2011 Fiscal Year Research-status Report
リポ蛋白質HDLの抗動脈硬化作用におけるAMPキナーゼの役割と循環器疾患治療薬
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23591331
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
木村 孝穂 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90396656)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 動脈硬化 / HDL / スフィンゴシン1-リン酸 / 血管内皮細胞 / スカベンジャー受容体 / AMPK |
Research Abstract |
平成23年度は「HDL作用を仲介するスカベンジャー受容体(SR-BI)とS1P受容体の細胞内シグナル伝達機構におけるAMPキナーゼの役割の解明」を中心に解析を進めた。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)にHDLを作用させるとNO合成酵素の活性化(NOSのウエスタンブロットによるリン酸化とトリチウムでラベルしたアルギニンからシトルリンへの変換)、細胞接着分子(VCAM,ICAM)の発現(酵素抗体法)抑制が起き、PI3-キナーゼ(PI3K)活性を反映したAkt活性化、ERK活性化、p38MAPK活性化、細胞内Ca濃度変化がおきることを確認した。またHDLがNO合成酵素活性化に伴いAMPキナーゼ(AMPK)活性化を促進することが確認できた。これらのHDL作用におけるアポ蛋白/SR-BI及びS1P/S1P受容体とAMPKの役割を明らかにするためシグナル伝達系を特異的に阻害する目的でSR-BI-siRNA、S1P受容体-siRNA、S1P受容体サブタイプ特異的アンタゴニスト及びAMPK-siRNAを用いた実験をした。この実験ではシグナル伝達系を特異的に促進する目的ではSR-BIアゴニスト(HDLを脱脂質しアポAを抽出しこれにフォスファチジルコリン(PC)を加えて再構成したHDL(rHDL)はSR-BIのみを活性化することができる)、サブタイプ特異的なS1P受容体アゴニストを用いた。その結果、HUVECではS1P/S1P受容体/AMPK/Akt/eNOSとrHDL/SR-BI/PDZK-1/AMPK/Akt/eNOSの二つの独立したシグナル伝達系がHDL刺激により促進されること、SR-BIを介したAMPK活性化にはLKB1とカルモジュリンキナーゼが関与しているがS1P/S1P受容体を介した系ではカルモジュリンキナーゼが関与しているがLKB1は関与していないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は「HDL作用を仲介するスカベンジャー受容体(SR-BI)とS1P受容体の細胞内シグナル伝達機構におけるAMPキナーゼの役割の解明」を中心に解析を進め、HDLによるAkt/eNOS活性化機構におけるAMPKの役割の解析が進んだ。予想通り、AMPKはS1P/S1P受容体系でもアポ蛋白/SR-BI/PDZK1の系でもAkt/eNOSの活性化を媒介していた。このシグナル伝達機構ではカルモジュリンキナーゼの関与も共通であったがLKB1の関与に違いがあった。アポ蛋白/SR-BI/PDZK1の系ではカルモジュリンキナーゼとLKB1両者がAMPK活性化を媒介していた。この発見はHDLの作用を解析するうえで新しい発見であった。これまでHDL刺激により促進されるS1P/S1P受容体を介したシグナル伝達系とアポ蛋白/SR-BI/PDZK1を介したシグナル伝達系で大きな相違はみられなかったが今年度の解析でLKB1の役割が異なってることを発見した。この点で23年度の研究成果は大きく、当初の目標である「HDL作用を仲介するスカベンジャー受容体(SR-BI)とS1P受容体の細胞内シグナル伝達機構におけるAMPキナーゼの役割の解明」についてはおおむね順調に進展したと考えられる
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画は「AMPK活性化剤によるSR-BI発現の増強とHDL作用への影響の解析」を進めていく。既にAMPKを標的とする糖尿病治療薬ビグアナイド及びAMPK刺激薬AICARによってNO合成酵素の活性化、細胞接着分子(VCAM,ICAM)の発現抑制、また、SR-BIの蛋白及びmRNAの発現増加を観察している。そこで、以下の点につきAMPK刺激薬の作用機序を解析する。AMPK特異的siRNAなどを用いてSR-BIの発現を遺伝子レベル、蛋白レベルで調べることでAMPK活性化からSR-BI発現増強に至るシグナル伝達系を明らかにしたい。SR-BI特異的siRNA、S1P受容体特異的siRNAを用い、AMPK活性化によるSR-BI発現増強効果がHDL作用の増強をもたらすメカニズムにつき受容体、各シグナル分子の関与を調べる。これらの実験を通して、我々はAMPK刺激によるSR-BIの発現増加がHDL作用の増加をもたらしていることを明らかにしたい。AMPK活性化による血管内皮細胞におけるスカベンジャー受容体SR-BIの発現調節機構とスタチン作用のクロストークの解析:既にスタチンがRho阻害、PPARalpha活性化を介してSR-BI発現に関わっていることを明らかにしているがスタチンはAMPK活性化を伴っていなかった。そこでAMPK活性化によるSR-BI発現増強作用にRho及びPPARalphaが関連しているかをRhoのコンスティテューティブアクティブ、PPARalpha阻害剤や特異的siRNAを用いて解析していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
血管内皮細胞と培養に必要な培養液、シャーレなど消耗品。血管内皮細胞に導入するsiRNA、及び導入に必要な試薬一式。シグナル伝達系の解析で行うウエスタンブロットに必要な各種抗体、メンブラン、濾紙、ゲルなどの消耗品一式。同様にリアルタイムPCRも行うためRNA抽出、cDNA作成、PCRに必要な試薬、消耗品一式。<平成24年度への繰越金が生じた状況>AMPK活性化によるSR-BI発現増強作用にRho及びPPARalphaが関連しているかをRhoのコンスティテューティブアクティブ、PPARalpha阻害剤や特異的siRNAを用いて解析する実験を平成23年度中に行う計画であったがこれらの実験を平成24年度以降に実施するよう計画を変更したため。
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Research Products
(1 results)