の糖代謝に関しては、M-Akt1KOマウス,M-Akt2KOマウスいずれにおいても、8週齢において随時血糖・インスリン値、インスリン負荷試験、ブドウ糖負荷試験でコントロール群と同等であった。高脂肪食負荷をかけて同様の検討を行ったが、やはり有意差を認めなかった。M-Akt1/2DKOマウスでも3週齢における随時血糖・インスリン値、インスリン負荷試験、ブドウ糖負荷試験においてもコントロールマウスと比べ有意差を認めなかった。これらより、心筋・骨格筋のAkt1,2は、検討を行った週齢では糖代謝に明らかな影響を与えないことが分かった。 M-Akt1/2DKOの出生後4週での死因は心不全と思われるため、経時的に心エコーを施行した。0週齢ではコントロールと同等であった心機能が、2週齢になるとやや低下傾向を認め、4週齢では心筋壁が有意に菲薄化し、また心内腔の拡張を認めた。この原因を調べるために心筋のTUNEL染色を行ったところ、M-Akt1/2DKOマウスの心臓ではアポトーシスの亢進を認めた。 またM-Akt1/2DKOマウスにおいて0,2,4週齢で経時的にRT-PCRを行った結果, グルコース・脂肪酸の代謝に関連する遺伝子であるインスリンミトコンドリアコピー数、電子伝達系の酵素であるシトクロームCや、脂肪酸の細胞内への取り込み・ミトコンドリアへの輸送に関連するFABP4・CD36の発現が経時的に低下していた。 心臓でのAkt1,2の欠損によって, ミトコンドリアに何らかの異常が生じ, 成長に見合う必要なエネルギー代謝が適切に行えないことが心不全に関与していることが考えられた。心筋においてAkt1,2は、アポトーシス遺伝子の発現やグルコース・脂質代謝の異常を介して心不全を惹起させる可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、インスリンシグナル伝達を担う中心的分子であるAkt1およびAkt2の骨格筋や心筋における働きを解明することで、糖尿病患者に認められる骨格筋でのインスリン抵抗性の分子メカニズムや、糖尿病性心筋症の病因・病態を解明することを目的としている。H23年に行った研究にて、Akt1,2の心筋における役割の一部が分かってきた。H24年度は、予定通り、骨格筋におけるAkt1,2の役割の解明を進めていきたい。Akt1/2DKOマウスは平均4週で死亡するため、Akt1、Aktダブルノックアウトによる骨格筋への影響が十分に検討できない。そこで骨格筋特異的にAkt1およびAkt2をKOしたマウス(MLC1-Akt1/2DKOマウス)を用い糖代謝への影響、および骨格筋への影響を検討する予定である。糖代謝に関しては、成長曲線を観察し、ブドウ糖負荷試験、インスリン負荷試験を行う。また、同実験を高脂肪食負荷マウスにも行っていく。 骨格筋に関しては、MLC1-Akt1/2DKOマウスの骨格筋における遺伝子発現を特に糖代謝、脂質代謝に関連する遺伝子に注目して解析する。H23年度の研究でAkt1,2のダブル欠損にて心筋のミトコンドリア機能に影響が出ることが分かったため、本年度は骨格筋のミトコンドリア機能を中心に調べて行く。また、それらの変化が時系列的に変化するか否かも観察していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度は直接経費として150万円戴ける予定となっている。マウスの系統維持費、骨格筋の遺伝子発現関連研究を行う試薬の購入、学会発表等の費用として使用する予定である。
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