2011 Fiscal Year Research-status Report
ピロリ菌惹起ITPにおける外毒素VacAと血小板マルチメリンの役割
Project/Area Number |
23591378
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
尾崎 由基男 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (30134539)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 金夫 山梨大学, 医学部, 助手 (20242662)
高野 勝弘 山梨大学, 医学部附属病院, 助教 (60382925)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 特発性血小板減少症 / ヘリコバクターピロリ / マルチメリン / 毒素 |
Research Abstract |
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)においてHelicobacter pylori(HP)陽性例が多く、HP除菌療法により血小板数が回復することが示されており、ITPの発症にHPが関与することが強く示唆されている.しかし、HP 感染がITP を引き起こす機序はまだ解明されていない.Helicobacter pylori (HP) が産生する外毒素VacAは血小板を活性化する作用を有するが、免疫沈降法とTOF-MS解析によりVacA結合タンパクとしてマルチメリン(MMRN)を同定した. MMRN は血小板顆粒に含まれており、血小板活性化に伴って放出される.その構造は170kDaのサブユニットがマルチマー構造をとる巨大分子であり、血小板膜蛋白GPII/IIIaや血液凝固因子Vaと結合することが知られているが、その機能は不明な部分が多い.本年度はVacAとMMRNとが結合することの証明を強化するため、MMRN融合タンパクや合成ペプチドを作製してVacA結合活性の評価や結合部位の同定を試みた.その結果、結合領域を20 アミノ酸程度まで絞り込むことに成功した.一方、MMRNの全長は4000bpと巨大であり、ベクターに導入する遺伝子サイズが大きくなると(2000~4000bp)、タンパク発現が見られず、全長MMRNの作製には至らなかった.これについては次年度の継続課題とする. 今年度はVacAとMMRNとの結合を種々の手段で証明することを目標に掲げ研究をおこなってきた.全長MMRNの作製に手間取っているが、20~100程度のアミノ酸からなる発現タンパクや合成ペプチドとの結合が確認できたことから、MMRNはVacAの結合タンパクとして機能を有しているとの結論に達し、次年度はVacA依存性の血小板活性化におけるMMRNの役割について分子生物学的な手法を用いて解析を進めたい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度はVacAとMMRNとの結合を種々の手段で証明することを目標に掲げ研究をおこなってきた.20~100程度のアミノ酸からなる発現タンパクや合成ペプチドとの結合が確認できたことから、MMRNはVacAの結合タンパクとして機能を有しているとの結論を得ることができた.一方で、全長タンパクの発現効率が著しく悪く、VacA依存性の血小板活性化におけるMMRNの役割や血液凝固因子Vaの関与について、血小板凝集やシグナル伝達の観点からの解析を実施することができなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はVacA依存性の血小板活性化におけるMMRNの役割について分子生物学的な手法を用いて解析を進めるため、より強力なプロモーター活性を有するプラスミドベクターへの全長遺伝子の導入、MMRNを発現系を有する巨核球系培養細胞への遺伝子導入などによりMMRN全長タンパク発現系の確立を急ぐ. VacAとMMRNとの結合部位が20アミノ酸程度に絞られたので、この部位に対する阻害抗体を作製し、VacA依存性血小板活性化に対するVacA-MMRN結合の関与を解析する. MMRNはVacAと複合体を形成することから、ITP患者血清中にこれら複合体に対する抗体が産生されていることが予想される.そのため、全長MMRNのリコンビナントタンパクを固相化したELISAの測定系を構築し、MMRNに対する抗体の検出、ならびにVacA-MMRN複合体に対する抗体の検出を試みる.これにより、抗体力価と血小板減少の重症度との関連について解析するとともに、除菌療法の効果と抗体価とのとの関連について解析し、除菌療法の適用の指標となりうるか検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
プラスミドベクター、巨核球系培養細胞の購入や継代用の培地、エレクトロポレーションの消耗品、ELISA測定系の構築などの消耗費、国内学会旅費(日本血栓止血学会、東京、2名)、その他としてペプチド合成や抗体作製の外注費を予定している. 繰越金が生じたが、これは試薬等の在庫の問題で発注できなかったためであり、次年度試薬を購入し、実験を行うつもりである。
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