2013 Fiscal Year Annual Research Report
トロンボモジュリンの血管内皮保護薬としての臨床応用に向けた分子基盤の解明
Project/Area Number |
23591421
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
池添 隆之 高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (80294833)
|
Keywords | トロンボモジュリン |
Research Abstract |
造血細胞移植後に発症する類洞閉塞症候群(SOS)や正着症候群(ES)に合併する播種性血管内凝固症候群(DIC)を、遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(rTM)で治療すると、rTMで治療を受けなかったDIC患者と比較して、移植100日目の予後と全生存期間が有意に改善することを報告した(Eur J Haematol. 2013;91:442-7)。また、我々はrTMを使用すると、SOSやESに合併する浮腫が改善することから、rTMが血管透過性亢進を抑制する新規な機能を持っていることに気づき、それを明らかにする基礎研究を行った。ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を免疫抑制剤シクロスポリン(CsA)に暴露後誘発される血管透過性亢進モデルを用いて、rTMの効果を検証した。HUVECはCsAの暴露を受けるとsrcのリン酸化を介して細胞表面のVE-cadherinがリン酸化を伴い細胞質内に移行し、細胞接着が緩むことを見出した。また、CsAにより、HUVEC内で転写因子nuclear factor kappa B(NF-kB)が細胞質内から核内に移行し、IL-6やIL-1bの産生が増加し、これらサイトカインが更にsrc/VE-cadherinのリン酸化を増強させ、細胞間接着を緩くすることを見出した。興味深いことに、rTMはsrcのリン酸化とNF-kBの核内意向を阻害することで、VE-cadherinの細胞表面からの消失を抑制し、細胞間接着を強固に維持することを見出した。 次に、TMの各種変異蛋白質を作成し、src抑制作用を持つ領域の同定を行った。上皮細胞増殖用ドメインの4番目と5番目の領域にその作用が局在することを同定した。 CsAは血管内皮細胞に透過性亢進を誘導するのみならず、細胞障害を誘導しアポトーシス死を惹起するが、TMは細胞シグナル伝達経路ERKの活性化を介して抗アポトーシス蛋白Mcl-1を発現誘導し、血管内皮細保護作用を有することを明らかにした。
|
Research Products
(3 results)