2013 Fiscal Year Research-status Report
分化脂肪細胞内におけるアディポネクチンの分泌経路の同定と調節機構の解明
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23591353
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Research Institution | 独立行政法人国立病院機構(大阪南医療センター臨床研究部) |
Principal Investigator |
大屋 健 独立行政法人国立病院機構(大阪南医療センター臨床研究部), その他部局等, 副室長 (70599315)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大月 道夫 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00403056)
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Keywords | サイトカイン分泌機構 / 細胞内小胞輸送 / 代謝性疾患 / アディポサイトカイン |
Research Abstract |
アディポネクチン(APN)を分泌する脂肪細胞のモデルとして3T3-L1細胞を用いている。標準的方法で脂肪細胞分化誘導後、2日目より5日目までインスリン負荷継続と400micro Mの脂肪酸カクテルを添加する事で、未分化の細胞数を抑え、形態学的により均一で安定した分化度を示す細胞群を得る事が出来た。 5日目に、特定の分子に対しreverse法にてsiRNAをtransfectionし、6日目から8日目まで48時間、グルコース、インスリン、脂肪酸カクテルの負荷の組み合わせによる計8通りの条件で培養を行った。グルコース、インスリンの負荷に拘わらず800micro Mの脂肪酸負荷にて、生体内の脂肪細胞で見られる様な著しく大きい寡少の脂肪滴形成が見られた。 高インスリン条件で培養しインスリン抵抗性を惹起させた細胞群では、グルコース、脂肪酸に拘わらず、6時間でのAPN分泌量の割合は低インスリン群11-12%に対し、5-6%と著しく低下していた。 分泌小胞上の膜蛋白でありその輸送を制御しているSNARE蛋白のうち、脂肪細胞の分化と共に発現上昇が見られるVAMP2、VAMP3、VAMP7のAPN分泌への関与を検討した。大きな脂肪滴を形成するグルコース、脂肪酸負荷条件と、更にインスリン負荷を追加した条件を比較したところ、VAMP3の発現は有意に上昇した。逆にVAMP7は発現が低下しており、インスリン抵抗性惹起にてその経路の縮小が示唆された。一方、インスリン応答性GLUT4輸送に関わるVAMP2ではその様な変化が見られなかった。VAMP2をsiRNA法で発現を阻害してもAPNの分泌に影響は見られなかったが、VAMP3、VAMP7抑制では共に分泌が低下したことより両者のAPN分泌への関与は示されたが、インスリン抵抗性の条件に応じて反応性が異なり、代償し合っている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3T3-L1細胞は線維芽細胞の状態に3種類の薬剤による刺激で成熟脂肪細胞に分化させる必要があるが、その分化度は個々の細胞ごとに不均一で未分化のもの多く含まれる。また、生体内の白色脂肪細胞は細胞質を充満する程の単包性の脂肪滴を有しているのに対し、3T3-L1細胞では分化誘導後、小さな脂肪滴の集簇が見られる時期と大きな脂肪滴が形成される時期は異なっており、それらのモザイク状態になっている。添加血清ロットの差異が不均一性の原因となっている可能性があり、少しでもばらつきを減らす目的と、単包性脂肪滴を再現する目的にて、生理的組成に近い脂肪酸カクテルを添加して分化後培養を行ったところ、寡少の大きな脂肪滴を形成する、比較的均一な細胞群を得ることが出来、非添加群と比べAPNの高い産生性も確認できた。 この細胞群を用いて、分泌小胞上でその輸送を制御するSNARE蛋白質、VAMP3とVAMP7の関与を認め、インスリン抵抗性状態で異なった動向を示すという結果を得た。 VAMPは輸送先の膜上に存在している他のSNARE蛋白syntaxinや、反応時に細胞質から膜上に固定されるSNAP23/25などと結合して膜融合を起こすので、これらの動向については現在確認中であり、インスリン反応性に応じた異なった複数の分泌経路を制御する組み合わせの同定も行っている。更に、各輸送ステップを包括的に制御している低分子量G蛋白質Rabについても分泌小胞輸送に関与すると思われるRab3D、4、5、7、11Aについて検討を行っている。当初の予定より多くの因子が関与する可能性が出て来て、その確認のために予定が遅れている。 また、昨年度は、半ばで研究室の異動があり、実験系の立ち上げと今までのデータの再現確認、更にプロトコールの変更の必要に迫られ、若干の時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
VAMP3、VAMP7それぞれが制御する分泌経路に関与する因子の同定を行う。siRNA法にて片方の経路を阻害した上で、他の因子の阻害による相加的抑制効果の有無を検討する。 次に、ショ糖密度勾配遠心分離法にて細胞内小器官の分画を行い、APNの細胞内分布とVAMP3、VAMP7の分布が交差する分画を検討する。片方のVAMPの発現を阻害した条件で、同様にもう片方のVAMPとAPNが共に濃縮される分画を検討する。その分画に濃縮される他の因子、syntaxin、SNAP23やRabの検討も行う。 各々のVAMPと結合する候補syntaxin分子を含有するリポソームを人工的に作成し、VAMP3またはVAMP7分画の分泌小胞と、サイトゾール存在下での膜融合アッセイを行い、正規の組み合わせである事の確認を取る。 上記の膜融合アッセイ系に、候補である低分子量G蛋白質の中和抗体による阻害効果を検討することでその関与を証明する。低分子量G蛋白質は特異的な機能蛋白と結合する事で生理的な機能を発揮することより、機能蛋白の中和抗体、あるいはリコンビナント蛋白質添加による影響も検討する。 APNの分泌機構の一端が解明されれば、他のアディポサイトカインの分泌機構の解明に進み、共通する部分や差異についての検討を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定よりも多くの因子の関与が考えられ、その分子についても分泌機能に伴う動向について検討する必要が出て来た。 そのため、該当因子含有リポソーム作成による確認アッセイの予定が翌年度にずれ込んでしまった。 VAMP以外で分泌小胞輸送に関与すると考えられるSNARE蛋白質、syntaxin、SNAP23/25,更にRabシリーズのsiRNA用プローブと抗体の購入に充てる。それら候補SNARE蛋白質を大腸菌発現系にてタグ付き蛋白質として発現させ精製を行う。精製に問題がある場合は市販の蛋白質の購入も考慮する。現在既に研究室内に有るシステムを使用するが、不足分の購入に本研究費を当てる予定である。 リポソーム作成には、リン脂質とSNARE蛋白質をdetergent存在下で混合し、透析により緩徐にdetergentを除去する方法を取る予定であるが、その為の各種リン脂質とdetergentを購入する。
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Research Products
(1 results)