2012 Fiscal Year Research-status Report
AMPD1による新規骨格筋インスリン感受性調節機構に関する基礎的検討
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23591342
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
平瀬 徹明 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (60363446)
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Keywords | AMP deaminase |
Research Abstract |
骨格筋はインスリンの最大の標的臓器のひとつであり、糖代謝調節において中心的役割を果たすことが知られている。肥満、生活様式により修飾される骨格筋インスリン感受性は糖尿病の発症・進展に重要な役割を果たすことが示されてきた。AMP deaminase (AMPD)はプリンヌクレオチドサイクルにおける主要なAMP分解酵素であり、細胞内ATPレベルの調節を介して骨格筋エネルギー代謝を制御する。骨格筋に選択的に発現するアイソザイムであるAMPD1とヒト代謝性ミオパチーの関連やインスリンクリアランスの相関が報告され、AMPD1の骨格筋代謝調節を介した糖・脂質代謝調節への関与が示唆されている。 昨年度作成した培養マウス骨格筋細胞C2C12を用いたパルミチン酸処理によるインスリン抵抗性モデルにおいて、aktシグナルの減弱とAMPD活性の低下を確認した。これにより、インスリン抵抗性の増加とAMPD活性の低下の連関が示唆された。次にAMPD1ノックアウトマウスにおける糖代謝を検討した。野生型及びAMPD1ノックアウトマウスに対して通常食及び高脂肪食を12週間投与した後に、糖負荷後の血糖上昇とインスリン負荷後の血糖低下を野生型及びAMPD1ノックアウトマウスにおいて比較検討し、インスリン感受性を評価した。その結果、AMPD1ノックアウトマウスにおいて、高脂肪食により誘導される耐糖能低下、インスリン感受性の低下の改善を認めた。これにより、AMPD1のインスリン感受性減弱作用が生体において明らかとなった。今後、生体骨格筋組織における糖取り込みへのAMPD1の関与を、FDG-PET法により野生型とAMPD1ノックアウトマウスを比較することで検討する。また摘出骨格筋組織を用いて糖取り込み分子機構におけるAMPD1の役割を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 培養骨格筋細胞におけるインスリンシグナルに対するAMPD1の作用の検討 培養マウス骨格筋細胞C2C12を用いたパルミチン酸処理によるインスリン抵抗性モデルにおいて、インスリン刺激によるリン酸化酵素aktシグナルの減弱とAMPを基質として用いたAMPD活性の低下を確認した。この際、AMPDアイソフォームの遺伝子発現に変化は見られなかった。これにより、インスリン抵抗性の増加とAMPD活性の低下の連関が示唆された。 2. AMPD1ノックアウトマウスにおける糖代謝の検討 野生型及びAMPD1ノックアウトマウスに対して通常食及び高脂肪食を12週間投与した後に、野生型骨格筋におけるAMPD1発現及び活性の変化を検討した。次に、糖負荷後の血糖上昇とインスリン負荷後の血糖低下を野生型及びAMPD1ノックアウトマウスにおいて比較検討し、インスリン感受性を評価した。その結果、AMPD1ノックアウトマウスにおいて、高脂肪食により誘導される耐糖能低下、インスリン感受性の低下の改善を認めた。今後骨格筋組織におけるインスリンシグナル伝達分子の活性変化を検討予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. AMPD1遺伝子ノックアウトのAMPDアイソフォーム発現に対する作用の検討 野生型及びAMPD1ノックアウトマウスにおいて、糖代謝調節に重要な骨格筋組織、肝臓、脂肪組織におけるAMPD2及びAMPD3の遺伝子及び蛋白質発現をそれぞれRTPCR法及びウエスタンブロット法により比較検討する。これによりAMPD1遺伝子ノックアウトによるAMPD2及びAMPD3発現の代償性変化を検討する。 2. AMPD1骨格筋組織における糖取り込みにおけるAMPD1の作用の検討 生体における骨格筋糖取り込みとインスリン抵抗性によるその減弱をFDG-PET法で評価するため、高脂肪食負荷マウスで検討する。絶食後給餌及びインスリン投与により誘導される下肢骨格筋における糖取り込みを、野生型及びAMPD1ノックアウトマウスにおいて比較検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞培養・細胞生物学的実験に必要な経費、実験モデル動物の購入・飼育経費、病理組織学的解析や遺伝子解析に必要な試薬類の購入を中心とした消耗品費が研究経費の主体となる。動物購入費・飼育経費は、実験のために必要な頭数と飼育期間から算出した。設備備品の購入は計画していない。 旅費は研究成果の公表及び関連研究領域の学術情報収集のため、代謝病学、循環器病学及び関連研究の分野において先導的立場にある学会へ研究期間中に出席するために必要な経費として算出した。 消耗品が事前予測より安価に購入できたため、残額が発生した。次年度消耗品に使用予定である。
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Research Products
(2 results)