2012 Fiscal Year Research-status Report
ウイルスを起因とする造血器腫瘍の病態および腫瘍化機序の解明
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23591391
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
大畑 雅典 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (50263976)
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Keywords | 癌 / ウイルス / 造血器腫瘍 |
Research Abstract |
目的と意義:2008年にメルケル細胞癌(MCC)より、ヒトポリオーマウイルスとしては初の腫瘍ウイルスであるメルケル細胞ポリオーマウイルス(MCPyV)が報告された。また2011年には、同属でリンパ指向性を示すヒトポリオーマウイルス9(HPyV9)が、免疫抑制療法下の腎移植患者の血清から報告された。HPyV9の特定疾患への寄与については未だ明らかにされていない。近年、欧米においてMCPyVと慢性リンパ性白血病(CLL)との病因的関与の可能性が報告された。CLLは、欧米では全白血病の約30%を占める一般的な白血病である。しかし、日本では欧米の約1/10の頻度で発生する珍しい白血病であり、MCPyVとの関連性は調査されていない。そこで本研究では、日本におけるCLLとMCPyVとの病因的関与の検討と共に、HPyV9の検出を行った。 材料と方法:本邦のCLL症例において、患者末梢血より白血病細胞を分離し、DNAを抽出した。このDNAを鋳型とし、リアルタイムPCRによりMCPyV及びHPyV9ゲノムの検出を行った。MCPyV陽性例は、PCR法によりLT抗原遺伝子領域を増幅し、ダイレクトシークエンス法により塩基配列を決定することで変異の解析を行った。 結果と考察:リアルタイムPCRの結果、調べたCLLの約33%でMCPyVゲノムが検出され、細胞あたりのMCPyVコピー数は0.000017~0.0012であった。この結果は欧米の報告と一致するものであった。一方、HPyV9は全ての例で検出されなかった。MCPyV陽性例についてLT抗原遺伝子の変異を調べたところ、欧米の一部のCLLで報告されているようなDNAの欠損は認められず、本研究で検出されたMCPyVは野生型であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ウイルスと造血器腫瘍の関係を詳細に解析することが目的である。新規腫瘍ウイルスであるMCPyVさらにHPyV9が本邦発症のCLLに検出できるかどうかを調べた。その結果、一部のCLLでMCPyV DNAを検出できることが判明した。これら研究成果については、Journal of Hematology & Oncologyに掲載された。 上記の研究に平行して、MCPyVと他の腫瘍との関係についても探索し、研究成果をあげた。 以上を総合し、研究が計画通りに進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、ウイルスと造血器腫瘍の関係について研究を推進する。 MCPyVは単球にも潜伏感染することが示唆されている。単球性白血病(急性骨髄性白血病AMMoL、急性単球性白血病AMoL、慢性骨髄単球性白血病CMML)におけるMCPyVの蔓延性についても調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、ウイルス検出のための試薬を中心に最低必要限に抑えて予算を執行したため、若干の繰越金が発生した。 次年度は、遺伝子検出関連試薬、蛋白発現解析用試薬、プラスティック器具などの物品費、成果発表のための国内旅費、および学術誌掲のための費用などに予算を計上する。
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Research Products
(23 results)