2011 Fiscal Year Research-status Report
多発性骨髄腫の接着分子を介した難治化の分子機構の解明
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23591409
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
今井 陽一 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (10345209)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 多発性骨髄腫 / 接着分子 / インテグリン / CXCR4 / HDAC阻害剤 / HOXA9 / 増殖抑制 / アポトーシス |
Research Abstract |
多発性骨髄腫は難治性疾患であり、治療抵抗性の獲得において接着分子が重要な役割を果たすことが示唆されているがその詳細な分子メカニズムは明らかではない。本研究では、接着分子の活性化による多発性骨髄腫の難治性の獲得機構を新たに解明することを目的とする。接着分子インテグリンは、CXCR4の活性化により刺激される細胞内シグナルを受け、細胞内ドメインが活性化されリガンドへの結合性が上昇する。そこで、CXCR4の阻害によってインテグリンの活性化が低下した状況で多発性骨髄腫細胞株の増殖を相乗的に抑制する薬剤の同定を試みた。その結果、HDAC(histone deacetylase)阻害剤によるHDACの阻害と、CXCR4阻害薬による接着分子の機能低下の組み合わせにより多発性骨髄腫細胞株の増殖抑制が増強した。さらに、アポトーシスも亢進することが見出された。また、HDAC阻害剤によりホメオボックス遺伝子HOXA9の発現が転写レベルで抑制されることが見出された。HOXA9はIgH転座を伴わない多発性骨髄腫症例で高発現がみられ、多発性骨髄腫細胞の増殖維持に必須であることが示されている(Chapman MA, et al., Nature 2011)。HDAC阻害剤によるHOXA9の発現抑制はCXCR4阻害薬の併用によって増強され、接着分子の活性化がHOXA9の発現維持に関与することが示唆された。以上の検討により、接着分子を介した多発性骨髄腫の難治性獲得における鍵分子の候補として新たにHOXA9が同定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、多発性骨髄腫細胞株においてCXCR4の阻害による接着分子インテグリンの機能阻害とHDAC阻害剤によるHDAC阻害の組み合わせにより増殖抑制・アポトーシスが誘導されることを明らかにできた。さらに、この増殖抑制・アポトーシスの誘導における鍵分子としてHOXA9を同定した。以上の成果は、本研究が解明を目指す接着分子の活性化による多発性骨髄腫の難治性の獲得機構のひとつを明らかにしたものである。したがって、3年計画の本研究の1年度目として目標をおおむね順調に達成していると考えられる。この成果をもとに本研究の目的である、新規治療法の開発基盤の形成が可能になり、多発性骨髄腫の根治療法の樹立に大きく役立つと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
多発性骨髄腫の接着分子を介した難治性獲得の鍵分子候補のHOXA9の制御機構を明らかにする。HOXA9の転写を調節する分子について、HDAC阻害剤とCXCR4阻害剤を併用した際にmRNAや蛋白質の発現量が変化する分子の同定を目指す。発現量の変化が確認できない場合は、リン酸化などの蛋白質修飾やHOXA9との結合性など、その機能が変化する分子を見出す。その知見をもとにHDAC阻害と接着分子の機能阻害によるHOXA9の転写抑制を介した発現低下機構の解明を目指す。以上の解析で明らかになったHOXA9の制御の鍵分子について、多発性骨髄腫の造腫瘍性における意義を検討する。具体的には、多発性骨髄腫細胞株においてレンチウイルスベクターを用いた高発現の誘導あるいはshRNAによる発現低下の系を用いて細胞株の増殖能やアポトーシスの誘導を解析する。さらに、鍵分子の発現を制御した多発性骨髄腫細胞株のNODマウスへの移植の系を用いて、in vivoで造腫瘍性における意義を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
多発性骨髄腫細胞株にHDAC阻害剤を投与した際にmRNAの発現量が変化する分子についてリアルタイムPCRを用いて同定を試みる。蛋白質の発現量やリン酸化・HOXA9との結合性の変化は蛋白質電気泳動、抗体によるWestern blotting、免疫沈降法を利用して解析する。多発性骨髄腫細胞株における遺伝子発現の誘導あるいは抑制についてレンチウイルスベクターを用いて行う。また、多発性骨髄腫細胞株のNODマウスへの移植によるin vivo解析を行う。以上の遂行のために、抗体50万円、試薬30万円、培養ディッシュ10万円、NODマウス30万円の予算を計上している。さらに、研究成果の発表のため日本血液学会、日本骨髄腫学会、米国血液学会への参加を予定し旅費を30万円計上している。なお、平成23年度で計画した活性化型インテグリンの発現によるHOXA9の発現変化の解析についてリアルタイムPCRを用いて行うが、次年度使用の研究費3万9993円を充てる。
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Research Products
(3 results)