2012 Fiscal Year Research-status Report
1型糖尿病の組織特異的発症機序に関わる遺伝基盤の解明と発症予防・治療への応用
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23591327
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
能宗 伸輔 近畿大学, 医学部, 講師 (90460849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池上 博司 近畿大学, 医学部, 教授 (20221062)
川畑 由美子 近畿大学, 医学部, 准教授 (80423185)
馬場谷 成 近畿大学, 医学部, 講師 (10449837)
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Keywords | 1型糖尿病 / 膵島炎 / 臓器特異的自己免疫疾患 / 関連解析 / NODマウス |
Research Abstract |
ヒトMAFA遺伝子多型と1型糖尿病との関連解析について、国内3施設(長崎大学、埼玉医科大学、埼玉社会保険病院)および米国コロラド大学George Eisenbarth教授との多施設共同研究を行ない、日本人において有意な関連を確認した(オッズ比0.48、95%CI:0.31-0.76,p=0.001)。また他の臓器特異的自己免疫疾患(バセドウ病、橋本病、円形脱毛症)との関連解析の結果、ヒトMAFA遺伝子は1型糖尿病にのみ関連を示し他の自己免疫疾患と関連を示さなかった。このことからMAFAは膵島自己免疫に特異的な疾患感受性を有する可能性が示された。またMafaが1型糖尿病発症に果たす役割をin vivoで解析する目的で、MafaノックアウトNODマウスを樹立した。N5世代において、1型糖尿病疾患感受性(Idd)領域近傍のマイクロサテライトマーカーが全てNOD型であることを確認し累積糖尿病発症率を比較すると、ノックアウト型(KO)の発症率(5.6%)はヘテロ型(HT)(60.0%,p=0.0004, rog-lank test)および野生型(WT)(95.6%,p<0.0001)に比し有意に低頻度であり、HTはWTに比し有意に低頻度であった(60.0% vs. 95.6%, p=0.0004)。この結果は、膵島および胸腺に発現するMafa遺伝子の欠損が、1型糖尿病発症に関与していることを示しており興味深い結果と言える。膵島炎の評価をH-E染色で、また浸潤免疫細胞の分画を免疫組織学的染色にて評価するために8週齢マウスにおける膵組織を採取保存をおこなった。また上記ノックアウトマウスの表現型解析と並行して、胸腺特異的Mafa過剰発現モデルマウスを樹立する目的で、Aire遺伝子プロモーター下にMafaのcDNAを発現するベクターを構築、トランスジェニックマウスの樹立をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ヒトMAFA遺伝子多型の多施設共同研究は終了し、その結果は2013年の12th International Conference on the Immunology of Diabetes Society(Victoria, Canada)にて発表した。また他の臓器特異的自己免疫疾患(バセドウ病、橋本病、円形脱毛症)との関連解析の比較によりヒトMAFA遺伝子多型が1型糖尿病とのみ関連を示し、膵島特異的自己免疫疾患の発症に関わる遺伝子であることを2013年の4th Scientific Meeting of the Asian Association for the Study of Diabetes(Kyoto, Japan)のシンポジウムにて報告しており、ヒトにおける解析については3カ年の計画を現段階で全て達成している。一方マウスを用いての解析は、ノックアウトマウスとトランスジェニックマウスの系を同時進行している。MafaノックアウトNODマウスの樹立は目的通り終了し、既に累積糖尿病発症率の解析も終了しており興味深い結果が得られている。またMafaの胸腺特異的トランスジェニックマウスの樹立に関してはトランスジーンの構築が終了し、そのマイクロインジェクションの結果、トランスジェニックマウスのFounderおよびF1マウスの出産が確認されており、総合的には当初の計画以上に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトに関する解析は既に2カ年で目標を達成している。 Mafaノックアウトマウスについては、膵組織のH-E染色標本を用いて膵島炎の評価をおこなう。次に膵島に浸潤している免疫細胞および膵所属リンパ節においてCD4、CD8、CD25、FOXP3などの細胞表面マーカーを免疫組織学的染色法を用いて染色することにより、制御性T細胞の分布を検証する。そのための組織収集は終了しており、免疫染色の環境も整っている。またトランスジェニックマウスの樹立は進行中であり、3匹のトランスジーン陽性のFounderマウスを確認し、そのうち2系統のF1マウスを確認している。今後、F1マウスにてトランスジーンのGenotypeをおこない、陽性マウスのMafa発現量をサザンブロットにて確認。系統維持とともに、NODマウスへの戻し交配をおこなう。戻し交配が終了後累積糖尿病発症率、組織収集(膵臓、脾臓、唾液腺、甲状腺、胸腺)を行ない膵島炎スコア、免疫組織学的解析による制御性T細胞の分布など継続して解析を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)免疫組織学的解析のためのモノクローナル抗体、2次抗体購入、2)トランスジェニックマウス樹立に要する受託費用、3)遺伝子型解析、サザンブロットに要するプライマー、Taqポリメラーゼなどの実験試薬の購入費用、4)樹立したノックアウトマウス2系統(野生型、ノックアウト型)、トランスジェニックマウス3系統の系統維持に必要な費用、5)トランスジェニックマウスのNODマウスへの戻し交配に伴う実験動物購入費に使用する。
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