2011 Fiscal Year Research-status Report
脳特異的なアロマターゼ遺伝子発現を制御する転写因子の機能解析
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23591360
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
本田 伸一郎 福岡大学, 薬学部, 准教授 (40257639)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ステロイドホルモン / 脳 / 性分化 / 転写因子 |
Research Abstract |
脳で周生期に発現するアロマターゼは、精巣から分泌されたアンドロゲンを脳内でエストロゲンに変換する。この時期にエストロゲンが働くことで脳の神経回路は不可逆的に雄型に構築される。本遺伝子の脳特異的プロモーターに存在するシスエレメントのうち、aro-Bサイトに結合する核内因子として単離したLhx2は、limドメインと、DNA結合活性を持つホメオドメインの2つの特徴的なドメインから成る転写因子である。今回は、Lhx2の転写活性化機能を詳細に調べる目的で、Lhx2の欠損変異体を用いて実験を行った。。Lhx2の発現プラスミドとして野生型(pCI-Lhx2)、アミノ酸234-380を欠失した変異体(pCI-Lhx2-lim)、およびホメオドメインを含むアミノ酸148-406の変異体(pCI-Lhx2-homeo)を作製した。アロマターゼ脳特異的プロモーターの上流を含むレポータープラスミド(pGL4-AR- N1-Luc)と発現プラスミドをCOS-7細胞にリポソーム法にてコトランスフェクトして、ルシフェラーゼアッセイを行った。 pCI-Lhx2はpGL4-AR-N1-Lucからのルシフェラーゼ活性を用量依存的に増加させた。この活性はプロモーター内に存在するaro-Bサイトに変異を導入したレポーターでは認められないため、野生型Lhx2の転写活性化はaro-Bサイトを介して行われることが確認された。また、pGL4-AR-N1-LucをpCI-Lhx2-lim、またはpCI-Lhx2-homeoと共にコトランスフェクトした結果、pCI-Lhx2-limでは転写活性化は認められなかったが、pCI-Lhx2-homeoでは野生型と同様の転写活性化を認めた。ホメオドメイン近くに転写活性化ドメインも存在しており、limドメインは転写活性化に必要でないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の計画のうち、中枢神経においてアロマターゼを発現する神経細胞の株細胞化を試みる実験は実行しなかった。その理由は、視床下部の株化培養細胞において、アロマターゼの発現が認められるものが報告された事による。現在までに株化された視床下部細胞では、アロマターゼを発現しているという明確な報告が存在しなかったが、もしもこの視床下部由来の株化培養細胞がアロマターゼを発現しており、生理的状態を再現できるとすると、新たなアロマターゼ発現神経細胞の株細胞化は必ずしも必要ではないことになる。報告された株化神経培養細胞は、最近市販されたので、一般に入手可能である。今後はこの細胞が本研究計画に使用できるものかどうかを調査した上で、今年度以降の細かな方向転換も含めて検討するものとする。予定していた大学院生の補充の欠員等の理由により、初年度に計画されていたsiRNAを利用した転写因子の機能抑制が脳アロマターゼ遺伝子発現に及ぼす影響に関しては、翌年度に実行することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
胎生13日目に初代培養系に調製したマウス胎児間脳部の神経細胞のアロマターゼmRNAは、in vitroでも生体内での場合と同様に増加し、約4日後に一過性のピークを生じる事が明らかとなっている。このような発現パターンが、今回単離した転写因子の発現をsiRNAにより抑制した場合に、どのように変化するかを検討する。一方、タンパク質としての転写因子のエピジェネティックな機能を解析し、その分子レベルでの機能が実際にどのような形で性行動という高次の機能に関わっているのかという問題へと発展するように進めていきたい。申請者は、Deaf1がUbc9と相互作用することからSUMO化に関する予備実験を行い、アロマターゼ遺伝子発現にSUMO化の関与があることを示唆する結果を得ている。またDeaf1は細胞内ではリン酸化を受けている分子と受けていない分子が存在することも確認している。さらに、Deaf1の転写活性化作用はトリコスタチンAにより代用できることから、アセチル化/脱アセチル化が本遺伝子の発現制御に関わっていると考えられる。これらの転写因子のSUMO化、リン酸化、およびアセチル化などの翻訳後修飾が転写制御にどのように関わってくるのかを修飾部位のアミノ酸を変異させたタンパク質発現系を利用して検討する。まずはCOS7や初代培養神経細胞を用いて解析を行う
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請される研究費の内訳は、生化学用、遺伝子工学用試薬、プラスチック器具等であり、大部分は消耗品費、もしくは50万円未満の物品として使用される。 それ以外の研究費の使用としては、学会の参加費および学術論文の投稿料を支出する予定である。また人件費や50万円以上の物品購入の予定はない。
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