2011 Fiscal Year Research-status Report
新規鉄代謝指標・生体内不安定鉄NTBIの革新的測定法開発・実用化研究及び臨床応用
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23591363
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
佐々木 勝則 旭川医科大学, 医学部, 特任准教授 (60336394)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
生田 克哉 旭川医科大学, 医学部, 講師 (00396376)
田中 宏樹 旭川医科大学, 医学部, 特任助教 (70596155)
大竹 孝明 旭川医科大学, 医学部, 講師 (10359490)
高後 裕 旭川医科大学, 医学部, 教授 (10133183)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 鉄 / 不安定鉄 / NTBI / 鉄代謝 / バイオマーカー / HPLC / キレート剤 |
Research Abstract |
非トランスフェリン結合鉄(non-transferrin-bound iron:NTBI)の測定は、臨床的に鉄が生体に及ぼす影響をとらえる上で重要と考えられるが、その測定は極めて困難であり、これまで日本国内での測定報告はない。一方、海外において報告された健常人血中 NTBI 値はその測定方法により、検出感度未満であったり、マイナス表記されることが多く、信頼性に欠けていた。そこで、NTBI測定方法のゴールデン・スタンダードであるnon-metal HPLCシステムを導入し、これまで疑問視されていた低濃度領域の定量性に関してその問題点を改善し検出感度の向上と安定した測定システムの構築に取り組んだ。その結果、試薬等に混在している鉄を除去することで測定系のバックグラウンドを低値に抑えることができ、測定系の感度を高めることに成功した。本システムにより得られた健常人血中NTBI値が、男性(n=20)で0.206±0.091μM、女性(n=16)で0.212±0.095μMであることを世界で初めて明らかにした(Mol. Med. Reports, 2011, 4:913-918)。既存のキレート剤はNTBIに加えて生体に有効なトランスフェリン結合鉄をもスカベンジするためNTBI測定系での使用が問題視されてきた。そこでトランスフェリン結合鉄を奪取することなく、NTBIのみを結合するキレート剤に開発に取り組んできた。今回開発した低分子可溶型キレート剤はトランスフェリン結合鉄を奪取することなく、さらに鉄濃度依存的に着色したことから簡易診断にも利用可能であることが確認された。さらに新規キレート剤を高分子化し水不溶性の剤型とすることで、血中NTBIを吸着・除去することができ、新規キレート剤の新たな臨床応用の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規に開発した低分子可溶型鉄キレート剤はトランスフェリン結合鉄を奪取することなく、一方で鉄濃度依存的に着色したことから簡易診断にも利用可能であることが確認された点は、ワン・ステップ型同時多検体測定システムへの応用が可能な部材となり得ることを示唆しており、これまでのnon-metal HPLCシステムに替わる新しい測定システムの開発が可能となった。新規鉄キレート剤開発の過程で、低分子可溶型キレート剤を高分子化し水不溶性の剤型とすることで生体にとって悪影響を及ぼす血中NTBIを吸着・除去する効果を確認することができた点は、新規鉄キレート剤の新たな臨床応用の可能性を示唆するものである。この点は新しい発見であり、本申請内容の枠を超えた有用な結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
NTBI測定用のワン・ステップ型同時多検体測定システム開発には、新規低分子可溶型鉄キレート剤の有用な機能を保持しながらマルチプル測定用基材(マイクロ・プレートなど)へ確実に固定することが重要な点となる。固定が不十分であると基材からのキレート剤脱落が起こり、測定結果の信頼性が損なわれる。一方、水不溶性高分子化鉄キレート剤の測定系への導入も可能であると考える。今後は低分子可溶型鉄キレート剤の測定基材への固定方法の開発と水不溶性高分子化鉄キレート剤を応用した新たな測定システムの開発を進め、より操作工程の少ないハイスルプット測定システムのプロト・タイプを作製する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
NTBI測定用ハイスルプットシステム作製のため、新規鉄キレート剤の測定用基材への高効率固定方法を開発し、一方で水不溶性高分子化鉄キレート剤を応用した新たな測定システムの開発を中心に物品費を運用する。
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