2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23591372
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 麗君 東京大学, 医科学研究所, 客員研究員 (20599261)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 直秀 東京大学, 医科学研究所, 教授 (90174680)
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Keywords | 血液悪性疾患 / 多発性骨髄腫 / レプチン / 臍帯血 |
Research Abstract |
多発性骨髄腫は、白血病・悪性リンパ腫と併せて三大血液腫瘍の一角をなし、悪性化形質細胞のクローナルな増殖によって引き起こされる難治性疾患である。我々は骨髄微小環境において供給されるサイトカインの一種であるレプチンが多発性骨髄腫の病勢を制御する役割をもつ可能性を提示し、悪性化形質細胞の増殖におけるレプチンの腫瘍学的役割を明らかにするために、骨髄幹細胞へのレプチンの直接的及び間接的効果の解析を検討した。しかし多発性骨髄腫患者及び健常人から骨髄細胞を得るためには著しく侵襲性の高い骨髄穿刺を行う必要があり、臨床手続を継続して進めているものの実際に骨髄サンプルを得るのが困難な状況にある。 そこで我々はより容易に入手可能な免疫細胞ソースとして臍帯血の利用を試みた。臍帯血は異なる分化段階にある様々な幹細胞及び前駆細胞のヘテロな集合体で未熟免疫細胞を豊富に含み、安定した供給も併せて考慮すると臨床応用時の免疫細胞ソースとして高い優位性を持つものと考えられた。臍帯血由来免疫細胞を用いた検討が進展するに従い、我々は細胞傷害性T細胞に血液腫瘍抗原特異性を誘導することで多発性骨髄腫の新規治療戦略を見出せると考えるに至り、凍結または新鮮臍帯血から細胞傷害性T細胞を分離培養し、HLA拘束性細胞傷害性T細胞に血液腫瘍抗原特異性を誘導し得た。強力な免疫学的効果を得るためには抗原特異的細胞傷害性T細胞の誘導率を更に改善する必要があり、現在我々は樹状細胞に代わる新たな抗原特異性誘導法として人工抗原提示細胞を積極的に導入してその効果を追究している。今後も多発性骨髄腫のみならず血液悪性諸疾患への新治療戦略としての応用も視野に入れながら、アロ臍帯血由来細胞傷害性T細胞による養子免疫療法研究を統合的に進めてゆく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多発性骨髄腫患者からの骨髄サンプルの入手に困難が生じているため、我々は凍結または新鮮臍帯血を免疫細胞ソースとして利用し、細胞傷害性T細胞を分離培養して、特定の増殖因子を組み合わせてその効率的な増殖を得た。またその血液腫瘍抗原特異性をHLA拘束性テトラマーを用いて確認した。現在は抗原刺激法として樹状細胞を用いる代わりに、ビーズに特定の抗原刺激関連分子を結合させて構築したいわゆる人工抗原提示細胞の導入を試み、抗原特異的細胞傷害性T細胞の誘導率を更に高めるための検討を重ねている。
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Strategy for Future Research Activity |
多発性骨髄腫を含む血液悪性諸疾患に対する臨床応用を視野に入れ、血液腫瘍抗原特異的細胞傷害性T細胞の誘導効率を更に高めるための新しいプロトコルの樹立を目指す。人工抗原提示細胞による抗原特異性誘導法は、理論的には腫瘍抗原ペプチドを変換するのみで様々な血液腫瘍への対応も可能であり、煩雑でコストがかかる樹状細胞による従来の抗原刺激法と比して実践的な臨床応用面で大きな期待が持たれる。 多発性骨髄腫患者からの骨髄サンプル採取に関しても並行して臨床手続を推進し、多面的なアプローチを統合して最終的には多発性骨髄腫を含む血液悪性諸疾患に対する免疫学的新治療の確立を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
臍帯血由来細胞傷害性T細胞に高誘導率で血液腫瘍抗原特異性を獲得させるための人工抗原提示細胞として種々のコンストラクトの構築を試行してその効果を検討する。高誘導率のプロトコルが確立され次第、細胞傷害活性解析を順次行って免疫学的効果を検討する。 多発性骨髄腫患者からの骨髄サンプルが得られた場合は、ELISAによるレプチン活性レベルの解析及びレプチン添加・欠如条件下での形質細胞のサイトカイン産生・遺伝子発現プロファイルの解析を行い、レプチンによる骨髄形質細胞の制御メカニズムを並行して追究する。
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