2011 Fiscal Year Research-status Report
分化脂肪細胞内におけるアディポネクチンの分泌経路の同定と調節機構の解明
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23591353
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大屋 健 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (70599315)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大月 道夫 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00403056)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アディポサイトカイン / 細胞内小胞輸送 |
Research Abstract |
アディポネクチンを分泌する脂肪細胞のモデルとして3T3-L1細胞を用いている。3T3-L1細胞は脂肪細胞の研究に広く使われているが、3種類の薬剤刺激により成熟脂肪細胞に分化させる必要があり、個々の細胞間で不均一な分化度を示す事が多い。分化誘導4日目にショ糖密度勾配遠心分離を行うことで、より均一な分化状況の細胞分画の取得に成功し、分泌量の半定量が可能な培養系を得ることが出来た。アディポネクチンの分泌様式であるところの細胞内小胞輸送を制御しているSNARE蛋白質のうち、脂肪細胞分化過程で発現上昇が見られるVAMP2、VAMP3、VAMP5、VAMP7のアディポネクチン分泌への関与を検討した。アディポネクチンはインスリンの刺激により分泌が促されるアディポサイトカインであるが、VAMP3をsiRNAにより転写阻害した場合、インスリン刺激による分泌促進が消失し、刺激を行わなかった場合と同程度まで分泌が低下する事を見出した。VAMP3は多くの細胞でリサイクリングエンドゾームを介する輸送に関わっていることが知られている。そこで、リサイクリングエンドゾームの構築・輸送を制御している低分子量G蛋白質Rab4の関与を検討した。siRNAによりRab4の転写を阻害するとアディポネクチンの分泌は大きく阻害された。これより、アディポネクチンはメインルートとしてリサイクリングエンドゾームを介して分泌されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3T3-L1細胞は線維芽細胞の状態に薬剤による刺激で脂肪細胞に分化させて使われるが、その分化度は細胞ごとに不均一で未分化のものも多く含まれる。また、脂肪細胞に分化した後でも、経過によってアディポネクチンをよく分泌する時期と大きな脂肪滴を形成する時期は異なっており、それらがモザイク状に共存しているとの報告がある。ショ糖密度勾配による分離を行ったところ、比較的小さな脂肪滴を多数含有する均一で、かつアディポネクチン分泌能の高い分画を得ることが出来た。その細胞群を用いて、培養液交換後6時間までの間、分泌量がほぼ直線的に増加する系を確立することができ、半定量的な解析が可能となった。Rab4のsiRNAによる阻害効果はmRNAレベルで90%と良好な結果が得られ、アディポネクチンの明確な分泌低下というphenotypeを得る事ができた。また、VAMP3のsiRNAによる阻害効果は66%と十分でないものの、インスリン刺激によるアディポネクチン分泌促進の消失が見られた。その一方で、VAMP2、VAMP5、VAMP7の阻害は30-40%と十分には得られなかったので、アディポネクチンの分泌に何ら影響は見られなかったが、分泌経路への関与を除外する事は出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
阻害効果が十分に得られなかったVAMPのsiRNAに関しては、プローブを変更して試みる。SNARE蛋白はVAMPを始めとする小胞上に存在する蛋白質と、標的小器官の膜上のSNARE蛋白とが結合して、膜融合を起こすものである。その標的膜上のSNARE蛋白質についてもsiRNAを行い、VAMP3のパートナーの候補を絞り込む。候補SNARE蛋白が揃ったら、それらの蛋白質を組み込んだリポソームを人工的に作成し、サイトゾール存在下での膜融合アッセイを行い、正規の組み合わせを同定する。次に、Rab4が制御するリサイクリングエンドゾームより下流にあるとされるエンドゾーム系を制御する低分子量G蛋白質であるRab11、Rab8、Rab14をsiRNAを用いて発現を阻害することで、アディポネクチン分泌への影響とインスリン反応性への関与とを検討する。上記の膜融合アッセイ系に、候補である低分子量G蛋白質の機能を中和抗体あるいは非活性型変異体で阻害することで、その関与を検討する。また、低分子量G蛋白質は特異的な機能蛋白と結合する事によって生理的な機能を発揮することより、機能蛋白の中和抗体、あるいはリコンビナント蛋白質添加によるアディポネクチン分泌への影響も検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現時点でsiRNAによる検討を行った因子に対する抗体を購入し、蛋白レベルでの阻害効果を確認する。更にVAMP3のパートナーの候補SNAREのsiRNA用プローブと抗体を購入する。それら候補SNARE蛋白質を大腸菌発現系にてタグ付き蛋白質として発現させ精製を行う。精製に問題がある場合は昆虫細胞発現系にバキュロウイルスを用いて発現させ、精製を行う。現在既に研究室内に有るシステムを使用するが、不足分の購入に本研究費を当てる予定である。リポソーム作成には、リン脂質とSNARE蛋白質をdetergent存在下で混合し、透析により緩徐にdetergentを除去する方法を取る予定であるが、その為の各種リン脂質とdetergentを購入する。
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Research Products
(2 results)