2011 Fiscal Year Research-status Report
細胞内エストロゲンシグナル経路の可塑性とアロマターゼ阻害剤耐性機序の解明
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23591344
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 慎一 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60144862)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | エストロゲン / ホルモン療法耐性 / アロマターゼ阻害薬 / MCF-7細胞 / 乳癌 / シグナル伝達 / GFP / アンドロゲン |
Research Abstract |
今年度は今後の研究材料となる、アロマターゼ阻害剤に対する異なった複数の耐性機序をもつような各種耐性細胞を樹立することを行った。すなわちERE-GFPレポーター遺伝子を安定導入したER陽性乳癌細胞MCF7-E10を親株にして、生細胞中のエストロゲン活性をモニターしながら分離することにより、想定される耐性メカニズムのそれぞれを獲得したと思われるエストロゲン枯渇耐性株およびアロマターゼ阻害剤耐性株を複数樹立した。(1)MCF7-E10細胞を親株として長期エストロゲン枯渇耐性細胞を、GFP蛍光をモニターしながら、蛍光を発するコロニーと発しないコロニー、2種類を選択的に3個ずつ分離し、それぞれを細胞株として樹立した。(2)また、このMCF7-E10細胞にアンドロゲンを加えながら長期エストロゲン枯渇耐性株をGFPをモニターしながら作製を試み、アンドロゲン代謝産物依存性を持つと思われる耐性株を2株樹立した。(3)T47D-TE8細胞を親株として増殖因子カクテルを加えて長期エストロゲン枯渇耐性細胞を1と同様GFP蛍光をモニターしながら3株樹立した。(4)さらにMCF7-E10細胞にアロマターゼ発現ベクターを安定導入し、アロマターゼを有するERE-GFPレポーター細胞を樹立した。この細胞を親株にしてアロマターゼの基質であるテストステロンとアロマターゼ阻害剤(AI)を加えて長期に培養し、AI耐性株を樹立した。その際にGFP活性をモニターしながら、単なる枯渇耐性(1や2で作成した細胞)のクローンを排除しながら、真のAI耐性と思われる株、2株を樹立した。以上のように、これまでに機序の異なると思われる5種類の耐性株(計13株)の樹立に成功した。次年度以降、これらを用いて各々の耐性機序について解析していく。これらの株については東北大学より特許を出願した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
概要で述べたように、当初の交付申請書に記載した本年度の研究実施計画のすべてについて達成し、5種、13株の耐性細胞株を樹立できた。さらにこれらの細胞株を特許生物寄託センターに寄託し、特許を出願した。ちなみに今回樹立し、出願した細胞株は以下の5種類である。 Type 1耐性細胞:ER活性(GFP+)を保持したエストロゲン(E2)枯渇耐性MCF-7細胞 Type 2耐性細胞:GFP蛍光を失ったE2枯渇耐性MCF-7細胞 Type 3耐性細胞:GFP蛍光を失ったE2枯渇耐性T-47D細胞 Type 4耐性細胞:GFP+のアンドロゲン依存性のE2枯渇耐性MCF-7細胞 Type 5耐性細胞:GFP+でType 1耐性ではないアロマターゼ阻害剤耐性細胞
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Strategy for Future Research Activity |
1.これらの樹立した各種耐性細胞のERとその標的遺伝子の発現状況、Her1~4、MAPK系やPI3K-AKT系などの細胞膜受容体シグナル経路関連因子の発現やリン酸化状態を解析する。2.網羅的リン酸化プロテオミックス解析法を用いてこれらの細胞内の蛋白のリン酸化状態を網羅的に親株と比較検討する。これらの検討結果から、耐性となっている分子機序について、とくに細胞内シグナル経路の観点から明らかにする。 さらに耐性細胞の新規治療法の可能性を探るため、1.これらの細胞の各種抗エストロゲン薬や分子標的治療薬に対する感受性を検討する。2.これらの細胞の浸潤能、転移能について、またそれらに対する各種薬剤の効果について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成24年度請求額と合わせ、次年度に計画している研究の遂行にしようする予定である。
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