2012 Fiscal Year Research-status Report
下垂体機能低下症における新規自己抗体の同定と臨床応用
Project/Area Number |
23591354
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井口 元三 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (60346260)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 裕 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70301281)
|
Keywords | 下垂体機能低下症 / 抗Pit-1抗体 / 抗Pit-1抗体症候群 |
Research Abstract |
本研究は下垂体機能低下症において、我々が新規に同定した抗Pit-1抗体を中心に解析し、新たな診断・治療方法へ展開する事を目的とする。 これまで抗Pit-1抗体が「原因」であるのか「結果」なのかは明らかではなかったため、抗Pit-1抗体症候群患者のサンプルを用いたELISPOTアッセイ法を用いてPit-1反応性T細胞の有無を検討したところ、患者血清でのみ反応が認められたことから、細胞障害性T細胞による細胞性免疫の関与が強く示唆された。 小児発症下垂体機能低下症や、成人下垂体機能低下症中に自己抗体が潜在している可能性があるため、PIT-1, PROP1等9種類の候補遺伝子のコーディング領域に変異を認めなかった小児発症下垂体機能低下症9例と、成人ACTH単独欠損症6例において抗TPIT抗体の有無についてウエスタンブロット法を用いて検討を行ったが、両疾患患者血清中においてはPIT-1、TPIT等に対する自己抗体は認めなかった。またスクリーニングとして抗Pit-1抗体測定ELISAを用いて下垂体腫瘍症例(男/女=7/9=16)、下垂体機能低下症例(5/6=11)、その他自己免疫疾患症例(1型糖尿病(5例)、ATD(5例)、APS-II(6例)、SLE・RA・その他膠原病(41例))および正常者(190例)の血清で抗Pit-1抗体の有無について検討したが、検討した範囲では抗Pit-1抗体は認められなかった。 多臓器に障害をもたらすIgG4関連疾患の亜型して報告が増えてきているIgG4関連下垂体炎患者に関して検討した。自己免疫の関与が強く示唆されるIgG4関連下垂体炎に関してこれまでの報告の中で最も多い7症例での下垂体生検組織を詳細に検討し、その病理所見に「花むしろ構造」を認めるが、「閉塞性静脈炎」を認めないことが特徴的であることを初めて見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々が新規に同定した下垂体特異的転写因子Pit-1に対する自己抗体(抗Pit-1抗体)の解析を進めているが、現在の総数が3症例と、病態を検討するに足る症例数が不足しており、その実態を把握することは困難を極めている。症例数を増やすために、潜在する可能性が高い群のスクリーニングを行っている。 遺伝子変異を認めない小児発症下垂体機能低下症群や、高齢者で原因不明とされていた下垂体機能低下症群および自己免疫が原因で下垂体機能低下をきたしていると考えられる、ACTH単独欠損症患者やIgG4関連下垂体炎患者において抗Pit-1抗体や新規因子に対する自己抗体のスクリーニングを行っている。 昨年度中に解析し得た症例群では目的とする自己抗体が疑われる症例を見出すことができなかった。今後症例を増やして解析を進める必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
患者のサンプルを用いて、これまで報告されている自己抗体である抗核抗体、抗DNA抗体、抗胃壁抗体、IgGサブクラス等の測定を行い他の自己免疫疾患との関連についてさらに検討する。 新規自己抗体が、機能について報告のない蛋白であれば、その配列を手がかりに機能解析を行う。下垂体機能低下症のみを引き起こすのか、単離された遺伝子の生体内分布を解析するため、全長cDNAを単離し、マウス、ラット組織を用いて全身の他組織での発現をノザンブロッテイングで検討する。さらに蛋白レベルでも発現が見られる事を確認する。発現の多い組織の細胞を用いて、発現ベクターを用いた過剰発現、アンチセンスを用いた細胞レベルでの発現抑制によって増殖、分化を含めその細胞の固有の機能に影響を与えないか解析する。下垂体由来の培養細胞(GH3、MtT)および非下垂体由来の培養細胞(HeLa、COS-7)において、遺伝子組み換え蛋白発現ベクターを用いて過剰発現させる。トランスフェクションを行った各種培養細胞において、新規抗原蛋白の機能解析を行う。バキュロウイルス系で遺伝子組み換え蛋白を発現させる。精製した蛋白と自己抗体との結合をin vitroで確認し、どの部位を認識する抗体であるかを確認する。 マウスにヒト抗Pit-1抗体陽性患者の血清から抽出した免疫グロブリンを注入し、ヒトで認められた病態が再現できるか、抗体移入実験を進行している。また、新規自己抗体の解析として、自己免疫機序を基盤とすると考えられる下垂体機能低下症およびコントロール血清で下垂体cDNAライブラリを用いたプラークハイブリダイゼーションを行い、自己抗体に対する抗原蛋白の検索を進めている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
原因不明の下垂体機能低下症患者の新たなる診断・治療法の確立を目指し、自己抗体を測定するアッセイ系の確立を目的として、抗Pit-1抗体でのELISAスクリーニングと同様に、下垂体機能低下症血清およびコントロール血清をスクリーニングし、臨床的特徴と対比しながら疾患分類を行う。現在、特異的にACTH分泌が障害されるACTH単独欠損症患者およびIgG4関連下垂体炎患者の血清を用いて解析を進めている。 さらに、「臨床診断に用いることが可能か」について神戸大学附属病院に通院する「下垂体機能低下症」症例で解析および検討する。これらの得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。 尚、次年度使用額7,293円は当該年度の使用額と合わせて使用する。
|
Research Products
(5 results)