2011 Fiscal Year Research-status Report
原発性骨髄線維症におけるHOXB4の機能同定と、USFを標的とする治療法の開発
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23591397
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
下田 和哉 宮崎大学, 医学部, 教授 (90311844)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | JAk2 |
Research Abstract |
原発性骨髄線維症の造血幹細胞分画では、転写因子HOXB4とその転写産物であるSOCS2の発現が亢進しているため、HOXB4の転写を調整するUSF1/2に注目し、HOXB4遺伝子プロモーターを用いたレポーターアッセイを行った。JAK2の活性化によりUSF1/2の転写活性は2-4倍に亢進し、この亢進は、トロンボポエチン(TPO)のレセプター存在下にJAK2が活性化された場合のみ観察された。G-CSFレセプターやEPOレセプターの存在下では生じず、TPOのシグナル伝達経路に特異的な現象であることが判明した。TPOレセプター存在下にJAK2の活性化により生じるUSF1/2の転写活性亢進は、dominant-negative STAT5や、ERK1/2の活性化を阻害するU0126により消失するが、dominant-negative STAT3、p38 MAPK阻害剤であるSB203580、AKTの活性化を阻害するLY294002による影響をうけなかった。つまり、JAK2活性化によるUSF1/2の転写活性亢進は、STAT5とRAS-RAF-ERK1/2の活性化を介して生じることを明らかとした。 HOXB4が原発性骨髄線維症の病態に及ぼす影響を明らかにする目的で、原発性骨髄線維症のモデルマウスであるJAK2V617F高発現マウスとHOXB4ノックアウトマウスを交配しJAK2V617F(+)HOXB4(-/-)マウスを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、原発性骨髄線維症におけるHOXB4の機能同定と、USF1/2を標的とした新規治療法の開発を目的としたものである。初年度の研究により、JAK2活性化によるUSF1/2の転写活性亢進にERKの活性化が関与することを明らかにすることができた。これを基に、次年度はERKにより活性化されるUSF1/2の領域を同定し、新規治療法開発の基盤とする予定である。また、原発性骨髄線維症の病像に果たすHOXB4の機能をin vivoで明らかにするための、JAK2V617F(+) HOXB4(-/-)を得ることができた。次年度はこれを用いて、生体内でのHOXB4の機能を明らかにすることが期待される
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Strategy for Future Research Activity |
JAK2活性化によるUSF1/2の転写活性亢進にERKの活性化が関与することを明らかにできたため、平成24年度は、ERKが認識するUSF1上の3箇所のセリン、スレオニン (T153, S165, S186)をアラニンに置換したUSF1変異体を作成し、シグナル伝達に必須なUSF1/2の領域を同定する。シグナル伝達に必須なUSF1/2の領域が同定できると、この領域に変異を有するUSF1/2は、野生型USF1/2に対しdominant-negative効果を有することが予想される。dominant-negative USF1/2を導入したJAK2V617F陽性骨髄細胞を移植したレシピエントマウスを解析すると、変異JAK2シグナルのうちUSF1/2により担われる範囲が明らかにできると期待される。JAK2阻害剤は、正常細胞への影響から十分量の投与が困難なことが予想される。JAK2阻害剤により改善が認められないJAK2V617F 高発現マウスの表現型、特に貧血や骨髄の線維化、JAK2 allele burdenの改善がみられると、USF1/2は、原発性骨髄線維症の新たな治療標的になりうる。並行して、平成23年度に作成したJAK2V617F(+) HOXB4(-/-)マウスの解析を行う
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ERKが認識するUSF1上の3箇所のセリン、スレオニン (T153, S165, S186)をアラニンに置換したUSF1変異体の作成に要する生化学試薬、JAK2V617F(+) HOXB4(-/-)マウスの血液検査、コロニー形成に必要な試薬、骨髄、脾臓などの病理学的検討に研究費を使用予定である。
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