2012 Fiscal Year Research-status Report
トロンボモジュリンの血管内皮保護薬としての臨床応用に向けた分子基盤の解明
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23591421
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
池添 隆之 高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (80294833)
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Keywords | 血管内皮細胞 |
Research Abstract |
血管内皮細胞上に発現し血液凝固を司る膜たんぱく質トロンボモジュリンの血管内皮細胞保護作用とその作用機序を明らかにする研究を行った。臍帯血管内皮細胞(HUVEC)をトロンボモジュリンに暴露すると、細胞内シグナル伝達経路ERKが活性化して、抗アポトーシス蛋白質MCL-1が発現誘導されることを見出した。トロンボモジュリンは血管内皮細胞の増殖を刺激し、血管新生を盛んにすることを試験管内及び実験動物を用いて証明した。造血細胞移植後に免疫抑制剤として使用するシクロスポリンやタクロリムスはHUVECに細胞障害を与えるが、トロンボモジュリンとともに投与すると、細胞障害が緩和されることを試験管内の実験及び実験動物を用いて証明した。可溶性トロンボモジュリンは3つのドメインから構成されている。遺伝子工学の技術を駆使して、各種トロンボモジュリン変異遺伝子を作成して、動物細胞に遺伝子導入後これら変異蛋白質を産生、純化し獲得した。これら様々なトロンボモジュリン変異蛋白質をHUVECに暴露して血管内皮細胞障害の度合いを比較検討したところ、上皮細胞増殖因子様ドメインに、トロンンボモジュリンの細胞保護作用が局在していることを突き止めた。更に、トロンボモジュリンの細胞保護作用は、抗凝固活性を失う遺伝子変異を挿入した変異蛋白質にも認められ、抗凝固作用とは無関係であることが判明した。これらの結果は、今後出血の副作用を懸念する必要のない血管内皮細胞保護に特化した創薬の可能性を示唆する重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、トロンボモジュリンに血管内皮細胞保護作用があること、それは細胞増殖刺激因子ERKの活性化を介した抗アポトーシス蛋白質MCL-1の発現誘導によること、更にはその活性部位が上皮細胞増殖因子様ドメインに存在することまで明らかにし、当該分野で国際的に高い評価を受けている医学雑誌(Arterioscler Thromb Vasc Biol.)に論文報告することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
トロンボモジュリンの血管内皮細胞保護作用は抗凝固作用とは無関係に、上皮細胞増殖因子様ドメインに存在することが明らかになったが、今後更にその局在を切り詰めて遺伝子合成、あるいは酵母に変異遺伝子を導入し大量に産生させるなどして創薬を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
遺伝子工学関連試薬、血管内皮細胞培養試薬等に使用する。
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Research Products
(4 results)