2011 Fiscal Year Research-status Report
2光子励起法を用いた神経内分泌細胞の顆粒分泌の可視化による解析と病態生理の解明
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23591348
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高野 幸路 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20236243)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | exocytosis / pitutary / hormone / two photon excitation |
Research Abstract |
正常細胞からのホルモン分泌については、ラット下垂体前葉細胞からの顆粒分泌過程を観察した。分泌部位については毛細血管およびほかの細胞との関連において調べる必要がある。分泌細胞を取り囲む細胞間隙はSRBで蛍光を発することから、細胞間や毛細血管の微細な構築を3次元に再構成することで解析した。下垂体前葉細胞では分泌細胞の種類によって開口分泌の分泌様式が異なり、また分泌刺激によっても異なっていることが、ラットGH細胞、ラットプロラクチン細胞、ラットACTH細胞を観察して明らかになった。にヒトのホルモン産生腫瘍では、GH産生腺腫は完全融合、プロラクチン産生腺腫はkiss-and-stayであることを確認した。これらの分泌様式の差異がどのような分子基盤や刺激伝達経路で可能になっているかをFアクチンの関与を含め解析した。正常細胞の生理的な分泌様式との差異についても、ラット正常細胞で解析を始めた。ラットプロラクチン分泌については自発分泌と刺激下の分泌動態が異なり、刺激の強度によっても分泌様式の変化を見せることを確認し、その変化を引き起こす分子基盤の一部に分泌に関与する分子のアシル化が関与することを見出した。機能性副腎髄質腫瘍を観察し、自発開口を確認し下垂体腺腫との相違を見出し、その生理的・病態生理学的意義を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラットの正常下垂体前葉細胞からの顆粒分泌については、刺激因子による分泌過程の解析と自発分泌の有無について、GH細胞、プロラクチン細胞、ACTH細胞で主要な観察を行った。特にプロラクチン細胞で自発分泌の詳細な解析を行った。GH細胞、ACTH細胞では、細胞集塊状態では自発分泌はほとんど見られないことを明らかにした。刺激による分泌の動態に、細胞の種類、刺激の相違で分泌様式が異なることが認められ、その相違に細胞内カルシウム動態が関与することが示唆されたので現在解析中である。一方、抑制因子については、プロラクチン細胞でD2作動薬の抑制機構を示すことができたが、GH細胞とACTH細胞では生きた状態で細胞同定して実験を行う必要がありそのための準備を行った。年度後半を用いて細胞表面レクチンを用いて、細胞種類を同定できるようになった。これから抑制機構の解析が可能になる。分泌動態の相違の基盤となる分子機構については、その一部を解析することができたが、これから詳細な解明が必要である。これらの成果を用いて、機能性下垂体腺腫の解析をする基盤ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
内分泌の機能性腺腫では、異常な細胞増殖を起こすことに加えてホルモンが自律的に過剰分泌されており、ホルモン過剰により特有の臨床症状を呈するとともに生命予後および患者の生活の質を大きく左右する。このようなホルモンの自発的な分泌の特徴を分析する。ヒトの正常下垂体細胞は実験用として得られることはほとんどなく、それゆえに正常細胞で基礎分泌(自発的な開口分泌)がどの程度起こっているのか、知られていない。申請者らは外科的治療の際に病変部位にアクセスする過程でやむを得ず摘出された少量のヒト正常下垂体細胞を用いてTEP画像法で観察したところ、自発的な開口分泌はほとんど見られなかった。一方、機能性腺腫では個々の腺腫により、自発的な開口分泌の頻度は大きく異なった。申請者らは高カリウム刺激やフォルスコリンなどのcAMPアゴニストにより開口分泌が促進されることを予備的に見ている。また、これまで電気生理学的に分泌刺激ホルモンのシグナル伝達因子の恒常的活性化変異(gsp変異など)により分泌に必須な非選択性陽イオン電流や電位依存性カルシウム電流が持続的に活性化していることを見ている。実際のヒトの機能性腺腫でこのような活性化変異が分泌の最終段階である開口分泌の自発的・持続的な開口分泌につながっているのかどうかを検証する。また、ホルモン分泌抑制薬の開口分泌に対する作用のシグナル伝達経路をラット正常細胞での解析にならって調べる。ヒトの腺腫でソマトスタチンやドーパミンがカルシウム機構よりも遠位で分泌抑制作用を示すことは予備的に確認している。GH産生下垂体腺腫ではいくつかの病因が明らかになっており、また病理学的には分泌顆粒が豊富な腺腫とほとんど見られない腺腫に分類される。自発性の分泌が病因によって異なるかどうか、また分泌顆粒の豊富な腺腫とそうでない腺腫で分泌様式が異なるのか、分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ラット下垂体前葉細胞の解析の継続を行う。臨床課題との連携も考え、薬剤として応用されている物質の分泌抑制機構のメカニズムを正常細胞で確認する。ヒト機能性下垂体腺腫の開口分泌の解析を本格的に開始し、症例数を増やして臨床的意義を明らかにする。とくにgsp変異などの刺激伝達経路分子の変異の関与や、病理的な分類、特にdensely-granulatedやsparsely-granulatedの病理的な相違と分泌動態の相違に関連があるかなどを解明する。治療に用いられている、ソマトスタチンアナログやD2作動薬の分泌抑制機構やその程度が臨床実態とどのように相関するかを解析する。自発的開口分泌について、自発的電気的興奮性の関与と、その原因を解析する。これには、膜電位の同時解析の手法の確立が必要である。ヒト機能性副腎髄質腫瘍からの開口分泌の解析を行う。とくに、褐色細胞腫症例で発作性の症状の発現に開口分泌の動態がどのように関与しているかを明らかにする。このため、自発分泌過程と、刺激によって誘発される分泌に分泌動態の相違がないかを解析する。これらに、研究費を用いる予定である。
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[Journal Article] Functional molecular morphology of anterior pituitary cells, from hormone production to intracellular transport and secretion.2011
Author(s)
Matsuno A, Mizutani A, Okinaga H, Takano K, Yamada S, Yamada SM, Nakaguchi H, Hoya K, Murakami M, Takeuchi M, Sugaya M, Itoh J, Takekoshi S, Osamura RY
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Journal Title
Med Mol Morphol
Volume: 44
Pages: 63-70
Peer Reviewed
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