2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23591408
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
高久 智生 順天堂大学, 医学部, 准教授 (20408256)
|
Keywords | 骨髄内神経ニッチ / サーカディアンリズム / 造血幹細胞 / 骨髄3次元構造 |
Research Abstract |
骨髄における造血は、血流中の可溶性ファクターおよび自律神経によって厳格に制御されており、その生理学的作用過程は決して一様ではなくむしろ日内変動により非常に多彩である。サーカディアンリズとは24時間周期で変動する生理現象を示しており、生物は生態を維持する為に必要とされる生理学的ニーズをあらかじめ予測し、かつその生理機能を調節している。近年、造血幹細胞の遊走、増殖、分化において、生態学的な体内時計が関与している事が複数報告されている。本研究では骨髄内の神経組織の走行、および生態内のサーカディアンリズムを司る交感神経に注目し、β2/β3アドレナリン受容体を介した造血幹細胞の制御機構を、共焦点顕微鏡およびその他の手法を用いて解析する事を目的としている。造血は神経組織、特に交感神経による影響を受けていると考えられること、現時点では骨髄内の神経組織分布に関する報告はない事から、第1段階としては神経組織の可視化を試みた。当初は中枢および末梢神経組織に豊富なNeuron specific beta3 Tublinに対する抗体を購入し、マウス骨髄内の神経組織の可視化を行うも染色が得られず、最終的には固定法の検証や抗体の変更(GFAP:Glial fibrillary acidic protein)後に神経組織の染色に成功した。結果として描出された神経組織の密度は血管に比して予測よりも著明に少なく、血管に平行して走行するものの緻密なネットワークを形成するほどには多くはないと考えられた。また、β2およびβ3アドレナリンを介した造血細胞/血液細胞への交感神経支配の影響を検証するため、それぞれのレセプターに対する抗体を購入しフローサイトメトリーを用いて検証を行ったところ、単核球においてはほぼ全ての細胞が定常状態ではアドレナリンに対するレセプターを発現していない事が明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の条件設定に苦慮した後は研究計画は順調に進展しており、GFAP(Glial fibrillary acidic protein)および複数の神経組織に対する抗体を用いた神経組織の染色の結果、骨髄での神経組織の密度は予想よりも著明に低いと考えられることが明らかとなった。また、一部の血球細胞はサーカディアンリズムの影響を受けると考えられるものの、フローサイトメトリーを用いた検討により多くの血球細胞における何ら刺激を受けていない定常状態では、β2/β3アドレナリンのいずれのレセプターも細胞表面では発現していないことを明らかにすることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進展しており、幹細胞のホーミングやニッチに関わるSDF-1/CxCL12などを発現している細胞を観察し、神経細胞との距離関係について検証する予定である。さらには、アドレナリンを介したサーカディアンリズムの影響を観察する目的でβ刺激薬の投与によって交感神経刺激を行い、血球におけるレセプター発現の変化を検索する。変化が認められた場合、発現細胞の同定も行う予定である。その後は、当初の予定通り日夜の規則正しいリズム状態のマウスとサーカディアンリズムを狂わせたマウス(常に明るい場所で飼育および暗い状態で飼育)における造血の変化を経時的に観察し、併せて刺激による造血への影響を検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続きマウスの購入/維持に必要な経費として使用し、さらには抗体/薬剤の購入を行う予定である。
|
Research Products
(1 results)