2012 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリアダイナミクスによる代謝調節機構の解明
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23591356
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野村 政壽 九州大学, 大学病院, 講師 (30315080)
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Keywords | ミトコンドリアダイナミクス / インスリン分泌 / インスリン抵抗性 / 臓器間ネットワーク / 脂肪肝炎 |
Research Abstract |
ミトコンドリアダイナミクスの糖代謝恒常性維持における役割解明を目標に、1)膵β細胞からのインスリン分泌、膵β細胞維持機構、2)インスリン抵抗性発症機構におけるDrp1の機能解析を推進した。 1) 膵β細胞からのインスリン分泌、膵β細胞維持機構:膵β細胞特異的Drp1欠損マウス(Drp1βKO)はグルコース応答性インスリン分泌の低下、耐糖能異常を認め、週令とともに耐糖能障害が悪化する。組織学的解析により、膵ラ氏島の過形成を認め、Drp1βKO のラ氏島ではBrdU取り込み細胞の増加、TUNNEL陽性細胞の減少がみられた。β細胞保持においてもミトコンドリアダイナミクスが重要な役割を担っている可能性が示唆された。次に単離ラ氏島を用いて、DNAアレイ解析を行い、Drp1欠損に伴う遺伝子発現の変化を網羅的に解析した結果、Drp1欠損による膵ラ氏島の過形成を説明する一つとしてReg遺伝子群が上昇していることを明らかにした。 2) インスリン抵抗性発症機構: Drp1floxマウスとAlb-CREマウスの交配により肝細胞特異的Drp1欠損マウス(Drp1LiKO)を作製した。Drp1LiKOマウスはインスリン感受性の亢進から耐糖能が著明に改善することを明らかにした。そこで脂肪組織におけるインスリンシグナルの活性化を検討したところ、インスリン受容体の下流に存在するAktのリン酸化が亢進し、インスリン感受性が亢進していることが明らかにした。食事から摂取された栄養素は門脈を経由しまず肝臓へ取り込まれる。脂肪肝になると肝臓から迷走神経を介して視床下部、さらに遠心路を介して、筋肉、脂肪へシグナルが伝わり、エネルギー消費が亢進することが知られている。栄養素摂取に伴う肝臓でのミトコンドリアダイナミクスの変化が肝臓から発せられる自律神経シグナルに不可欠であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
I.膵β細胞特異的Drp1欠損マウスの解析:ミトコンドリアダイナミクスの障害により、グルコース応答性インスリン分泌不全が生じること、膵ラ氏島過形成がみられることを明らかにした。膵β細胞の機能、増殖にミトコンドリアダイナミクスが重要な役割を演じていることが明らかすることができ当初の予定どおり研究が進行した。 II.インスリン抵抗性獲得機構:肝細胞特異的Drp1欠損マウスを作製した。高カロリー•高脂肪食(HFD)を負荷したところ、肝臓組織内の脂肪沈着、肝細胞の風船様腫大、肝組織内の炎症細胞の浸潤が見られ、Nash様の所見を呈していた。驚くべきことに糖負荷試験では耐糖能は著明に改善し、インスリン抵抗性が改善していた。肝細胞でのインスリン抵抗性は惹起されていたにも関わらず、脂肪や筋肉組織でのインスリン感受性亢進が示された。肝細胞でのミトコンドリアダイナミクスが、神経系を介した臓器間連関による代謝調節機構として不可欠であると考えられる。すなわち、肝臓でのDrp1の発現、活性化と制御することは糖尿病治療の分子標的となることが示唆された。現在、ハイドロダイナミクス法を用いてdominant negative DRP1発現ベクターを肝臓へ送達しDrp1ノックダウンモデルを作成し、一過性のミトコンドリアダイナミクスの変容が糖代謝に及ぼす効果を検討している。以上のように、IIのインスリン抵抗性獲得機序の研究で予定どおりの進展が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
I. 膵β細胞特異的Drp1欠損マウスの解析:これまでに得られた単離ラ氏島での遺伝子発現プロファイルの結果からDrp1標的遺伝子の同定を試みる。膵β細胞が細胞外環境(血糖、脂質値)の変化に即応する分子機構を明らかにする。野生型およびDrp1βKOマウス単離ラ氏島を用い、リアルタイムにミトコンドリア動態を観察し、細胞外環境を様々に変化させた際のミトコンドリアの動的変化を観察する。その際にDrp1標的遺伝子群の発現をPCR法により定量的に評価する。 II. インスリン抵抗性発症機構:臓器間代謝情報ネットワークにおける肝ミトコンドリアダイナミクスの役割を明らかにした。肝臓のDrp1の発現、活性化を制御することは糖尿病治療の分子標的となる可能性を実証する。成獣のDrp1flox/floxマウスを用い、Adenno-CREによる一過性の肝臓でのDrp1ノックアウトを行い、一過性・後天性のDrp1ノックアウトを行ない、全身のエネルギー代謝、インスリン抵抗性改善効果を評価する。臨床応用を念頭に置きDominant negative Drp1 cDNAをハイドロダイナミクス法にて肝細胞に送達する。また、nano carrierを用いたDrp1に対するsiRNA、dnRNAの肝臓への送達、機能阻害も同時に試み、同様に全身のエネルギー代謝亢進、インスリン抵抗性改善効果を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は論文作成費用の他の研究費はすべて消耗品に充てる。。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Perilipin 5, a lipid droplet-binding protein, protects the heart from oxidative damage by preventing excess fatty acid oxidation.2012
Author(s)
Kuramoto K, Okamura T, Yamaguchi T, Nakamura TY, Wakabayashi S, Morinaga H, Nomura M, Yanase T, et al.
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Journal Title
Journal of Biological Chemistry
Volume: 287
Pages: 23852, 23863
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Reduced arterial sitiffness in patients with acromegaly: non-invasive assessment by the cardio-ankle vascular index (CAVI)2012
Author(s)
Matsuda Y, Kawate H, Matsuzaki C, Sakamoto R, Abe I, Shibue K, Kohno M, Adachi M, Ohnaka K, Nomura M, Takayanagi R
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Journal Title
Endocrine Journal
Volume: 60
Pages: 29, 36
Peer Reviewed
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